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レビュー『読んで旅する海外文学:24か国の旅行記×77冊の読書ノート』
着眼点がすばらしいと思った本の紹介。
実際に旅をするのではなく、世界各地の本を読んで、「読書で世界一周」をするという本。
「訪れる前に読んでいたほうが、より深くその国を楽しめる」ていう観点でチョイスされており、興味深い。
また、紹介される本のジャンルも限定されておらず、小説、ノンフィクション、旅行記、エッセイ、レシピ本と、さまざまなものが含まれている。
さらには、イギリスやドイツといったようなメジャーな国も含まれているが、チェコやエジプトといったマイナーな地域の作品も含まれており、視野を広げてくれる。
著者のように、内気だけど海外旅行に行きたい人や、いまはお金と時間に余裕がないが旅した気分を味わいたい人にオススメ。
センスの良いルール設計
自分で遊びや企画をつくるときに必要になるのが「方針」や「ルール」といったもの。
これらの選び方にその人のセンスを垣間見ることができ、本書はその部分にセンスの良さを感じたのでまるっと紹介したい。
本書の大きな方針は、「各国につき、以下三点をテーマにしたものを必ず一冊は読む」というもの。
・その国の首都、もしくは大都市が舞台となっているもの。または、その国の代表的な作家の作品
・その国のローカル地方が舞台となっているもの
・その国の歴史や文化にかかわるもの
ふたつめの「ローカル地方が舞台となる作品」を取り入れることで、さらなるバリエーションに広がりと、深みを与えていると思う。
そして、その大きな方針に付随して、以下のもろもろのルールが存在する。
・日本人や、外国人による著作も可とする。
・その国のイメージが悪くなるようなものは除外。
・自分が納得する3点に出会うまで読書は続け、数合わせの決定は絶対にしない(ただし、翻訳点数がそもそも少ない国のものは、3点を無理に選ばなくてもよい)
・すぐに思い浮かぶ文豪の古典名作はできるだけ選ばない
・小説だけではなく、ノンフィクション、エッセイ、旅行記といったさまざまなジャンルのものを含める
「納得する3点に出会うまで読書は続け」というところに、著者の良心と誠実さ、そして覚悟を感じた。
また「日本人や、外国人による著作も可とする」というのも、客観的にその国のことを捉えるために必要だと思い納得。
読みたくなった本
以下が本書を読んで、個人的に読みたくなった本の一覧だ。
個人的にアジアへの関心が薄かったのだが、中国と韓国をはじめ、とっかかりとなりそうな本を見つけることができたのは大きな収穫だった。
・『あやうく一生懸命生きるところだった』(韓国)
・『中国55の少数民族を訪ねて』(中国)
・『辺境中国:新疆、チベット、雲南、東北部を行く』(中国)
・『プライベートバンカー カネ守りと新富裕層(シンガポール)』
・『ピラミッド・タウンを発掘する』(エジプト)
・『ローマ人の物語』(イタリア)
・『図説 チェコとスロヴァキア』(チェコ)
・『清少納言を求めて、フィンランドから京都へ』(フィンランド)
また、気になったのが河出書房新社の「ふくろうの本」シリーズ。
さまざまな国の歴史をあつかっているシリーズだ。
著者いわく、薄い本で読みやすいにもかかわらず、豊富な情報量で読みごたえがある本ということ。
これから海外旅行に行く際は、行く前にその国の「ふくろうの本」を読もうと思った。
おわりに
著者は大学生協職員というめずらしい職についており、『東大生の「本の使い方」』の著書。
本書は著者の読書旅行記であり、各国にまつわる本を紹介する本となっている。
一冊ごとにあらすじと著者の感想が書かれており読みやすかった。
いままでまったく興味のなかった国にも視野がひろがるので、読んでいて楽しい。
著者が実際に旅をした時のレポートも含まれており、興味ぶかく読めた。
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