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33-1.オンライン事例検討会でスキルアップ

(特集:iNEXT大変革予告キャンペーン)

下山晴彦(臨床心理iNEXT代表/跡見学園女子大学教授・東京大学名誉教授)

Clinical Psychology Magazine "iNEXT", No.33-1

<ご案内中の研修会>

「注目新刊書」著者オンライン研修会
 
「みんなの事例検討会☆代替行動アプローチ」
―変化をつくり出す技法を学ぶー
 
講師 入江智也 北翔大学 准教授
   谷口敏淳 一般社団法人Psychoro 代表理事
 
日程 12月4日(日曜) 9時〜12時
※  当初11月19日(土)で実施予定でしたが、都合により12月4日(日)に変更となりました。ご了承ください。
 
【新刊書】『代替行動の臨床実践ガイド−「ついやってしまう」「やめられない」の<やり方>を変えるカウンセリング』(北大路書房 2022年6月刊)
※  https://www.kitaohji.com/book/b606156.html
 
【申込み】
[臨床心理iNEXT有料会員](無料):https://select-type.com/ev/?ev=JNUxsaFrUHc
[iNEXT有料会員以外・一般](1000円):https://select-type.com/ev/?ev=ymGimO4_23s
[オンデマンド視聴のみ](1000円):https://select-type.com/ev/?ev=cYGoiqHo4s4
 
※  臨床心理iNEXTは、2022年12月より、「心理職コミュニティ創造」をテーマとして会員サービスを大幅に充実いたします。そこで、会員サービスUP記念キャンペーンとして格安価格でオンライン事例検討会シリーズを企画します。

1.iNEXT大変革キャンペーン

臨床心理iNEXTは、創設してから早くも2年半経ちました。その間の経験を踏まえて、新たな誕生とも言える大変革を実行します!来る12月には、大変革をした臨床心理iNEXTのサイトを公開し、新たなサービスをスタートします。
 
新たな臨床心理iNEXTは、より良い“心理サービス”提供のために心理職が成長する“場”となることを目指しました。そのために、心理職の分断を超えて会員みんなで協力して心理職として成長する“コミュニティ”となることを目標とします。
 
大変革の記念キャンペーンとして、来年の3月までの臨床心理iNEXT全企画について、有料会員の皆様は無料でご参加いただけるようにします。また、有料会員以外の皆様も千円という廉価でご利用いただけるようにします。
 
多くの方に臨床心理iNEXTの、新たな活動を経験していただけたらと願っています。予告編として、現在、鋭意構築中サイトのトップ画面を、公開に先立ちご紹介します。


2.みんなの事例検討会に参加してみよう!

新たな臨床心理iNEXTは、心理職が専門職としての自らの技能を磨いていくために、今何が必要なのかを会員の皆様と一緒に考え、創造していくコミュニティの場になります。事例検討会は、そのような心理職コミュニティの中核的な活動です。
 
事例検討を通して心理職の活動の現実が見えてきます。そこでの議論を通して、より良い心理サービスを実践するためにどのような知識や技能が必要なのかが見えてきます。しかも、議論を通してメンバー間の仲間意識が醸成されます。
 
今回は、「どうしてもついやってしまう」「やめたくてもやめられない」といった依存性と反復性を特徴とする問題行動の変容をテーマとするオンライン事例検討会を開催します。
 
参加者は、事例発表者と検討会メンバーの質疑応答の観察を通して最新の代替行動アプローチの実際を学ぶことができます。しかし、それだけでなく、オンライン事例検討会の実施手続きや、事例検討会を通してスキルアップする方法を学ぶことができます。チャットを通して議論に参加することもできます。


3.分断を超えて心理支援の本質を学ぶ

今回のオンライン事例検討会では、注目新刊書である『代替行動の臨床実践ガイド−「ついやってしまう」「やめられない」の<やり方>を変えるカウンセリング』(北大路書房)※)の著者が事例を提示し、さまざまな観点から心理支援の進め方を検討します。
※)https://www.kitaohji.com/book/b606156.html
 
3時間の研修会の時間を前半と後半に分けて、2事例の検討会を行います。前半はリストカットの事例について一般社団法人Psychoro谷口敏淳先生が発表されます。後半はゲーム依存の事例について北翔大学の入江智也先生が発表されます。
 
参加者は、本研修会に参加することを通して行動療法や応用行動分析の基本的な介入方法を学ぶことができます。しかし、それだけではありません。発表者と事例検討メンバーとの議論を通して心理療法の基本とは何か、変化を起こすために何が重要となるのかといった心理支援の本質を学ぶことができます。
 
臨床心理iNEXTのオンライン事例検討会では、心理療法の学派の違いや分断を超えて心理職にとって必要な技法とは何かを議論していきます。


4.事例1「繰り返されるリストカット」

Aさん(19歳・女性)。専門学校生。高校を卒業後、親元を離れて県外の専門学校に進学。うまく友達が作れなかったことなど学校に馴染めない状況が続いたことで、リストカットを行うようになった。
 
その後、リストカット以外にうつ症状や不眠など学校適応に困難が生じ出したことから、精神医療機関を受診したところ、うつ病と社交不安障害の診断で治療が開始され、心理職による認知行動療法が導入された。リストカットについて確認すると、友達から取り残されている孤独感を中心に否定的な感情がトリガーであることが明らかとなった。
 
そのため、それら否定的な感情やリストカットをしたい衝動に関してセルフモニタリングを行い、気づいた際にはリストカット以外の方法(代替行動)での対処に取り組んだ。その後、リストカットのトリガーでもあった否定的な感情の緩和に向けた認知的介入が奏功したことで、その代替行動にも取り組みやすくなり、リストカットは減少していった。(谷口敏淳)


5.事例1の検討テーマ「関係性の構築」

リストカットに対する代替行動の形成に関する事例検討ですが、その本質的なテーマは、クライエントと共に代替行動の形成と維持に取り組んでいくための関係性の構築と言えます。

認知行動療法は構造化された具体的な手続きと、その有効性が主に取り沙汰されてきました。しかしながら、認知行動療法とは学習理論に基づき開発された具体的なスキルを集めた技法群であり、代替行動の形成もその1つに過ぎません。つまり、各技法を用いるためには、当たり前のようにセラピストとクライエントに基盤となる関係性が構築されていなければ、期待される効果は望めないというのが実際です。

本事例検討では、リストカットを呈する患者に対する代替行動の形成と維持を目指した過程を報告します。特に、具体的な介入に取り組むまでの関係構築のポイントや留意点に焦点を当てて報告し、日々の臨床に活かせるスキルとして具体化及び一般化につながれば幸いです。(谷口敏淳)


6.事例2「昼夜逆転のゲーム依存」

Aさん14歳男性(中学2年生)。中学校入学当初は問題なく通学していたが、1年生の後半頃より友人とゲームをするようになる。最初は楽しそうにプレイしながらも日常生活は問題なかったが、2年生になってから昼夜逆転し始め、不登校傾向となる。
 
今では寝ている時以外はゲーム端末を手放せず、一日中何かしらのゲームをしている。両親が叱責するも変わらず、ゲームを取り上げることを話題にすると激昂してしまったこともある。そのようになると自室にこもってでてこなくなり、食事も摂らなくなってしまうので、このまま引きこもってしまいそうで、取り上げることはもう話題にはしていない。
 
せめて学校に行っているはずの日中の時間帯はゲームをせずに勉強して欲しいと伝えてきたが、分かっていると言いながらゲームをやめることはなく、今では日中は寝ていることが多くなってしまっている。親が繰り返し強く言うと「うるさい」などの暴言が返ってくるため、それ以上のことは言えずにいる。(入江智也)


7.事例2の検討テーマ「保護者との協働」

他の行動嗜癖と比較して、ゲームへの没頭は、①若年で生じやすいこと、②(問題となる)行動の持続時間が長いことなど、特徴的な側面があります。
 
①については、思春期青年期という発達段階との関係やそもそもの行動レパートリーの少なさ、②については機能的に等価な代替行動もしくはターゲット行動と拮抗する(同時に成立しない)代替行動の案出の困難さがつきまといます。さらに、当事者が若年であることから、実際のカウンセリング場面では保護者のみが来談して本人が来談しないことも少なくありません。
 
上述のとおり、本事例検討のテーマは、ゲームの代替行動はシンプルには捉えられないことを踏まえ、代替行動を確立するために必要となる下準備を検討することにあります。ゲームに関連する問題を解決するために、どのような視点で事例をとらえ、どのようにして保護者等と協働して介入を行ったかを報告することを通じて、より実際的かつ効果的なゲーム障害に関する介入・アプローチ方法について、皆様と学びを深める時間にできればと考えております。(入江智也)


8.重なり合う心理支援の方法から心理職発展の道筋を探る

近年、心理職は、夜更かし、ゲーム、ギャンブル、飲酒、喫煙、風俗通い、薬物、リストカット、家族間のコミュニケーション不全等々といった依存行動に関連する事例を担当することが多くなっています。このような事例においては、行動療法や応用行動分析を用いた依存行動に替わる代替行動を形成する代替行動アプローチによる心理支援が役立ちます。
 
行動療法や認知行動療法というと、セラピストがクライエントの認知や行動を操作して、変容を起こす、機械的な介入と誤解している人も多いかもしれません。そのような誤解が心理職の分断の原因や維持の隠れた要因になっています。
 
今回の事例検討のテーマとなっているように行動療法や認知行動療法であっても、セラピストとクライエントの関係構築や保護者との協働が重要なテーマとなっています。そこでは、クライエント中心療法のカウンセリングや精神分析、家族療法の考え方や技法も関わってきます。さらには、問題解決という点ではブリーフセラピーの方法と重なってきます。
 
臨床現場では、さまざまな方法が重なり合って役立つ心理サービスが実践されています。事例検討会は、そのような現場の経験と知恵を心理職の発展に結びつける機能を持っています。


9.分断を超えてみんなで心理職の未来を創る

臨床心理iNEXTは、このようなさまざまな方法が重なり合う事例検討会の経験を通して、心理職が共有する価値は何かを、そして現代の日本社会で心理職が発展していくためのアイデアを紡ぎ出していくことを目指します。新たに生まれ変わる臨床心理iNEXTのミッションは、そのような心理職のコミュニティを提供することです。
 
心理職が皆で協働して発展する道筋が見失われています。学生は試験準備に追われ、若手心理職は将来目指す共通モデルが見えない中で頑張っています。改めて心理職の基盤となる基本とは何かを事例検討を通して探ります。
 
心理サービスに関わる多くの皆様がオンライン事例検討会に参加し、臨床心理iNEXTの会員になっていただき、心理職の未来を一緒に創っていくコミュニティに参加していただけたらと願っています。臨床心理iNEXTの活動にご関心を持った方は、ぜひ会員登録をしてください。
会員登録⇨ https://member.cpnext.pro/inext_regist/memberReception.jsf

■記事制作 by 田嶋志保(臨床心理iNEXT 研究員)■デザイン by 原田優(公認心理師&臨床心理士)

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臨床心理マガジン iNEXT 第33号
Clinical Psychology Magazine "iNEXT", No.33


◇編集長・発行人:下山晴彦

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