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【洋楽雑考#10】 アメリカの一部になった男〜エルヴィス・プレスリー

皆元気? 洋楽聴いてる?

知人に会う機会があり、"あのコラム、なかなかじゃないすか。

"とお褒めをいただいた。自称"褒められれば伸びる"タイプだと信じたいが、いわゆる人間的な"伸びしろ"がほぼ皆無な気もする。

う〜ん...ガンバって、原稿書こう。

さて、今回取り上げるのは、King of R&R、アメリカ音楽史上最高のエンターテイナー、エルヴィス・プレスリー。

ミシシッピ生まれのプレスリーが父親の逮捕/服役などもあり、家族で10代半ばに移り住んだのが、今ではブルース、R&Rの聖地と呼ばれるテネシー州メンフィス。

敬虔なプロテスタント家系のため、幼少時からゴスペルに影響を受けていたプレスリーなのだが、黒人労働者階級が人口の多くを占める彼の地でその影響は決定的なものになる。

当時プレスリーは白人がまず歩くことのないビール・ストリート(Beale Street)に入りびたり、文字通り、浴びるようにブルースを聴いていたらしい。

また、当時のアメリカ文化を大きく変えたラジオの普及も彼のキャリアにとって重要だ。WHBQというステーションに籍を置いていた通称Daddy-Oこと、デューイ・フィリップスは、白人でありながらR&Bなどの黒人音楽をオンエアしまくり、その後プレスリーの1954年のデビュー・シングル、Sun Recordsリリースの「That's All Right」を初めてOAしたDJとなった。また、当時19歳のプレスリーは彼の番組内で、初めて自らが白人であることを認めた。


どう聞いても黒人音楽にしか聞こえないR&R (ちなみにこの単語も黒人間のスラング、性的な意味から徐々に純粋に楽しむという意味になっていった)を白人であるプレスリーが演奏していたことに対するショックはいうまでもない。

法の下に人種間の平等を認めた公民権法の制定から10年も前、黒人への差別は当たり前の時代(同じバスに乗れないとか、洗面所が別とか...今からわずか60年前の話だ)、プレスリーのブルースを始めとするブラック・ミュージックへの純粋なリスペクトがR&Rの誕生に結びついたことは間違いない。

後にジェームス・ブラウンが語ったように"白人が目線を下げることを学んだ"瞬間と言い換えることもできるだろう。

その美麗なルックス、派手なパフォーマンスもプレスリーを語る上で外せない。ダックテイルと称されたヘア・スタイルに、(今見るとなぜこれが問題になっていたのか微妙なのだが)腰をカクカクさせながら歌う彼を目の当たりにして(徐々にテレビが娯楽に浸透した時代ね)、若者は熱狂し、親御さん世代は頭を抱えるという現象のルーツになったワケだ。


また、生涯30本を超える映画にすべて主演したというのも、その人気がいかに凄まじかったかを物語る。歌手が映画に出演するという手法、その後の日本の芸能界にも大きく影響しているよね。


このように史上空前の大成功を収めたエルヴィスの陰には、彼を背後で支え、時としてコントロールした超敏腕マネージャーの存在も大きい。


トム・パーカー大佐。若き日に母国オランダのカーニヴァルなどで興行師としてのノウハウを学んだ彼は、1929年に密入国で渡米。

その後、米軍に入隊するのだが、トム・パーカーという姓名は、その際に彼を面談した上官のもの。いかにも山っ気の塊のような男なのだが、実際にオランダ生活時代には、殺人事件への関与までウワサされるような人物だったようだ。


アメリカ以外ではカナダでのツアーしか経験のないプレスリーなのだが、その理由として海外でツアーを行うとパーカーの素性が明らかになってしまうから、というほとんど某東スポみたいな説まであるらしい。

当時、まさに"雲の上の人"だったプレスリーと、その雲を厚くするために奔走したパーカー大佐の二人三脚、それはプレスリーが亡くなるまで続いた。

こうして当時の資料を読み返すと、プレスリー登場がアメリカの大きな変革期にリンクしているのが読み取れる。

R&Rというジャンルを超越し、現代アメリカ音楽の大きなルーツであるのみならず、正に"アメリカの一部"であること、それこそプレスリーが今でも絶大な支持を得ている理由なのかも知れない。

では、また次回に!


※本コラムは、2018年6月4日の記事を転載しております。


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■エルヴィス・プレスリー 海外オフィシャルサイト
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