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被措置児童等虐待とは?最近の傾向と課題

被措置児童等虐待は、社会的養護の場で子どもが虐待を受けるケースを指し、特に施設や里親の下で生活する子どもたちが対象となります。近年、この問題はますます注目を集めており、早急な対応が求められています。

被措置児童等虐待とは

被措置児童等虐待は、児童福祉施設や里親家庭などで生活している子どもが、養育者や職員から不適切な関わりを受けることを指します。この虐待には身体的、心理的、性的な虐待や、子どもの基本的なニーズを無視するネグレクト(育児放棄)などが含まれます。

最近の傾向

虐待認定の基準が厳格化
以前に比べて、虐待と認定される基準が厳しくなっています。これは、子どもの権利を守るための法改正や社会的な意識の変化によるもので、社会的養護の場における子どもの安全確保がより重視されているからです。

被措置児童等虐待件数 子ども家庭庁

職員の経験不足や過度な負担
経験の浅い職員が問題行動を示す子どもに対して適切に対応できず、強い言動を取ってしまう事例が増加しています。また、ベテラン職員が新人職員を守るために、時に過剰な対応を取ってしまうことも見られます。特に緊急対応時におけるコミュニケーション不足が背景にあることが多いです。

非常勤職員や直接支援に関わらない職員(事務職など)の問題
非常勤職員や支援に直接関わらない職員が、虐待や不適切な行為に対する認識が不足しているため、意図せず不適切な対応をしてしまうケースも見受けられます。

マルトリートメントの認識不足
マルトリートメントとは「不適切な養育」を意味し、児童虐待よりも広い概念です。これには、子どもに対する過度の要求や不適切な態度などが含まれます。最近では、こうした行為も被措置児童等虐待として認識される傾向が強まっています。

課題認識

被措置児童等虐待の認識や対応には、多くの課題が残されています。

1.認知されていない事案(暗数)の存在

虐待が存在していても、子どもや職員がそれを認識していない、または声を上げられないケースが多くあります。さらに、通報されても適切に対応されず、調査が開始されない場合や、調査の結果、虐待と認定されないケースも依然として存在します。

2.家庭養育優先や地域小規模化の影響

家庭養育優先や地域に密着した小規模施設の普及は、子どもにとって安定した養育環境を提供する一方で、外部からの監視が行き届きにくくなるというリスクも生じます。特に、養育者と子どもの関係が緊密になることで、私有的支配のリスクが高まり、虐待の発見が難しくなることが懸念されています。

早急な対応とアドボカシーの導入

被措置児童等虐待に対しては迅速な対応が必要です。その一環として、アドボカシーの導入が重要です。アドボカシーは、子どもが自らの権利を守り、声を上げられるよう支援する取り組みです。

  • 子どもの声を代弁する
    虐待を受けた子どもが自ら声を上げにくい状況では、アドボケイト(代弁者)がその役割を果たします。子どもの権利を守るため、外部の適切な機関に問題を報告し、改善を促します。

  • 職員への支援
    職員が職場のプレッシャーや迷いから声を上げにくい場合、アドボカシーの仕組みを通じて適切なサポートを提供し、問題を公正に解決できる体制を整えます。

アドボカシーの導入は、虐待の未然防止と子どもたちの権利擁護に向けた重要なステップです。

まとめ

被措置児童等虐待は、社会的養護の現場における深刻な問題です。しかし、件数の増加は、むしろ問題の可視化が進んでいる証であり、社会全体での子どもの権利意識が高まっていることを示しています。職員の対応や子どもたちの権利を守るための適切な仕組みを整えることが、今後の虐待防止と安全確保に向けた第一歩となります。


次回は、被措置児童等虐待の通告があった場合の対応について詳しく解説しています。


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