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BAKENEKO DIARY

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飼い猫が交通事故で瀕死の重傷に。安楽死させるべきか、回復を目指して治療するべきか。治療を選択してからも、食道チューブでの給餌、傷の消毒、エサの選び方等、難題に直面する日々。危機を…
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#安楽死

ー安楽死を宣告された猫との35日間ー 1日目

BAKENEKO DIARY /DAY 1. 事故発生  娘のSを塾に送って、帰ってきた。月曜日の夜7時頃。もうすぐそこが家という交差点を左に曲がると、前の車が減速した。その前に、白の軽自動車が1台停まっている。しかし先には、遠くの方にヤマト運輸のトラックが停車しているだけで、なぜそこで軽が立ち往生しているのかわからない。 軽の運転手さんが降りてきて、前の車の人に話しだした。身振りから、何かをよけたいから、もう少しバックしてくれと言っているようだ。この時はまだ想像していなか

ー安楽死を宣告された猫との35日間ー 2日目

BAKENEKO DIARY /DAY 2. 24時間経ったけど  翌日。中学3年生の娘Sはこの日から2学期の期末テストだった。一人っ子のSにとって、ミータは親の次に近しい存在。ミータもご飯をくれる人(私)を除けば、Sが一番好き。Sのことは、ご飯をくれなくても大好き。くつろぎたいときはSの膝にのり、Sが勉強しているとノートの上に座り込んで邪魔をする。Sは時々、ミータに八つ当たりをして暴言を吐き、その後「ごめんね、ごめんね」とあやまり、なでまわして「かわいい~」と叫ぶ。元は野良

ー安楽死を宣告された猫との35日間ー 3日目-1

BAKENEKO DIARY /DAY 3-1. 試練に耐えるS  この日は、数年前から続けている外国人サポートのボランティアの日だった。期末試験中の娘Sを送り出し、地元の公民館へ。ひと仕事終わって、1年ほど前に飼い犬を老衰で亡くしたボランティア仲間にミータの話をしていると、スマートフォンがなった。Z動物病院から。嫌な予感がする。 「もしもし、Z動物病院です。今、よろしいですか?」 意外と落ち着いた感じの声。 「今日、こちらに来られますか? 先生がお話をしたいと言われている

ー安楽死を宣告された猫との35日間ー 3日目-2

BAKENEKO DIARY /DAY 3-2. 安楽死のレベルです  A 先生の説明はこうだ。レントゲンで見える範囲に致命的な骨折はないが、頭蓋内出血やそのほかのダメージについては、CT検査をしてみないとわからない。本来は麻酔をしてCT検査をするが、ここまで弱っていれば、麻酔ではなく鎮静剤でいけるだろう。しかし、この状態なので検査をすることで亡くなってしまう可能性もゼロではない。そして、検査をして、たとえば頭の骨に異常が見つかったとしても、手術等の処置ができる状態ではない。

ー安楽死を宣告された猫との35日間ー 4日目

BAKENEKO DIARY /DAY 4. 仕切り直しの1日  前日から聞いていたが、この日は三ヶ月に一度の病院の特別清掃の日だった。入院動物の世話はするが、外来は休診、見舞いも不可ということで、病院へは行けなかった。Sは過呼吸で試験を途中退出してから、クラスメートに何があったか聞かれるのが嫌だと、別室で期末試験を受けていた。その試験も今日で終了。病院に見舞いにも行けないということで、ちょっとひと息というブレイクの日になった。    私はSNSはそれほど見る方ではないし、ネ

ー安楽死を宣告された猫との35日間ー 5日目

BAKENEKO DIARY /DAY 5. ミータがぶるった!!  入院以来、ミータに会っていなかった夫のPが、仕事を早めに終えて病院に行くと言う。鼻の骨折はどうなるのか、脚の麻痺はどうなるのかなど、私に聞いても埒があかないことをA先生に直接たずねたいらしい。娘Sはテニスの練習があり、ミータのことを気にして行きしぶっていたが、少しでもミータのことを考えない時間を作る方が良いと思い、そちらへ行かせた。  病院でPと待ち合わせ。ミータはまだICUにいるが、意識ははっきりしてい

ー安楽死を宣告された猫との35日間ー 6日目

BAKENEKO DIARY /DAY 6. 一般病棟へ  昨夜、ミータが身体をふるわせた動画を見た娘Sは、驚喜していた。 「わー、すごい!すごい!ミータがぶるった!」 一度、身体をぶるっと震わせただけなのだが、事故直後を思い出すと、確かにすごい回復だ。  冬休み入ったSと病院に行くと、ICUではなく、看護師さんが面会室にミータを連れてきてくれた。食道チューブで高カロリーミルクを注入しているせいか、うずくまったままではあるのだが、なんとなくシャキッとしたように見える。口を閉

ー安楽死を宣告された猫との35日間ー 7日目

BAKENEKO DIARY /DAY 7. 立ち上がった!  好きなものだと食欲が湧くかも、と看護師さんに聞いたので、大好きだった出汁をとった後の煮干しを、すり鉢ですりつぶし、少しお湯を足して瓶に入れて持っていく。Z動物病院は比較的大きいので、看護師さんは何人もおられるが、ミータの担当は若い男性だ。毎日、時には一日に2回も来る私たちにもミータにも、いつもやさしい。  一般病棟はICUの隣にあって、コインロッカーのように2段にケージが並んでいる。病棟とはいうがもちろん建物

ー安楽死を宣告された猫との35日間ー 8日目

BAKENEKO DIARY /DAY 8. 退院準備あれこれ  私は在宅で仕事をしているのだが、たまたま、この時期は仕事が入っていなかった。入っていてもできなかったに違いないと思うと、タイミングは良かったと言うべきか。もちろん、事故がないのが一番良かったのだけど。  ミータが帰ってきたら目が離せないなと考えて、今のうちにと、事故をしてから休んでいたバドミントンサークルの練習に行った。最近、休んでいた理由を聞かれミータのことを話すと、ペットを飼っているメンバーは目を潤ませな