Pelvic Curlを通してみるピラティスの基礎
1:本書について
ピラティスの人気が高い理由は身体・心両面に効果があり、それを実感できるからだと思います。ただ、初心者には慣れるまでは難しい側面があり、基本的なことを無視して形だけから入ってしまうと効果が得にくく結果として継続できなくなってしまう、本当の良さを知る前にやめてしまうことがあります。いったんやめていた方にオンライン講習させて頂いた時に「このエクササイズの意味がやっと解った」と仰った方が何人もいました。何事にも型があり、それはそのものの本質的な部分です。ピラティスにもそのような型が確かにありますが、経験知・身体知として学んでいることが多いので、どうしても教わる先生の経験や指導力に左右されることになります。本書は元々は私が指導している時に使っていた資料をまとめたもので、ピラティスの核となる部分をできる限り言語化し初心者の方でも読むだけでピラティスが上手になることを目的としています。お客様からは「自分のやっていることの意味がわかった」「読んでいておもしろかった」と評価をいただきました。
言語化することの利点は、ピラティスのようなボディーワークを各フェーズで分けることで、行う事・起こっている現象が明確になり、言葉通り【分析】ができることです。ただ、問題点として言葉にすることで実際に行っていることの一部が抜け落ちてしまう可能性もあります。ピラティスは先ほども言ったように教えている人・習ったピラティスの種類(僕はBASIピラティスです)によってとらえ方も異なります。特にマインドフルネスの部分に関しては言語化することが 難しく誤解を招く可能性があるため今回は割愛します。できる限り書き手である自分のバイアスをとるため、解剖生理学・運動学・論文等の根拠を基にしてエクササイズのobjectiveに関連することを記載させていただきました。
2:トレーニングの歴史とピラティス
ピラティスは一般にボディワークつまりある種のトレーニングとして認知されてい ると思います。トレーニングにも歴史的な流れがあり、ドイツ人のグーツムーツとヤ ーンが1800年代に高強度なレジスタンストレーニング(ウェイトを使った筋力訓練)を推奨し、1804年に我々が知っているいわゆる【ダンベル】が普及しました。これにより今日的なウェイトトレーニングを行う下地が出来上がります。その後、ケト ルベル・インディアンクラブ等の古くて新しい器具も注目されますが、基本的にはダンベル・バーベルを用いたウェイトトレーニングが主体でした。実際に、ジョセフ・ピラティスも当初はボディビルを行っていました。1970年代はシュワルツェネッガーの登場でボディビルが盛んになり筋量に注目が行くように、なりどのスポーツ選手も筋肉をつけることに熱心になりました。80年代は筋量の多いことが筋力に必ずしも結びつかないことがわかり、実際に発揮できる筋力そのものに注目が行きました。これにより魅せるボディビルから重量を競うパワーリフティングへの注目も高まります。2000年代に入ると各個別の筋を鍛えることでスポーツの競技能力を向上させる、といった今までの考えとは全く異なり鍛えたいある特定の【動作】自体を向上させるトレーニングが主体となってきます。これにより筋力・柔軟性・巧 緻性・安定性・脳にある運動イメージ等多角的なアプローチが必要ということがわかってきました。2010年代は感覚統合等の感覚と運動の関係・知覚といったもの運動学習・環境といった要素も加わってきます。そして現代の2020年代ではこれらを統合するアプローチが主体となっています。このように大きな流れで言えば【筋量・筋力から動きの質・意識の向けかた】へとトレーニングの考え方は変化してきました。一方で、心理学・宗教学・教育学の分野ではマインドフルネス・瞑想といった概念も近年再認識されてきました。この動きの質・意識の向け方・マインドフルネス的な考えはピラティスに全て含まれています。また、システマティックレビューでもピラティスの効果を示す研究結果が出ており、ピラティスを提唱した1920年代当時では非常に先鋭的な運動だったと思われます。
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