誰も知らない履歴書(桃太郎の履歴書ですね。自作「朝の鬼」の続編410文字)ショートショートnote杯
鬼ヶ島から一艘の船が見えた。
「おい、見てみろよ。俺たちの要塞にたった一人で近づいてくるバカがいる。かわいそうだが捻り潰してやろう。ペットの犬と猿と雉と一緒に。門を開けろ!お前ら手を出すなよ。俺一人で十分だ」
鬼ヶ島の鬼城の門が開け放たれ、屈強な鬼が仁王立ち。
上陸した子供は刀を持ち門の前で待ち構える鬼に向かって一直線。
待ち構えていた鬼は、その姿を見て驚いた。鬼が誰から教えられるわけでもなく自然に覚える身のこなし。着ている服には、大きな桃のマーク。
「あれは……」
鬼の脳裏に、昔の思い出が蘇る。
数年前、この鬼ヶ島でツノのない鬼の子が生まれた。わが子の幸せを願い、人間に拾われ、人間として育ててもらえるように、川の上流から桃に入れて流した男の子。
そう、その子に間違いがなかった。鬼はわが子を不憫に思い、向かってくる子に手を差し伸べた。
桃太郎は、容赦なく鬼を一刀のもとに切り捨てた。空いている城門から入り、そして鬼を全滅させた。