しろい森

木も草も鳥も虫も白く、夜も来ない
‘しろい森’のまんなかで
ミナトは同行者と上を見上げた
そろそろだね
はじまったかな
隣に立つ賢者シャスはうなずいた

しろい森は祝福の森
葉ずれの音が
さまざまな色の 音の雨になる
かるく おもく ふかく ひびく

鈴のような
笛のような
鼓のような
鳥のような
虫のような
声のような

さまざまな音が重なる
その和音 和音 和音

音が重なると
音の色がうまれる
赤が 青に 黄が 緑に
つぎつぎにうまれる色と音
呼吸するようにエコー
応えるはグラデーション

しろい森の色が見られるのは
自分の誕生日だけ
生まれた時間の前後5分間だけ
それは自分のための音楽
自分のための色彩

祝福の音と色をかなでる
しろい森は 白いままなのだね
記憶に残すのもむずかしそうだ
誕生日を迎えた友の残念そうな言葉に
ミナトは笑って同意した