いなぞう(羽風草)

オリジナル短編小説を書いている羽風草(はねかぜそう)です。(HNいなぞう) 「スキ」いつもありがとうございます! 創作の励みになります。 noteに文章を投稿することに慣れず時間も割くことができず、ほぼ更新停止してます。 気分転換に読んでくだされば幸いです。

いなぞう(羽風草)

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最近の記事

ひさしぶりにログイン。 パソコンが壊れて数ヶ月 お下がりタブレットとも仲良くなってきました まだまだ慣れないけど したいことができない●ソ役立たずタブレットでも なんとかnoteを見るくらいまで できるようなりました じわじわと再開したいと思います

    • よおーしノートnoteに続きをアップするぞー、と思いつつできてないのは、つい呑んじゃったせい。行ってみたかった居酒屋のテイクアウトおつまみが美味しすぎて困る(しあわせ)。

      • 新人研修

         研修室。自分を含めて新人数名がおそるおそるテーブルを覗き込んだ。新品の片足だけのスリッパが10種類ほど並べて置いてある。テーブルの向こう側には研修指導員が厳しそうな顔つきで立っていた。 「では実践してみましょう。このなかで一番鮮度がいいのはどれか」  鮮度……? 「先ほど説明したとおりですが、スリッパはなにより鮮度が大事です。これをよく見極めないといけません。さっき話しましたね。どこで鮮度を見るかーーはい、どこ?」  冷徹な視線と物言いに怖気づき、指されたほうはおろおろとし

        • ある音楽家が語る

           その作曲家は名曲を数多く出しており、番組インタビューでも終始やさしくおだやかだった。それはまるで彼の作った曲そのままのようだった。 ーーあの名曲が生まれたエピソードも有名ですよね。 「そのようですね。でも作曲家ならよくあることですよ」 ーーそうなんですか? 「ええ。あの曲の時は、5段階の音符たちが来ました。彼らと遊んでいるうちに生まれた曲が、あれなんです」 ーーへえ! 「曲によって来る音符たちは違いますが。5段階もの音符たちが来たのはあの曲だけですね」  忙しかったけれどと

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        マガジン

        • 万華鏡散歩
          11本
        • 羽風SS集
          10本
        • ミナトシリーズ
          10本
        • 掌編いろは
          47本

        記事

          全生命体を守るため

           うちの会社の定期会議は合宿の反省会だと思う。床に体育座り状態になり、エライヒトの話を聞かされるだけだ。その夜もぎゅうぎゅうに詰め込まれた会議室の片隅で、聞いていないフリがバレないよう真顔を作り、小さくなって業績報告を聞いていた。  同僚が息を切らして「よう」とすぐ隣に身をねじ込んできた。仕事先から直で来たらしく、背広があちこちすり切れ、泥や草もそのままだ。そっと手をあげて、無事帰還したこと労う。 「ぼろぼろじゃん」 「それがさ。聞いてくれよ」  げんなりする顔に、つい期待

          全生命体を守るため

          家庭菜園

           ふう。腰がつらい。  自宅前にある我が家の菜園はご近所に比べたらちいさいけれど、菜園らしく雑草も生える。身を起こして腰を伸ばしたとき、隣の家の奥さんが声をかけてきた。 「あら、ごくろうさま。そういう時期よねえ」  お隣にも家庭菜園はあって、うちよりずっと上手に管理していることは知ってる。おしゃべり好きな奥さんは苦手だけど、嫌な顔を見せずに笑顔で応える。角が立たない程度のご近所づきあいが、平穏に生活するコツだ。  奥さんがうちの畑を指した。 「そちらはなあに?」 「手榴弾です

          ともだち

           3人の「ともだち」が、うちの玄関前までやってきた。  これから一緒に楽しいひとときを過ごそうと、玄関前でクスクスうふふと笑って待っている。  誰かと会う約束をした覚えはないし、覗き窓から見える顔ぶれは、まったくの初対面ばかりだ。つまり、にせものだ。誘いに乗ったが最後、捕まってしまうだろう。そうはいかない。玄関越しに「誰だっけ」と尋ねてみた。  いやだ分かってるでしょう  にせものたちは冗談でも聞いたようにケラケラ笑うばかりで名乗らない。  会いにきたんだから、はやくここを開

          ドラマ「地獄ケ淵」

           おおきな洋館に住む、とある華族のドラマを見ていた。  遺産相続に人間関係が揺れるなか、一見、無関係の人が死亡する。事件の鍵を握るのは、自分の親友であり令嬢だと、長男の許嫁である主人公が気づいた。そこまでが前回のあらすじ。  次回が最終回なので、前回から今までの泥沼伏線がかなり強引に回収されている。それだけに展開が早い。あれだけこじれた遺産相続問題は笑えるほどすんなり収まった。突如現れた新キャラで解決し、第一話から想像もつかない穏やかな雰囲気になった。新キャラの婚約披露会で

          ドラマ「地獄ケ淵」

          悲叫/悲問

          「悲叫」 どうして。 何故。 問いても答えはかえってきやしない。 わたしがなにをした。 わたしは友に会っただけだ。 それの仕打ちがこれか。 何故だ。 怒りで叫んでも誰にも聞こえない。 自らの悲しい声は蒼い闇をふるわせ、 耳すら塞ぐことができないわたしに 否が応でも聞こえてしまう。 あふれる涙も拭うことができず。 指ひとつ動かすこともできず。 吐息すら捕らえる呪縛。 ただひとつの自由、意志は激しいまでに強くなる。 私ヲ解キ放セコノ戒メヲ解ケワタシヲ解キハナセ 何故わたしを―

          魔法少女ラッキー・ミルキー

           ぽっかりと出た三日月が輝く夜空を、ひとつの影が横切る。  猫だ。夜空と同じ闇の色をした猫だ。猫独特の敏捷性を持って屋根から屋根へ飛び移っていく。ただし象くらいの大きさなので、いかに軽やかな足どりでもトタン屋根をすこしへこませて。 「まーちーなーさあああい!」  巨大猫をかわいらしい声が追った。鈴のような声は苛立っていたが、それすらかわいらしい。  猫が追っ手の声に驚き立ち止まった瞬間、はるか頭上でなにかが光った。 「みるきぃぃぃ、ふらーっしゅぅ!!」  光が声に乗って地上に

          魔法少女ラッキー・ミルキー

          ねむりひめインジャパン

           はい、またまた今年もやってきました『眠り姫インジャパン』!!  今年で第38回を迎えるわけですが、今年はメダリストの山田やK-1でハイキック帝王と呼ばれた男・吉田もいます。若手代表ともいえる現役高校生の斉藤、この春に定年退職した鈴木はなんと第1回に出場した過去を持っている。実に精鋭ぞろいといえます。いやあ今年も目が離せません!!  えー。選手達はそれぞれウォーミングアップを始めた模様です。  ではこの間に『眠り姫インジャパン』の歴史を説明いたしましょう。  そもそもの始ま

          ねむりひめインジャパン

          10月31日

          「といっくあーといー! おかしくれなきゃたべちゃうぞっ」  「食べるんじゃなくって、いたずらでしょ。お帰り、まいちゃん。どうだった?」  「うんっ! おもしろかった!」  「うわ、服にペンキつけられてきたの? 顔まで真っ赤じゃない。待って待って、上がらないで。玄関で脱いでね。床についたら大変だわ。今タオル濡らしてくるから。ペンキ、お湯で落ちるかしらね」  「ペンキなんてぬってないよ、ママ」  「じゃあ顔のペイントのヤツかしら……そうそう、いっぱいもらえた?」  「じゃああんっ

          動物園へ行こう!

           友達数人と、バスで動物園に向かう。今日は特別な日だ。動物園に一番近いバス亭で降りると、立て看板で道を確認した。ここから一直線なのか、近道はあるのか。  みんなでああだこうだ話している横から、白いワンピースを着た彼女が言った。 「バスってバス亭で停まるんですね。はじめて知りました」  ちょっと空気が固まった。でもすぐにみんなで「うん、そうなんだよ」と笑顔で頷いた。  彼女はアンドロイドだから、乗るバスといえばガソリンスタンドに直行するバスだ。ずっと同じ寮で生活している友達だけ

          塔の上

           まるい部屋は石を積んだ無骨な壁でできている。窓がひとつ。鍵のかかっている扉もひとつ。あとは乱雑に積んであるダンボール箱。一番上の箱は天井につきそうなほどだ。  なにもはまっていない窓から外を見おろして、息を吐いた。ほんとうにここは窮屈で苦しくてたまらない。  自分が入れられているここは塔の上だ。それもかなり高いらしく、小鳥が窓より低いところを飛んでいた。窓下に生えている樹木の高さから見ても、ここから飛びおりたら命はないと教えてくれる。  はあ。壁にもたれて座り込むと、鎖がち

          奪還

           顔も名前も知らない大勢の仲間と一緒に、森の邸宅を訪れた。ここの女主人は旧友の知り合いなので、旧友の名を出すとすぐに門が開いた。整えられた庭を横切り、玄関前に人が立っていた。細身でこれといった特徴のない顔の女主人だった。  客間に通され、招かれた客人たちにお茶が振舞われた。彼女は「あの人の友達なら私の友達だから」と言って、貴重な菓子まで並べてくれた。やさしい笑みはまるで親友を見ている目つきだ。  しばらくして、何か思いついたように女主人が中座した。なにか取りに行くらしい。  

          ぼくのねがい 後編

          ACT.3  遠い国の話 「今を捨てることができない者に、‘渡る’資格はない」  クリスマスはパソコンの定位置から冷血の裁判官のように見下ろした。  僕は床に大の字になる。裁きを受けた疲れで、全身の力が抜けていた。きっと僕はこの選択に死ぬまで後悔し続けるだろう。反面、妻や生まれてくる子供を殺してまで叶えたくない。だから未練はなかった。選択は成され、決定したのだ。 「殺すとか捨てるとか、できないに決まってるだろ」 「確かにな。王と違って、お前は恵まれている……」  憂いを含ん

          ぼくのねがい 後編