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著…フランシス・ホジソン・バーネット 訳…畔柳和代『秘密の花園』

 懐かしさは、人に喜びをもたらすもの。

 しかし、時に「懐かしい」という感情は、耐えがたいほど辛いこともあります。

 この物語に登場するクレイブンさんは、奥さんのことを心から愛していました。

 奥さんの楽しみは、お庭で過ごすこと。

 クレイブンさんと奥さんは、一緒にお庭でお花の世話をしたり、本を読んだり、話をしたりして、幸せな日々を送っていました。

 ところが奥さんが急死。

 しかも事故が起きた場所は、二人が愛したお庭…。

 クレイヴンさんはお庭の扉を閉じてしまいました。

 扉の鍵も埋めてしまいました。

 二度とそのお庭が誰の目にも触れないように。

 お庭を見てしまったら、奥さんのことを思い出してしまうから…。

 なんと10年もの間、そのお庭は封印されていました。

 長く放っておかれたお庭の草や花や木がまだ生きているのか、それとも死んでいるのか、誰にも分かりませんでした。

 この物語の主人公・メアリが現れるまでは。

 この作品はわたしにとって子どもの頃から大好きな物語なので、もし未読の方がいたら是非読んで欲しいです。

 枯れたお庭は絶望のあらわれ。

 けれどそこに新たな生命が芽吹けば、心に希望が生まれます。

 思い出を振り返ることが辛くても、少しずつ受け入れるきっかけになります。

 自分にとって大切な場所がいつの間にか他の人たちにとっても大切な場所になる…、そんな素晴らしさも感じられる物語です。

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