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【読書】奇書はお好きですか?オススメは『破獄』?

「奇書」と呼ばれる本がありますね。
私は不幸にして、
奇書の喜びを今まで知らず、
読まずぎらいなままでしたが、
最近ちょっと気になってきました。

夢野久作『ドグラ・マグラ』が
そのジャンルの雄ですね。

あと、久生十蘭とか、稲垣タルホ、
埴谷雄高や、、、、埴谷はちがうか。

このたぐいの本は、
教養のために読書してます、
なんて俗っぽい人を
「読書はそんなもんじゃない」と、
まず、バサリ!(笑)。

エンタメ、娯楽のために
読書をする、という通な人も、
たぶん、ピントは合わない。

むしろ、奇書は、
○○のために読むのか?
と、人に問いかけてくる本ですね。

教養や娯楽、知性、
そうした手近な目的でなく、
もっと遠い何かですね、奇書は。

いったい何だろう?と
考えさせられ、投げ掛けてくる。

吉村昭という作家がいました。
司馬遼太郎とならぶ
幕末歴史小説家であり、
沢木耕太郎が常に尊敬していた
ノンフィクション作家の先駆け。

そんな吉村昭に、
『破獄』という作品があります。

昭和時代に、脱獄を4回成功した
脱獄王の人生が描かれました。

で、さあ、これを読んだら、
脱獄のテクニックがつくぞ、
という人はいないですよね?
ためにはならない(笑)。

また、娯楽、エンタメというには
しかし、重厚な読み味です。

作者はまた、
脱獄をしてはいけませんよ、
なんて、詰まらない市民倫理を
語るつもりでもない。

なんで脱獄の話なんて書いたのかな?
妙に不思議です。

とにかく、吉村昭は
この作品のモデルになった
脱獄の名人?のことが
気にいってしまったんでしょう。

しかし、こんな本を、
人はなぜ書いたんだろう?
また、なぜ読むんだろう?

映画やドラマなら、
わかるんですよ、
軽快な音楽と一緒に、
犯罪や事件ものという
ジャンルがありますから。

でも、吉村昭の『破獄』は
決して軽快ではない。
どちらかというと、
人間の本質に
独特のアングルから
切りこんだ重厚な快作です。

新潮文庫で昭和61年に発売され、
今は第56 刷りです。
つまり、相当売れてます。

私が頭が固いだけかしら?

さらに、面白いのは、
こんなユニークな小説が、
もともとは、岩波書店の
思想雑誌「世界」にて
連載されていたことです。
なんて懐の広い、寛容な雑誌で
あったことか。

この本からは、
人間界には、どんなことだって
アリなんだぜと、
言ってくれているように
思えてならない。

まあ、もともと、
真面目で几帳面で、
正確無比な作家だからこそ、
こうした深さが出たんでしょう。

軽薄や打算だらけの作家なら
題材の脱獄や刑務所周りに
振り回されてしまうでしょうから。

この本はそれにしても、
本紹介ユーチューバーなら
どうオススメするだろう?
あったら、ちょっと見てみたい。
「みなさん、脱獄のノウハウが
しっかり学べますよ」とは
行きませんからね〜。

奇書とは何か?
「これを読むと○○が分かる!」
が一切ない本でしょうか。

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