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創作と夢

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思い付いたストーリーや夢の話です
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#小説

短編『海』

短編『海』

「今日の最高気温は52℃。今年初の夏灼日(かっしゃび)で、とても危険な暑さです。不要不急の外出は…」

毎日のように暑いが、今日は特に暑いらしい。

「鈴木さん、まじ可愛いよな〜」
「それな〜、あの冷たい感じもいいよな〜」

教室に入り席に座ると、近くの席の奴らがまた飽きずにそう言っていた。同級生や先輩曰く、僕の幼馴染はバカが付くほど可愛いらしい。
だけど顔が良いって話、僕には分からない。

当の

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ショートショート『透明人間』

ショートショート『透明人間』

「水分補給した分だけ
 人の濃度は薄まって
 いずれは晴れて透明人間になれるんだ」

じいちゃんは夏になるとよくそんな冗談を言った。

僕はじいちゃんの思惑通り沢山水分補給をした。
水って意外とすぐに飽きるんだ。
それでその夏に、
水はたくさん飲めないものなんだと知った。

僕はじいちゃんがしてくれる話しが大好きだった。
特に透明人間の話しが好きだった。

僕はじいちゃんに
「透明ってどんな感じな

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物語『猫とネズミと僕』

物語『猫とネズミと僕』

とうとうあの野良猫は
頭がおかしくなってしまったらしい
ザーザーと雨が降っている

その野良猫とは
向かいの家の軒下に住み着いている
灰色の猫だ

これからご飯をくれるおばあさんの所へでも
行くのだろう
軒下からスルリと出てきて、北へと向かった
雨なのに珍しい

猫は雨の中、逆立ちをして歩いていった
初めは少しヨタついたものの、それからは何とも器用に進んでいった

僕は気になって、家から頭を出し頭

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短編『オリバさんの庭』

短編『オリバさんの庭』

ショッピングモールの角にある小さなレストランは祖母の友人であるオリバさんのお店で
3人しか並べないほどの小さなキッチンがある

他の店の外観はショッピングモールにふさわしいものばかりだったのにそのレストランだけは、そこに似合わず森の奥にひっそりとありそうなもので、何度行っても心が躍った

小さな頃からよく祖母に連れられて来ていて、
足を運ぶたびに壁にはった蔦や植木が成長した姿をみれる事も楽しみにし

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短編小説『珈琲と夏』

短編小説『珈琲と夏』

高2の夏
今年もセミが鳴き始めた。

いつもなら別の高校に通う親友と待ち合わせてバスで帰宅するが、高校が違うと毎日そうは行かなかった。
そんな時、親友は私に「先に帰って」とメッセージをくれた。

ホームルームを終え、同じ高校に通う友人達に別れを告げて教室を出ると、少し広間のようになっている廊下で部活支度をする野球部の背中が見える。

上裸になった野球部は腕と身体とでしっかりとオセロになっていた。

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短編「 金魚の少年 」

短編「 金魚の少年 」

「 金魚の少年 」
   窓の外は次々と変化するのに
   君はガラスに映ったあの子に夢中。

   僕は知っているけれど、
   あの子はそれを知らないし、
  君もあの子に見られてるなんて思ってもない。

   何だかむず痒い、
   僕も手を貸してあげられたらな。

side.1 (18歳)

18:33

太陽が沈んでも外気は一向に冷める気配をみせない。
車内で冷えた空気がゆる

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ショートショート「妹に親友ができたらしい」

ショートショート「妹に親友ができたらしい」

1.妹に親友ができたらしい

僕の妹に親友ができたらしい。とても可愛い子だそう。最近の彼女は日々を以前より楽しんでいるように見える。いい事だ。

言うまでもなく妹は大切な兄妹なので、彼女にも大切な人が出来た事が僕自身とても嬉しい。

引っ込み思案でなかなか自分から声をかけられない妹を見ていると僕はつい、手を貸したくなってしまう。貸してしまった回数は数え切れない…。手が焼けるほど可愛いと言うのは事実

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