見出し画像

書籍レビュー『坊ちゃん』夏目漱石(1906)漱石をはじめて読むならコレ

漱石をはじめて読むならコレ

夏目漱石の作品を
はじめて読みました。

きっかけは note で
仲良くしていただいている
栗英田テツヲさんのオススメでした。

テツヲさんが、
夏目漱石の作品がお好きだというので、
「最初に読むなら何がいいでしょうか」
と質問したところ、

本作を挙げてくれたんですよね。

私もそうでしたが、
読んだことがない人からすると
「夏目漱石」なんていうと、

硬いイメージで難しい作品を
連想されるかもしれません。

ところが、本作はとても読みやすく、
難解さは、まったく感じられませんでした。

「初心者向け」の問いに対する
ナイスなチョイスです。

生粋の江戸っ子気質

『坊っちゃん』は、
『吾輩は猫である』に続く、
夏目漱石、2作目の中・長編小説です。

(『吾輩は猫である』は長編小説。
 『坊っちゃん』は中編小説)

漱石の作品の中では、
もっとも愛読されてきた作品
とも言われます。

「坊っちゃん」とは、
本作の主人公のことで、
物語はすべて彼の語りによって、
描かれています。

東京生まれの江戸っ子で、
曲がったことが大嫌いな性格です。

しかし、なぜか、実家では、
兄ばかりがかわいがられ、

弟の坊ちゃんは、
ないがしろにされている感が
否めません。

そんな中、下女(女中)の
清(きよ)だけは、
坊っちゃんに一目置いており、
何かにつけて気にかけてくれます。

そもそも「坊ちゃん」なる愛称も、
清が名付けたものでした。

清は、まだ子どもだった
坊っちゃんに、
うちを持ったら、また雇ってほしい、
と頼んでいたほどです。

学校を卒業した坊っちゃんは、
四国の旧制中学の数学教師として
赴任します。

そこで待っていたのは、
癖の強い同僚の教師たちと、
やることなすことが筒抜けの
田舎暮らしでした。

ストーリーよりも
文章そのものの魅力

坊っちゃんが赴任した田舎では、
同僚の教師たちとひと悶着あったり、
何をするにも噂をされたり、
といったトラブルが多くあります。

しかし、本作は純文学なので、
話の筋がおもしろいといった
類の作品ではない気もしますね。

その証拠の一つとして、
これだけ有名な作品なのに、
映像化作品は、
あまり成功していないことも挙げられます。

調べてみると、『坊っちゃん』は
何度も映画化、ドラマ化されていて、
いずれの作品においても
キャスティングは錚々たる顔ぶれです。

しかし、どの作品も知名度はありません。

実際に観てみないと、
本当のところはわかりませんが、

『ひょこりひょうたん島』などでも
知られる作家、井上ひさしは、
その理由を

「徹頭徹尾、文章の面白さにより
 築かれた物語であるから」

と指摘していたそうです。

たしかに、そのとおりで、
本作のもっとも魅力的な部分は
坊ちゃん自身の語り口の中にあります。

生粋の江戸っ子を感じさせる
坊ちゃんの江戸弁は、

今の時代に読んでも
独特な風合いを感じますし、
言い回し、そのものがおもしろいです。

最初は気に食わなかった同僚が、
実はいい奴だったとか、
そういう流れにも
妙なリアリティーが感じられます。

オチとか、そういう部分ではなくて、
やはり文章そのものの魅力が
本作にはあるのでしょう。

だからこそ、多くの人に
読み継がれる名作なんですね。


【作品情報】
初出:『ホトトギス』(1906)
著者:夏目漱石
出版社:新潮社、集英社ほか

【著者について】
1867~1916。
東京都生まれ。
教員を経て、
1905年に『吾輩は猫である』で
作家デビュー。
代表作『坊ちゃん』(1906)、
『草枕』(1906)、
『三四郎』(1908)、
『それから』(1910)など。

【同じ著者の作品】


いいなと思ったら応援しよう!

いっき82
サポートしていただけるなら、いただいた資金は記事を書くために使わせていただきます。

この記事が参加している募集