見出し画像

オープン一周年!【駅の図書室FLAT】〜私でいられる場所で生きている〜


千葉県木更津市。ちょうど良い田舎だと思う。大好きなまち、大好きな地元。好きだから故に、補正フィルターがかかって、よりよく見えてしまっているのだろうとも思う。

駅の図書室FLATは木更津駅東口の階段の真下にある。降りてすぐ、ではなく、本当に真下。駅に面しているから、ここに図書室があることも、さらにはフリースペースのように活用できるだなんてことも、少し信じられないかもしれない。実際に、怪しい場所かと覗いてみては、「怪しい場所かも…」と入ることをためらうひともいたりいなかったり。そういう光景を含めて、FLAT(ふらっと)らしさがあると思っている。

【 駅の図書室FLAT 】

Instagram 🔽🔽


X(Twitter)🔽🔽


現在の私の本棚


私は駅の図書室FLATに自分の本棚を持っている。月額二千円で、好きなレイアウトで本を置けて、人々に貸し出すことができる。なかなかまだ当たり前ではないけれど、このような月額本棚オーナー制の"みんなのとしょかん"は全国に増えている。木更津についに誕生…!そしてオープンから一年が経つ。プレオープンからだと、もう一年半くらい私はここに足を運んでいる。

たまたまSNSでFLATのことを知れた去年の4月頃。あのときのわくわくは忘れていないし、忘れたくない。私はまさにこういう場所を求めていて、こういう場所で"何かしたい"とずっと心に溜めていた。とはいえ、私は読みたい本はたくさんあっても、とにかく読めない人間だったから、本棚を持つほどひとに勧められる本を持っていなかった。唯一置こうと思っていたもの、そしてこのためだけにでも本棚を持とうと思ったものは、『さよはる!!』という愛知県の東三河地方を舞台にしたマンガだった。作者とは長い付き合いで、私は彼女の作品のファンで、「木更津の人々に手を取ってもらえる機会をつくれる!」と心を躍らせたことが本棚を持つきっかけだった。

本を置き始めた頃の私の本棚


思い立ってすぐに、本棚オーナーになった。何にでも足し算ばかりの装飾をしてしまう私は、本が読めないくせにシンプルではない棚をつくった。私らしくて、嫌いではない。

好きなマンガを置くことだけがひとまずの目的だったのに、私は自分自身のために閃いた。「ここに置く作品集を手作りすれば、たった一冊でも色んなひとに触れてもらえる」と。詩や短歌を創作する、ことばを紡ぐ人間である私は、それまではSNSにテキストで作品を発表しては、顔のわからない人たちからの"いいね"で自分の作品の良さを勝手に判断していた。フォロワーや仲間ができても、窮屈だった。自費で作品集を製作して、文学フリマなどに出店しようとも考えはいたけれど、あの頃のままでは自信がなく、自分の作品を誇れない私には自費で作るべきものではなかった。

言葉の作品をインターネットに投稿するひとの多くは、あくまでも"インターネット"という場所だから、顔出しはあまりしない。それだけでなく、自我をあまり見せない印象があった。それは、作品を純粋に楽しんでもらうためだった。私にはそれができなかった。スマホに依存している私は、何でも写真に撮るし、辛いことも楽しいこともネットだからこそ吐き出した。それは時に、作品の邪魔をしているだろうと自覚する。それでも、それを含めての作品だとも思っていた。私という人間の、細かな生活があってこそ、それを見せてこそ、成り立つ作品であれば良いと思っていた。だったら尚更、ネットだけでなくリアルな現場で紡ぐべき。その場所がありがたいことにFLATとなった。

第一作品集『 青-あお- 』


ものづくりが好きな私は、約二週間で手作り感満載の詩集と歌集を完成させた。去年の5月から、私の詩や短歌はひとの手に触れてもらえるものになった。今年の7月には、製本やデザインを進化させて相変わらずの手作りで第二作品集を製作した。

私が生きるまち木更津市にていつでも読んでもらえる状態となった、癖の強い字で書いた私の作品たち。展示を始めてから今までに、作品よりも、製本されて形になったそれらよりも、そして私自身よりも、価値のある出会いをたくさん経験した。本当に本当に、心の底から幸せ!

第二作品集『 生きるはきっと青纏うこと 』


その場で涙を流しながら読んでくださって、目を輝かせながら全身で感動を伝えてくださったおばあちゃん。二回目にお会いできたときにも、「元気そうで良かった!」と言ってくださったこととか、私は絶対に一生忘れないでいたい。

作品を読んで、心が動かされたと連絡をくださってから、定期的に丁寧な応援を送ってくださる利用者の方もいる。その方と今年の六月に開催されたブックマーケットで直接お会いして、感謝をお伝えして、握手をしたときの感覚も絶対に忘れたくない。

ゆっくり読みたいからと、席で真剣に目を通してくださった本棚オーナーさん。具体的にどれが一番好きかまで伝えてくださって、「これからも辞めないで。新作を楽しみにしているね。」と、詩人・歌人としての私へ応援の言葉をいただいた。

それから、"誰が書いているかわかるから"とインターネットに散りばめる作品との違いを、良いものとして捉えてくださる方々なども。まさに私が望んでいたそれが、ひとに伝わった。そして、私という人間が、そこから発表される作品たちが、"ひとに伝わるもの"として肯定してもらえた。それがまた幸せだなと思う。

私が直接見かけていないときにも、あまりにも手作り感があるからと興味を抱いてくれるひとも。良いなと思っていただけた箇所に付箋を貼ってもらえていたりと、目に見えないながらも、そこに私の作品がある意味を感じられることもあった。

私が私であるからこそできることを、FLATだからこそ実現できている。

友達と飲んだレモネード

この一年半の間に、友達にもFLATへ来てもらった。愛知・静岡・岐阜・東京・そして木更津の同級生。みんなが共通の友達というわけではないのに、面白いほどに口を揃えて私のことを「変わっていないね。」と言ってくれる。続けて、「有言実行だね。昔から行動力があるよね。」とも言ってくれた。

私が唯一続けられることなんて、自分のことを言葉にしたり文章に起こすことくらいなのに、そこに言霊を宿らせているから、友達はそれを記憶として持っていてくれる。私が何を大事に思って生きているのかを、疎遠になってもずっと知っていてくれている。FLATに足を運んでくれた友達に、この場所のことを話して、私の棚を見てもらって、昔の呼び名のまま、「あなたらしいね」と肯定される。みんなが知っている頃の私とは状況も生活もまるっきり違うのに、私は私のまま、大切なものを大切にできている。友達が、それを気づかせてくれる。そしてそれもまた、FLATのおかげ。

さらに、そんな自分をこうして少しだけ誇ることができるのは、FLATでのさまざまな経験や出会い、自分自身についての発見を経て、ありがたいことにプレオープンから一年になる頃、スタッフとしても仲間になることを声をかけていただいたからでもある。昔から自分のどこか片隅で、大好きなまちである地元木更津でまちづくりに携わりたいとうっすらと思い続けていたことが、微力ながらも一歩踏み出せる状態になった。今はスタッフとして、週二日程度でお店番をしている。元気なときはそれ以外の日にも利用者としてFLATへ行く。週のほとんどをFLATで過ごすことが少なくないこのごろ。

本棚オーナーさんたちのやりたいことやスタッフたちのやりたいことなどを、否定せずにとりあえずやってみることを大事にしているFLATで私は、両方の立場でのびのびと呼吸をしている。何かを「やりたい!」と言えば「やろう!」と言ってもらえる。最近は、"得意分野"という言葉の響きが素敵だと思えるくらい、私の得意なことを積極的に発揮させてもらえていると自負する。

誰もが自分らしく生きられるわけではなくて、世の中には綺麗なものよりも多く、しょうもない壁が存在する。恵まれた環境などは、ほんのひとにぎりしかないように思う。それをわかっているうえで、私がここにいられることは恵まれているからであったり運が良いからだとは思わないようにしたい。あくまでも自分のために。私が誰でもなく私でいるから、ここにこうして居場所がある。「よく生きているね、よく生きてこれたね。」と思わずにはいられない人生。でも、「生きていられなかったとしても間違いではないよ。」と、これは私が私に対して常に固く思っていること。そして自分にだけでなく、周りのひとにも『何を選んでも正解だよ』と言い続けながら生きている。だいぶ大袈裟な話になってしまったように聞こえるけれど、紛れもなく本心。

一番好きなヨーグルトのフタで作ったしおり


最近の楽しいことは、なんとなく毎日食べるようになったついでに可愛いからと捨てずに集めていたカップヨーグルトのふたを、"本のしおり"に変身させたことと、それを配布していることなど。しおりはいくらあっても良い。次はペットボトルのキャップで工作をしようと計画している。FLATのおかげで、元々好きだったものづくりが、ただの趣味ではなくて、趣味の延長上でひとの手に渡るものになった。(ちょっと無理矢理に渡しているかもしれないけれど。)


そして何より、本が読めなかったはずなのに、前よりは読めるようになった。"読み終わったら棚に置こう"という楽しみがあるから、読みたい本との出会いが意識的に増えている。シンプルとは程遠い本棚になりがちだけれど、これからも足したり引いたりをしながら私のアイデンティティを表す本棚をFLATにつくり続けたい。この場所に出会ってから、今までもこれからもずっと、わくわくしている。

"みんなでつくる図書室"
ひとりで来ても、誰かと来ても、話さなくても、おしゃべりを楽しんでも、何も考えずに過ごしてもいい。本なんか興味ないと思っていたって、悪いことではない。イスとテーブルがあるから寄る、珈琲が安いから来てみる、なんかゆるそうだからと適当に過ごす。それだけでも良い、それこそが良いとも思う。ふら〜っとした日常に、駅の真下に"本のある場所"があるだけでいい。もしかしたらまた来たくなるかもしれない。もしかしたら本に触れたくなるかもしれない。もしかしたら、そのなかにほんの少し、こころやからだを動かすきっかけになる言葉があるかもしれない。それで良くて、それが良いと思う。ふらりと巡ってゆく日々が、そこにいる誰でもないみんながつくっていく図書室。私は駅の図書室FLATが大好きです。祝 一周年!この先も、このまちに私の居場所をつくり続けられますように。みんなの居場所で在れますように。

2024.09.01 彩結ゆあ

淹れるたびに成長できている珈琲


一年前にオープンするときに綴ったものはこちら🔽


去年の私へ
相変わらずFLATを居場所として生きているよ〜〜
これからも!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?