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物語に成れなかった言葉たち。
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#雑文

獣のワルツ

獣のワルツ

毒をもつのはきっと容易い
かような姿は修羅の如く
研がれた刃と牙をもつ
ひと在らざる化身なり

ひとつ歩めば全てを切り裂き
ふたつ行けば荒野と化す
其はうつくしき獣なり
そうであるならすくわれた
そうであればワタシで在れた

見目ばかりが人だから
まわりは勝手に同列扱い
珍品列挙 奇異敬遠
誰もが知らぬ存ぜぬ繰り返す
己に自問を繰り返す

ワタシは私に成りました
牙を無くした私など
伽藍とカラの器

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輪郭

輪郭

風を撫でるように思い出の輪郭を辿った。

今、頭の中には君と過ごした、
吐き出した言葉たちが泳いでいる。

ふたりの秘密。
それを投げ掛けては、
知らないふりして薄く跡を残している。

同じ場所を、何度も何度も。
ゆっくりと刻みつけて、
深い溝になるように。

言えない言葉の代わりに、
目の前にない、君の輪郭に触れた。

レモンミルクティー

思入れの深さを数えた。

ティースプーンいっぱいの残念さ。
ミルクピッチャー3杯分の優しさ。
スティックシュガー5本分の気遣い。
現実味のスライスレモンをひとつ。
入れた量で濃さは変わる。
だから私たちがこんなにも不安定なのは、きっと仕方ないこと。
優しさをこちらに、残念さをそちらに。
分け合えばよかったの、本当は知っている。 

ティースプーンいっぱいの気遣い。
ミルクキャップ3杯分の不真面目さ

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春の雪

都会の雪は
雨にはじまり
霙でおわる。 

気まぐれに積もり
跡を濁し
薄くアスファルトに張り付いていく。

神田川の底の底
桜並木の囲まれた
深さの下で雪は積もる。

雨になりて
霙になりて
春の雪を
待ち続ける。

言葉の星座

言葉の星座

言葉 言葉 点 の よう
歪 な カタチ 繋がって

見えない カタチ 識らない カタチ
貴方 知らなきゃ わからない

私は ここ に いるのだ と
貴方は そこ に いるのだ と
星座 みたいに 私に 伝える

拙い糸 が途切れぬ ように
私と ワタシ  貴方と アナタ
振れない袖 は他人ばかり
例えば 交わること も無かったんだ

紡ぐ 繋ぐ 心が欲する
揺れる 解ける 波のように
連ねて溢

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灰殻

誰かの願いが降ってやまない

お腹がぐずぐず燻ってる

あなたのことばが欲しいのだ
私の内を荒らして去った、

素知らぬあなたが欲しいのだ

ここにあるのは深い溝だけ

あなたとあるのはこの溝だけ

どうにも悔しい気がするのは

きっと私だけなんでしょ

後にも先にも散らばった心を

拾い上げることすら出来なかった
今日という日を

忘れやしない

忘れるものか
#詩 #創作 #雑文

順当

摺り合わせた熱に名残を見出して
たださようならを突き放した

隣だけなんていらなかった
求めるには余分が多かった
だからこれは、順当な結末

きっとね 明日には笑ってしまうよ
うろ覚えの昨日は何処かに行くよ
あったことはみぃんな夢だ
だから忘れたって 大丈夫だよ

何があってもこうなった
それは確かに言えるから
互いの目を見ず手を離そう
後ろを見たりはしないから
安心してね 大丈夫だよ

真心

真心を丁寧に丁寧に透いてゆく。

貴方に私が届かぬように
私が貴方に気づかれないように
薄く、薄く、薄氷を踏むが如く
丁寧に丁寧に透いてゆく。

脆くなった私のホントウ
どうか見つけないでくださいね。
砕け散って塵となった果てでも
追いかけないと誓ってよ。

紙のように引き千切って、
吹雪くさまを見せるから。

スタァ・ライト

‪知ってる街の、知らない姿。‬

‪鉄筋の骨組、馴染まぬ顔触れ。‬

‪電柱の乱立、高架線のお膝元。‬

‪足跡じみた灯火を追って、‬

‪ボクは風になったんだ。‬

‪『線路の向こうは何もないよ』‬

‪けらけら笑う、キミはいない。‬

‪見上げて望めよ、宵夜の交信。‬

‪忘れじの約束、棄ててやるから。‬

ノンエンドロール

続く。何だろうと続いていく。
明日も明後日も明明後日も。
悲鳴を上げた夜だって、明ければただの新しい朝だ。

コンテニューされない日々の中、見えない嗚咽をばら撒いた。
灰色の空を、ビルの細い隙間から見上げる。
この狭さがぼくの世界だ。
喧騒に身を埋めて自己を希釈すれば、
ほら、なんて事ない棒人間だ。

さよならさよなら、かつてあった筈のぼく。
おはようおはよう、カスタマイズされたぼく。
ぼくは死

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泡沫

こころが迷子で砂になる。
砂上で幾度探そうとも、
混じり合えば遥か彼方だ。

とおくに行った 星になった。
こころもとおく、とおくに逝く。
かつてないた記憶さえ、
果てではただの、塵芥。
ガラクタならせめて、どんなにマシか。

死にゆく泡沫抱きしめて、
冷たい躯を動かして、
想いの丈だけ、生き延びるように。
せめてあなたは、と願い託した。
閉じる意識で底から腕を、
欠片手にして祈って振った。

白線

白線を往く。
そのやわく不透明な淡いを、
弾んだ、合わせたすり足で通り往く。
途切れる黒の穴を、すぐ隣の暗を、
見ぬふりして追い抜くように。

終に見なかった屍たちが
後方の向こうで蠢いている。
混ざり合って尾を引いて、
過ぎた線は灰となる。

進むは定められた路だけで、
他には何もありはしない。
只々往くこと、それだけが、
己なんだと疑わなかった。

濃い陰りが高々伸びて、
いつしかぴたり

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揺籠

いつだったか、
泣いていたんだって。
それを僕は忘れちゃったんだ。

たぶん、どうでもよかったんだって。
あとから思うのは、カンタンだよな。

あたたかく触れる熱に、
寂しさを覚えたのはいつだったか。
ここにいるよって声を、
焦がれていたんだって。
安心を得たいだけだなんて、
勝手過ぎて笑っちゃうよな。

引いては戻る波打際を、
揺り籠のようにそっと辿るようにさ。
歩けたらよかったんだ

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燃殻

燃殻

すべて火にくべてしまいたい。

とおくのいつかで知ってしまうんだ。
そして知らぬうちに消えているんだ。

いま、
話すきみのこえを、
熱を、
匂いを、
知りたいとは、思わないんだ。

すべて火にくべてしまいたい。
灰になったきみを永遠に、
この先ずぅっと抱えて生きること、
それだけが
時間を共にした名残にはなるだろう。
けれど隣合わなかった証だろう。

出先で買った揃いの土産も、
要らないめで

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