楽と愉

私たちが日々口にする「楽しい」と「愉しい」という言葉。同じ「たのしい」という読み方をしますが、私にとってこの二つには決定的な違いがあります。教科書的な意味の説明ではありません。これは、私自身が経験や思索の中で定義した「楽」と「愉」の違いです。

「楽しい」とは、どちらかと言えば受動的な感覚だと思います。例えば、映画を観たり、美味しい食事をしたり、友人と笑い合ったりすること。それは、外部からの刺激に心が動かされる瞬間であり、新しいインスピレーションを得るために欠かせないものです。しかし、「愉しい」となると少し違います。愉しむとは、能動的な行為だと思うのです。自分が何かに没頭し、それを通じて喜びや満足感を得ること。そこには、自らが主体的に動き、深く関わる姿勢があります。

両者には一長一短があります。楽しい時間を持つことは、人生の彩りを加え、心に活力を与えてくれます。一方で、愉しむことに没頭する時間は、人生に深みや意味をもたらしてくれるように感じます。私自身、長い人生を豊かに生きるためには、「愉しむ」ことを増やしていくことが鍵ではないかと考えています。極端な話、面白くないことを面白いと感じられるようになる力があれば、人生はいかようにもコントロールできるのではないでしょうか。

「楽しい」という感覚だけで物事を判断していると、楽しくない時に不快感や不安を感じてしまいがちです。しかし、「愉しむ」ことを知っている人は、楽しいことも楽しくないことも、どちらも自分の中で娯楽の一部に変えることができます。自分がどんな環境にいても、どんな状況に置かれても、そこに喜びを見出すことができる。それは、人生の舵を自分の手で握る力と言えるのではないでしょうか。

私はこの感覚を若いうちに育てていきたいと思います。今は「楽しい」に救われることも多いですが、「愉しい」に支えられる人生を目指したい。100年時代と呼ばれる現代、どんな未来が待ち受けているかは誰にもわかりません。しかし、自分の人生を豊かで、深く、身のあるものにするために、愉しむことの価値を忘れないようにしたい。いつか振り返った時に、心から「愉しい人生だった」と言えるように、今からその土台を築いていこうと思います。

人生の真髄は「愉しむ」にある。そう信じて、私は今日も歩み続けます。

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