古いメガネ(409文字)ショートショートnote杯
古いメガネを拾った。
その場でかけてみたら、一瞬目眩がした。気がつけば、やたらと地面が近い。自分の手を前に伸ばすと、それは手ではなく羽だった。
鳥になったのだ。
あまりにトッピなことが起きるとかえって冷静だった。
羽ばたいてみた。空を飛べた。
マンションのベランダの手すりにとまりガラス戸に顔を写してみる。メガネフクロウだ。
学校まで一直線! すごい時短だ。また、自宅の方へひとっ飛び。
あ、いじめっ子の剛だ。あれをやってみよう。うまくできるかな。
真っ直ぐ剛の方向に飛んで、方向転換急上昇、その瞬間に脱糞!
白いフンは、剛のおでこにべちゃり。
「うわー、きったねぇ!」
あー、面白かった。
このまま自宅へ。
ん、何かの気配を感じて、振り向くと、上空に黒い点。グングン近づく。
近くの街路樹にかくれると、すごいスピードでトンビがかすめていく。
死ぬとこだったんだよな。
死と隣り合わせの日常、耐えられない。
もう鳥になるのはやめようと、メガネを外した。