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著…W.B.イェイツ 訳…芥川龍之介 絵…ホノジロトヲジ『春の心臓』

 まるで美しい悪夢のようだ、と思いながらわたしはこの本を読みました。

 闇の中で白銀に煌めくようなイラストが、このどこかオカルトめいた孤独な世界観を際立たせています。

 この物語に登場する老人と少年は師弟関係。

 少年は老人に残り少ない時を安らかに過ごしてもらえるようにと心を配ります。

 いつもより体調が優れぬ様子の老人を心配し、休んでくださいと声をかけます。

 ところが老人は休息を取ろうとせず、勤行に励むばかり。

 老人はある秘術に挑んでいるのです。

 それは、若返るための、そして不老不死になるための儀式。

 少年のどんな言葉も老人を止めることは出来ず、

 「己は、己の全生涯を通じて、生命の秘密を見出そうとしたのだ。己は己の若い日を幸福に暮さなかった。それは己が、老年の来ると云う事を知っていたからであった。この様にして己は青年と壮年と老年とを通じて、この大いなる秘密を求むる為に一身を捧げたのだ。己は数世紀に亘るべき悠久なる生命にあこがれて、八十春秋に終る人生を侮蔑したのだ。己は此国の古の神々の如くになろうと思った。ーーいや己は今もなろうと思っている」

(『春の心臓』から引用)

 と老人は言うのでした。

 この老人と少年が迎える結末については、是非読んで確かめて欲しいので、敢えてここに書かないことにします。

 この本を読む度、わたしは様々なことを考えさせられます。

 若さとは何か?

 老いとは何か?

 死とは何か?

 「生きている」ことと「死んでいない」ことはイコールになるのか?

 不老不死になることは、自分のそばにいてくれる人を大切にすることよりも素晴らしいものだったのか?

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