400字で分かる落語「鰻の蒲焼」
「う」の59:鰻の蒲焼(うなぎのかばやき)
【粗筋】 「鰻は昔ノロといったが、鵜という鳥が飲み込もうとして、長いために飲みきれず難儀をした……鵜が難儀をしたので『鵜難儀』というのが『うなぎ』になった」
「焼いた物を蒲焼というのはなぜです」「ノロノロしてバカだから馬鹿焼きだと言ったのをひっくり返して『かばやき』だ」「なぜひっくり返したんです」「返さなければ焦げてしまう」
【成立】 「やかん」の学者先生のくすぐり。これで一席にしたのを聞いたことがある。「やかん」のネタを並べるのと迷って、鰻を並べることにしてここに置いた。最近は差別用語を避けるためか、「食べてみるとバカにうまいからバカ焼き」というのが多くなっている。
【蘊蓄】 鰻を胴切りにしたものを串に刺して丸焼きにしたのが昔の形で、「蒲の穂(がまのほ)」に似ているというのが「蒲焼」の語源。江戸期には開いて焼くようになったが、大坂は腹から、江戸では背中から割く。江戸では武士が多く、切腹と通じるのを嫌ったという。一度蒸して余計な脂分をとばし、江戸好みのあっさり味になって人気が出た。仕事で岡山に生活した時、丑の日に食べたら確かに脂っぽく、頭も付いて来るのがどうも……
夏の鰻は痩せて脂ばかりでうまくない。それで平賀源内が宣伝をしたというのだが、既に述べた通りどこから出たのか不明。小学生の頃に叔父にウン千円の鰻をご馳走になったが、美味しいと思わなかった。今はどこでも美味しいが、これはボクが大人になったのかな……実は養殖でいつでもおいしいのが正解。尚、土用は四季の移り変わる時期で年に4回あるが、夏の土用以外ではほとんど話題にならない。うな重の上と並は鰻の品質ではなく量だというのが江戸時代から。