地上種、惑星種、天使たち。ミナトが住んでいる不思議な世界の日々を短編、掌編、詩で。(主人公ミナトは名前と自称「ぼく」以外、性別も年齢も不明です。読み手が考える人数分のミナトが存在…
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星の舞う夜に/ミナトシリーズ
7月7日、星舞いの夜。ミナトはここ、明かり採り《あかりとり》名所【銀の谷】に来た。
目的は明かり採りでも観光でもない。明かり採りの名人で幼なじみの七夕(しちゆう)が、すごいものを見せてやるから来いと言うので、来た。理由を聞いても内緒の一点張りで、行かないといえばしょげる。けっきょく、ミナトは七夕に負けて誘い出されたようなものだった。
「まあいいけどね」
釣り竿を持って明かり採りに来た人たちの間
願事宅配便/ミナトシリーズ
‘想い宅配便 ~その願い・叶えます~ ’
玄関に大きく貼り出されたポスターには、天使の翼をモチーフにした文字でそう書かれていた。並んで受付締切日、営業時間、そして。
‘場所:水晶森の南風のとなり エンジェル館’
ポスターに目をやるたび、ミナトは苦笑する。ミナトはそこでバイトしていた。
「この名前は詐欺だよなあ」
『想い宅配便』は天使が行っている事業だから、単純に‘エン
観察風景/ミナトシリーズ
骨董屋で買ったカセットの中身は野外で録音された記録ものらしく、強い風の音の向こうから、二人の会話がかろうじて聞き取れた。
影だよ。見えるだろ、ほら。
わかんないよ。
よく見てりゃわかるよ。あ、また跳んだ。すげ。
どこどこ。
あそこだってば。一番もくもくしてるトコ。
雲ぜんぶもくもくしてるぞ。
ああほらほら! あそこ!
いた! あ、くそ。もう雲ん中隠れちまった。お前よく、あんなち