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石の上の詩

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2020年12月の記事一覧

横書きマスク

横書きマスク

横書きで
詩を書く

外出時
マスクする

時間止まる
仕組み変わる

変化
適応

違和感
あきらめ

思いやり
面当て

規範
圧力

同調
加担

横書き
マスク

暑ければ脱ぎ
寒けりゃ羽織る

相互事象的
モードにおいて

受容
適用
お節介

配慮
自粛
不寛容

差別
偏見
正義感

陰口
忖度
村八分

横に書きなさい
マスクつけなさい

横に書きません
マスクつけません

横書

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裏切られるとわかっていて

信じること
頼ること

排除しない

しかし
信じること
頼ること

排除をする

裏切られる

わかっていても
信用する

懐疑より
希望を選ぶ

また時に

希望より
安住を選ぶ

その一面を
おのれのなかに
見よ

そして
メモしとけ。

坂の多い街4(をはり)

空に舞い上がる
地に這いつくばる

砕け散り
ほとばしり

混沌
瞬時の


巨大な
ばかばかしいほどの

地を
水を
火を
風を

のみこんで
すべてを

そして
短く長く
長く短い

時間

決して
消えることのない
刻印

時間と
受難と
寛容と
恩寵が

それで
かまわないか

かまわないと
慰められたいのか

人は。

坂の多い街3

受難と
時間と
寛容と
恩寵と

山と海が
街を
すっぽりと
収める

西日が街を
金色に染める

塵埃
水蒸気


発動機の
汽笛の

息づかい
生きているものの
死んでいるものの

瞬時の混沌

あまりにも膨大で
ばかばかしいほどの
光が
すべてを
包み込む

人は
刹那
見る
しかし
それは
微塵

それでも
かまわないか

かまわないと
いってほしいのか

人は。

坂の多い街2

純情と
多情
信じる心と
猜疑の心は
オモテと
ウラ

被害者の名誉は
回復され
加害者の理屈は
受諾され
それらは
テキスト
になり
シンボル
になる

絶たれたもの
絶ったものが
同時に
讃えられ
もする
世界

この

世界。

坂の多い街1

坂の多い
街は今日
抜けたように
澄みわたる

まばゆい

その街

かつて
多くの
あまりに多くの

流れて

どんなに豊かな
大地でも
支えきれぬほど
あまりに多くの

流れて

無数の
小さな
川をなし
大地を覆う
網目のように

やがてそれら
一本の大河
となり

人は今
眼下に
見る
大河
となり



溶けてゆく
そして

蛇口をひねるように
温度は上がる。

そのむかし近くにいても

そのむかし
近くにいても
遠くにいると
感じられた人

幾年経っても
まだまだ遠い
ところにいる

じつに偉大な
時間でさえ
解決できそうな困難を
必ず解決するとは
限らない

仕方がないと
あきらめたその日
酒を飲んで
少しもどした

いつものような
しかしいつもとは違う
哀しみ
にひたされて

一日一日
日々あたらしい
というのにさ!

からだの
深いところに
格納している
緑の高原
引っ張り

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西のほうで

風を感じることはできない
風は感じられるのだ
と言った彼は
山に三年籠ったのち
カレーライスが食いたくて
里に降りた

感じられるにはシュギョウが必要で
シュギョウなしには風はおろか
世界の大方の物質は感じられない

シュギョウを終えた俺が
カレーライスを食いたいとき
俺はまさにカレーライス
そのものなのだ
と彼は言い

カレーライスを
うまそうに平らげて
金を払わず
金を払った親切者に礼さえいわ

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史上もっとも尖端的な

夜明けが
憂鬱を
もたらすことは
やりきれぬ

だから

憂鬱を
もたらさぬよう
前の晩から
準備しなければならぬ

ゆえに準備は
果てしない
遡及を
要さねばならぬ

その連なりは
線状なのか
堆積なのか

しかし
この夜明けは
史上もっとも
尖端的な
それであろう

舳先よ
波濤を砕いて
進め。

ノベンバーコットンフラワー

ノベンバー
コットンフラワー


流れてきて
ラジオから

昔のこと
よみがえった
ぽろぽろ

ノベンバー
コットンフラワーを
教えてくれた
レコ屋のあんちゃん

店先で
無事を
確かめ合った
震災の後

あんちゃんは
街の西側に
住んでいて
毎日
廃墟の
街並みを
横目で
見ながら
歩いて
通っている
と言った

そうだった

その
まなざし

そのころ
旧知の人と会うたび
無事であることを

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享年三十八、五十一

選ばれて在ることの
恍惚と不安とふたつ
われにあり

という
ヴェルレーヌの詩句を
太宰治が好んだ
という

太宰は
小説を書く人
どうも並外れて
それだけの才能しか
ない人
であった

選ばれて
小説を書く人で
在る
とすれば

何に
誰に
選ばれたのか



ヴェルレーヌのように
神に
であったなら

自らいのちを
絶つことは
なかったのでは
ないだろうか

太宰は
自分で
自分を
選んだ

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くたくたとほどけた

ロンドンで
啜ったビールは
生ぬるくて
苦くて甘くて
からだはくたくた
ほどけていった

ソーセキが好きで
仕事をやめて
ロンドンに留学した
おじさんが教えてくれた
ワッピングのパブ

シェークスピアの
生きてた頃から
営業してた
とか
ディケンズも
啜った
とか
老舗の

テムズに張り出した
バルコニーで
幾日も
昼過ぎを過ごす

どんなに有名な
酒場も
常識人の仕事が
ひけるまでは
仕事をやめ

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