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ぶぶ 「佐倉先輩のこと好きなんです」 食堂の自動販売機にお金を入れていたら、唐突…
「何て答えた?」 「あぁ、それさぁ、桂木、なんでユミたちにやってないって言ったの?」 「…
ふふっ 誰かが笑っている。 あいつが笑っている。 赤いジャケットの黒メガネの角が…
桂木がまだ陸上部と掛け持ちになる前のとある昼休み。忘れ物を取りに体育館を覗いた俺は、バ…
高校生活最初の夏休みを迎えようとしていたある日、クラスが違う綾辻という女の子が、部活を…
八月の県大会に向けて、桂木は夏休み中もバレー部と陸上部を行き来していた。陸上部でない上…
ぶぶぶぶ 熱海を過ぎ、伊東を過ぎ、それからいくつもの駅を超えて終点の下田駅で列車を降りた。 目的の駅に降り立つと、空が広くて気持ちがよかった。黒船の模型とヤシの木のようなデカい木があって、観光地に来た高揚感が涌き上がる。でも、懐かしい気分にはならなかった。たぶん、見た事があるはずなのに。だって、六才まで俺はこの町に住んでいたのだから。 俺は目の前の観光スポットは目もくれず、スマートフォンを出して「心のクリニック」の地図を検索した。駅から三十分くらい歩いた場所にあ
母の四十九日を終えると、俺は芝辰朗に会ってもいいような気になった。母が死んだという事を…
ぶぶぶぶぶ 芝辰朗は、何の解決も与えてくれなかった。「何か困る事があったら連絡し…
雑木林のような庭木の前を歩いていると、車がやっと入れるくらいの入口を見つけた。ポストも…
海が見たかった。 電車やバスの中からチラチラと見てはいたけど、全身で海を感じたかった…
「うそだろ」 俺は慌てて緑の君が落ちた場所へ近づいた。 波が断崖を叩き付けている。人…
「あ、そうだ」 バス通りを歩いている途中、緑の君が思い出したように引き返す。何処に行く…
ぶぶぶ らぶらぶ 高校二年のクリスマスの夜。 俺と桂木はコーヒーショップで 小さなクリスマスツリーを眺めていた。ツリーにぶら下がっている白いリボンのオーナメントに、ハートマークと男女の名前が悪戯書きされていた。 「らぶらぶ、だな」 ロイヤルミルクティーが入ったカップを両手で包み込みながら、桂木は鼻で笑うように言った。 「タツキとアイナが?」 「誰だよそれ」 オーナメントの落書きを差す。 桂木は肩をすくめてミルクティーを啜る。 「クリスマスにさ