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書籍レビュー

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#純文学

書籍レビュー『三四郎』夏目漱石(1908)明治末期ならではの恋模様

書籍レビュー『三四郎』夏目漱石(1908)明治末期ならではの恋模様

【約1400字/3.5分で読めます】

愛されようとして愛を得ない
複雑な愛の心理を描く私が読んだ角川文庫版の裏表紙にある解説には、このような文句が並んでいました。

ここだけ読むと、恋愛小説のような印象を抱かれるかもしれません。

しかし、本作は恋愛小説というほど、恋愛を中心に描かれた作品ではなく(もちろん大きな柱ではあるが)、地方から上京した青年がさまざまな人たちと出会い、成長していく青春小説

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書籍レビュー『武蔵野』国木田独歩(1896~1900)独歩が愛した風景の詰め合わせ

書籍レビュー『武蔵野』国木田独歩(1896~1900)独歩が愛した風景の詰め合わせ


一度は訪れてみたい武蔵野国木田独歩(くにきだどっぽ)の
『武蔵野』は中学時代に知り、
いつか読みたいと思っていた作品です。

中学時代の私が本作を
知ったきっかけは、
『鉄腕アトム』でした。

『鉄腕アトム』
「赤いネコ」の冒頭で、

手塚治虫が登場し、
『武蔵野』の一文を
引用していたんですよね。
(作中にも武蔵野が出てくる)

「武蔵野」という地名は、
その時に知ったのですが、
とてもインパ

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書籍レビュー『檸檬』梶井基次郎(1925)「ままならさ」とともに生きる

書籍レビュー『檸檬』梶井基次郎(1925)「ままならさ」とともに生きる


早世の作家が残した作品群『檸檬』は著者の代表作でもある
短編小説で、はじめて刊行された
創作集のタイトルにもなっています。

この作品は、以前から知っており、
書店の本棚の上に
「レモン爆弾」なるものを置く、
という結末を聞いて、

「一体、どんな話だろう」
と興味を惹かれました。

実際に読んでみると、
精神を患った主人公が
京都の街中をうろつくさまが
描かれた作品で、

街中で観た風景の描写

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書籍レビュー『坊ちゃん』夏目漱石(1906)漱石をはじめて読むならコレ

書籍レビュー『坊ちゃん』夏目漱石(1906)漱石をはじめて読むならコレ

漱石をはじめて読むならコレ夏目漱石の作品を
はじめて読みました。

きっかけは note で
仲良くしていただいている
栗英田テツヲさんのオススメでした。

テツヲさんが、
夏目漱石の作品がお好きだというので、
「最初に読むなら何がいいでしょうか」
と質問したところ、

本作を挙げてくれたんですよね。

私もそうでしたが、
読んだことがない人からすると
「夏目漱石」なんていうと、

硬いイメージで

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書籍レビュー『破戒』島崎藤村(1906)差別とは何か考えさせられる

書籍レビュー『破戒』島崎藤村(1906)差別とは何か考えさせられる

※3000字近い記事です。
 お時間のある時に
 お付き合いいただけると嬉しいです。

『破戒』と「部落問題」島崎藤村は、以前、
詩の作品を紹介したことが
ありました。

この詩から興味を持って、
ぜひとも島崎藤村の
小説も読んでみたいと思い、
手にしたのが本作です。

『破戒』は島崎藤村の
実質的な小説デビュー作で、
「自然主義文学」に分類されます。

「自然主義文学」とは、
「真実」を描くため

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