短編Ⅵ | 二隻の舟 3/3
「そうですね…」
新しい酒をあたしに差し出した後、娘は再び、キュッキュとグラスを磨き始めた。そして、「答えになっていないかもしれませんが…」と前置きをした後、まるでグラスに向かって呟くように、小さな声で訥々と語り始めた。
「私とマスターは、よく感情がシンクロするんです。私が笑うときは、マスターも笑ってる。マスターが泣くと、私も泣いちゃう。どちらかが寂しいとか、甘えたいとか、触れたいとか思うときは、もう片方も同じように思ってる。どうしてだか、お互いに、それがとてもよくわかる