くたくたとほどけた
ロンドンで
啜ったビールは
生ぬるくて
苦くて甘くて
からだはくたくた
ほどけていった
ソーセキが好きで
仕事をやめて
ロンドンに留学した
おじさんが教えてくれた
ワッピングのパブ
シェークスピアの
生きてた頃から
営業してた
とか
ディケンズも
啜った
とか
老舗の
テムズに張り出した
バルコニーで
幾日も
昼過ぎを過ごす
どんなに有名な
酒場も
常識人の仕事が
ひけるまでは
仕事をやめた人の
天国なのだ
爆音とともに
鶴の形
三角つばさの
飛行機が
頭上を
飛んだ
ソーいえば
大西洋をはさんで
東から西へと
移り住んだ
詩人もいれば
西から東へと
移り住んだ
詩人もいて
その距離は
意外と近い
われら
日本語
ここから
はるかに
遠いい
狼の群れに伍する
一匹の
ムク犬
か
と
見上げた空
今はもう
鶴のような
爆音飛行機
道徳や常識を
飛び越えた詩人
すべて
世界から
消えて
生ぬるくて
苦くて甘い
ビールによって
テムズにほどけた
このからだ
まだ
この世界を
さまよっている。