水瀬神奈
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不思議な世界 少し変わった人間模様 奇妙な思考奇妙な人々 そんな物語ばかりを集めました
日常で感銘を受けた事を文章にしたり、自分を深堀りした記述等もろもろです。主観的観念論が強めです。
朗読用 6000字から10000字の小説を載せています。 無断転載、使用禁止。
人生陽転リスタート方法の記録。
同じ夢を繰り返し見る。古びた洋館の中に俺はいた。声だけが部屋に響く。いない。いない。いない。そう呟くのは人ではなく椅子だった。 椅子が四本足で歩きながら廃墟で帰らぬ主人を待ち続けていた。 1.プロローグ 廃墟が大好きだ。 あの時が止まったような置き去りにされたままの、建物の残骸。佇まいが訴えてくる、退廃的な魅力が僕の心を捉えて離さない。 心霊とか恐怖を煽ったりして視聴率狙いで、ホラーテイストにしたてられている動画。そういうものを制作しては投稿する人達とは一線を画していた。
秋は夏の背後にぴったりついてきた。 お彼岸をとうに過ぎる。 痛くてヒリヒリして脳も皮膚も焦げるような夏だった。 もう永遠に来なくていいとさえ思うくらいの酷暑が続き体力が摩耗しきっている。 街の雑踏に彼岸花をみつけた。 非常に珍しい。このアスファルトに敷き詰められた環境下で。 アルカロイドという毒を持っている花。 なのに今にもしおれそうにたよりなく茎にはところどころ茶褐色が目立ち朱色の花びらは、まるで余生を儚んで先をあきらめた老婆のように褪せている。 毒の華よ。 そん
子供の頃に父が語っていた芥川龍之介の「地獄変」
とある町の不思議な古物商の物語です 静かな田舎町に、レアルモアナ•ラキシスという不思議な名の小さな店があった。店主の老人は、毎日ランダムに店を開けるがその時間は誰にも知られていなかった。
今年はまだ蝉の声を聴かない。もう八月も半ばだ。田舎よりは煩くないが、昨年はもっと鳴いていた記憶がある。 あの生命力が強そうな蝉が地中から出てくる元気すら湧かない。終末を予期させるような夏だった。 それなら僕の異常なくらいの体調の悪さにも言い訳ができる。世界が終わるほど暑いのだから仕方がない。 仕事を在宅ワークに切り替えてから思いもかけない病気になった。なので今は勤務時間を大幅に短縮して自宅療養をしながら短時間労働をしている。幸い病気といっても命に別状はないが、無理が効かない身
僕の連れが死んだ。 染まりゆく薄紫の朝焼けの中路上で死んだ。 それを知った時刻は夜7時。見覚えのない電話番号が鳴り、出ると連れの母親からだった。 北海道の冬は凍死できるほど寒い。アルコールを浴びるように飲んで雪の中、酒の瓶を手にしたまま彼は冷たくなっていた。それを始発電車に乗ろうとした出勤途中の若い女性が発見したそうだ。 僕の幼なじみだった岸間裕也君という青年は25年の歴史を閉じて忽然と魂を肉体から離脱させて羽ばたいて行った。 何処へ?わからない。 彼は生前に日記を書いていて
「お電話ありがとうございます。かぐら亭でございます。」 「すいません。二週間先の月初一日(げっしょいっぴ)に4名で予約を取りたいんですけど。」 「申し訳ございません。その日は予約でいっぱいでして。」 はぁ…しかたがない。顧客の第一希望はこれで消えたな。第二希望に電話をかけてみるか。 俺の名は匠純也(たくみじゅんや)。営業先のお客さんを接待するための飲食店に予約の電話を仕事の合間にかけているところだ。とはいってもこれも仕事のうちなんだがな。 営業成績はいい方なので、会社の周りか
「スマホが再起不能なので会社を休みます」 長年連れ添った相棒を亡くした。7年も一緒にいたのに。
1.乾いた音の正体 真夜中に電話が鳴った。友達がいない自分の電話の向こう側はだいたい把握している。我空だ。面倒だが出た。 「俺だよ。今何してんの。」 「何してんのじゃねーよ。何時だと思ってんだよ。」 半分眠りかけていたのもあってオレは少し語調を荒げた。その時何か引き摺る音に気がついた。 カラカラカラカラ 「我空?」 カラカラカラ…カラ… 「ああ、今1人やっつけてきたんだよ。」 金属バットを引き摺る音だと気がついた。 「相手生きてんだろうな?」 「さあ、どうかな。そんなの知ら
静寂に飢えた俺は街に飛び出した。自宅に篭りっきりで洗面台の水滴の音と冷蔵庫のモーターの音を聴きながら長編の小説なんかを書いていると発狂してしまい、いつか虎になりそうな気がする。 腹の音が激しく生きている証明を訴えるので、丸一日何も食べていなかった俺はラーメン屋の暖簾(のれん)を押して中に入りテーブルについた。 そこで異様な光景を目にした。 男がひとり号泣しながら丼ぶりに必死の形相で喰らい付いている。 額(ひたい)には大粒の汗をかき、猛スピードですすっているのだ。涙なのか汗なの
1.不思議な自動販売機 ホットコーヒーを買おうと100円で買える自動販売機を探す。最近はコンビニ店で売っている缶コーヒーも高いからなあ。そう思いながら俺は寒空のもとを歩いて100円の自動販売機を探していた。嫌な出来事があって苛々が募っていた。探している時に限ってなかなか見つからないものだ。ふと見ると目の前に自動販売機が現れた。それは紫色の自動販売機で、全面の目立つ所に「お店の主人が趣味でやっている100円占い缶」という素人っぽい宣伝文句が書かれていた。側面には「占い館白薔薇
俺。名前は宇宙人(そらと) 年齢はわからない。 性別は多分男であるだろうと推測している。なので俺という一人称を使って語っている。誰に対してなのかって言われても特定はできない。というよりわからない。 今はっきり認識できていることは、神殿の敷地内にいるっていうこと。それと多分この世ではなくて、夢の世界か向こう側かまたは別の次元にいるのだということだ。 どこもかしこも白く光り輝いていて、音もなく寒くもなく暑くもない。 見たことも訪れたこともない美しい景色、にも関わらずどこか懐かし
玲於奈の毎朝は痛みで始まる。眠る時以外は全身、特に頭の中心部が切られるように痛む。1日に一回は号泣して、それが1時間に一回になり、今はもう10分ごとになって床には池が出来てしまった。 痛い!耳が痛い!