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【洋楽雑考#14】 セレブな隠し味〜レニー・クラヴィッツ

皆元気? 洋楽聴いてる?

今回は新記録から話を始めよう。

RIAA(全米レコード協会)による集計で、全米で最も売れたアルバムが、Eagles(本来はThe Eagles)のベスト盤「Greatest Hits 1971-75」となった。

2009年にマイケル・ジャクソンが急死、その際に「Thriller」に追い越されるまで当作は首位をキープ、今回ストリーミングなどの数をプラスしての首位奪回という事らしい。

「Hotel California」という、1970年代、というかアメリカン・ロックのある意味集大成とでも呼べる楽曲が収録されていないのは面白い。

まぁ、それだけ彼らの音楽がどっかりと根を下ろしている証明か(同楽曲をタイトル・トラックとして収録したアルバムは3位)。

2006年に集計された際の合計セールスが2900万枚、その後12年を経て、最新集計では3800万枚。印税だけで一族郎党一生食べていけるんじゃないか?


また、新しいアーティストの話題としては、9月22日付けBillboardで、カナダのヒップホップ・アーティスト、ドレイクのシングル「In My Feelings」が10週連続1位を記録。

これにより、彼は年間累計で29週1位を獲得したこととなり、2004年のアッシャーの記録を超えた。29週...1年の半分はドレイクが1位なのか。

このようにモンスター級の売り上げを記録するアーティスト以外は全然売れないというのが、今の音楽シーンの最大の問題という見方も出来るんだよなぁ。

さて、今回のお題なのだが、日本では某炭酸水のCMでおなじみ、レニー・クラヴィッツを取り上げてみよう。2018年に11作目となるアルバム「Raise Vibration」をリリース。

もうお聴きになった方も多いと思う。基本セルフ・プロデュースで、ほぼ全ての楽器を自分で演奏。最近でこそ、テクノロジーの力も少し借りるようになったみたいだが、基本的には頑固にアナログなレコーディングに拘るところが男らしい。


1964年生まれの54歳。てっきり西海岸の生まれなのかと思っていたんだが、バリバリのニューヨーカーである。


父親はNBCのニュース番組プロデューサー(ちなみに元グリーン・ベレー)、そして母親は女優のロキシー・ローカーという、何かこう、生まれ持ってのセレブ感...


その父はジャズのプロモーターもやっていたようで、非常に幅広い交友関係を誇っていたようだ。デューク・エリントン、サラ・ヴォーン、カウント・ベイシー、マイルス・デイヴィス、エラ・フィッツジェラルドら、まぁ、キラ星のような名前がぱかぱか出てくるのだが、5歳のお誕生日にはデュークが「Happy Birthday 」を直々に演奏して下さったらしい...へぇへぇ...


1974年に、クラヴィッツ家はカリフォルニアへと引っ越す。母ロキシーが全米ネットワークで放映されたコメディ・ドラマ「the Jeffersons」に抜擢されたことがその理由。


それまでは、いわゆるブラック・ミュージック一辺倒だったクラヴィッツなのだが、彼の地でロックの洗礼を受けることとなったようだ。

KISS、Aerosmithら、当時のティーンを釘付けにしていた若いバンド、そしてRolling Stones、Led Zeppelin、The Who、Black Sabbath、そしてPink Floyd まで。後の彼の血肉となる音楽要素がこの時期に身に付いたと言って良いだろう。


ホントにそんな学校あるのか?と思うような名前の高校、ビヴァリー・ヒルズ・ハイ・スクールに進学、同級生にはGuns & Roses のスラッシュ、俳優のニコラス・ケイジなどがいたらしい(毛量の極端な差が良い)。そこではピアノとベースを学ぶ。


デビューにあたっては、母親のロキシーとかつて仕事をし、その後クラヴィッツの妻になった女優リサ・ボネットとも親交のあったスティーヴン・エルヴィス・スミスが尽力している。

人気コメディ・ドラマ「The Cosby Show」のスピン・オフ「「A Different World」のミュージック・スーパーヴァイザーだったスミスの肝いりということもあり、5社のレコード会社による争奪戦の結果、最終的にVirgin Recordsとの契約が1989年に実現、同年6月にデビュー作「Let Love Rule」がリリースされる運びとなった。


ここ日本で彼の名前が囁かれるきっかけとなったのは、1991年リリースの「Mama Said」あたりからだと思うんだけど、前年にマドンナの「Justify My Love」をプロデュースしたり、92年にはヴァネッサ・パラディの英語デビュー・アルバム(キャリアとしては3作目)「Vanessa Paradis」への全面参加など、当時から彼とその周囲の"スターっぽさ"は完成している。


その後、スティーヴン・タイラー、ミック・ジャガー、デヴィッド・ボウイという、これ以上ないコラボを経験した1993年にリリースされたのが、今もお馴染み「Are You Gonna Go My Way 」だったワケだ。ギターリフが印象的なこの楽曲だが、単なる"ろっくん・ろ〜る!"とは、ちと違う。


CMソングに「ノリ」は必須だが、それだけでは少々物足りない。そこにある種の「おしゃれ感覚=ちょいセレブ感」が備わっていることは非常に重要。「Are You Gonna...」が長い間CMに起用され続けている理由はまさにそこにある。

レニーが纏う"生来のおしゃれ気質"は、新作からも確実ににじみ出ている。ルーツと関係あるのか、ブラック系なのにヒップホップと距離があるのも興味深い。

実は彼がリリースしたアルバムで、全米Top 5を記録した作品は、ベスト盤を除くと2008年リリースの「It's Time for a Love Revolution」(4位)しかない。

その代わり、グラミー賞の常連なんだけど。で、ご提案。ここは一発、4人組の女性バンド(全員非白人)とかを育成、プロデュースするとかどうか?実際、彼の子供の頃の夢はセッション・ミュージシャンだし。

当時オレは、「Vanessa Paradis」アルバム収録の「Natural High」で気絶していた。こんなにアナログで、こんなにおしゃれな曲を書くのは誰なのかと思っていたもんだ。

オープニングの歪んだピアノ、これを聴くたびに今も、「あぁ、誰かレニーの毒牙にかからないかなぁ」と思う昨今である。

では、また次回に!!

※本コラムは、2018年10月4日の記事を転載しております。


レイズ・ヴァイブレーション

2018.09.07 発売
¥2,138 WPCR-18076


■レニー・クラヴィッツ オフィシャルサイト
■レニー・クラヴィッツ(Warner Music Japan)


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