ノベンバーコットンフラワー



ノベンバー
コットンフラワー


流れてきて
ラジオから

昔のこと
よみがえった
ぽろぽろ

ノベンバー
コットンフラワーを
教えてくれた
レコ屋のあんちゃん

店先で
無事を
確かめ合った
震災の後

あんちゃんは
街の西側に
住んでいて
毎日
廃墟の
街並みを
横目で
見ながら
歩いて
通っている
と言った

そうだった

その
まなざし

そのころ
旧知の人と会うたび
無事であることを
確かめ
喜びあった
しかし
誰も
少し
控えめで
会話が
途切れると

さまよった
宙を
視線が

駅前の
串カツ屋の
カウンターの
ソースを入れる
金属製の
箱の中に
5円玉を落として
店のオヤジに
えらく叱られた
串カツ屋の前を
通るたび
気まずくて
いつも顔を
伏せていたのは
震災の前か
背景の街並みが
古い
馴染みのある
風景だから

串カツ屋のそばの
美容院
長い時間をかけて
パーマを
あててくれた

台風が直撃して
扉の外は
暴風雨
舞い上がっていく
実に
さまざまな
ものたち
大切なものも
そうでないものも
スローモーションで

ノベンバー
コットンフラワー

ノベンバー
コットン
フラワー

さまよい
続ける

その
それらの
視線
まなざし


この時も。




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