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エッセイ・小説

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日々思ったこと、考えたこと、感じたことを自由に書いたエッセイ・小説をまとめています
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小説 「赤くて青い」

小説 「赤くて青い」

突然外から激しい音がした。嫌な予感がした。
蝉が夏の始まりを告げたのだ。
あまりの音の鋭さにびっくりしたのか、それとも夏の訪れを歓迎しているのか、教室内の数人が音の鳴る方向を見つめている。
一方で僕はというと、分かりやすくうなだれている。

僕は夏が嫌いだ。
暑さと虫が苦手だからというのはあるけど、これといった決定的な理由は特段ない。
小さい頃は好きだったはずだけど、いつからか夏の訪れを感じるとと

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【小説】アレキサンダーの野望

【小説】アレキサンダーの野望

「しかし、志半ばでアレクサンドロス大王は熱病にかかり、32歳という若さで亡くなってしまうのです。」

顔に皺を刻み、腰を湾曲させたゴブリン(世界史担当の先生をこう呼んでいた)は悲哀の表情たっぷりにこう語った。

まるで自分が、前代未聞の大偉業を成し得なかった英雄だとでもいいたげな調子だ。

全く醜い限りであるが、そんなことを思っていても埒が明かないことは自明である。

なぜこうも授業というものは退

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【エッセイ】人はなぜ生きるのか?

【エッセイ】人はなぜ生きるのか?

「人はなぜ生きるのか?」

という問いに答えられる人はどれほどいるのだろうか。

「大会で優勝するために生きている」、「家族を支えるために生きている」など、目の前の目標や課題を意識して答える人もいるだろう。

その答えはあながち間違いではないが、この人類史上最大の難問は前提として、哲学的で考えても仕方ないような、真夜中に自分の将来の夢を決めようとするような、無謀で難儀な問いである。

ここで一旦話

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【エッセイ】遅ればせながら、自己紹介をしようと思う。

【エッセイ】遅ればせながら、自己紹介をしようと思う。

「あなたという人間を一言で表すと?」

という面接官の質問に答えられる具合のいい言葉を僕は知らない。というか、そんな言葉はない。
私のこの薄っぺらい餃子の皮のような人生ですら表現できないとすれば、他の人にとっては至難の業である。

人間とは、頭部から順に、胸部、腹部、腰部、大腿部、下腿部と6つに分かれた構造を持ち、それらが骨によってつながれ、骨によって臓器が収納されている。
この体を自在に動かすた

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