著…ニール・ゲイマン 訳…金原瑞人、中村浩美『コララインとボタンの魔女』
大人が読んでも怖い児童書。
子どもが読むとトラウマになりそう。
しかし、自分の身を守るための教訓となるダークファンタジーだと思います。
※注意
以下のレビューには、結末までは明かしませんがネタバレがあります!
この物語の主人公コララインの家には、奇妙なドアがあります。
昼間は単なる古いドア。
しかし、夜になると異世界に繋がる不気味なドアへと変貌します。
ドアの向こうには暗い廊下があります。
その廊下を歩いていった先には、「あなたを愛しているわ」と優しく甘い言葉で子どもを安心させて喰い殺す「ボタンの魔女」とその手下たちが棲んでいます。
「ボタンの魔女」はまるで誘拐犯のよう。
子どもに微笑みかけ、いかにも善意で親切をする振りをして、嘘をつき、子どもが逃げられないようにしつこくまとわりつく…。
この物語の主人公コララインは聡明な上、お守りを持っていました。
だから、この魔女が危険な存在だとすぐに見抜けたけれど、残念ながら少なくとも3人の子どもたちが既に魔女に殺され、魂まで奪われていました。
この3人の幽霊がコララインの逃亡のきっかけをくれるのですが、魔女は、
とコララインに笑いかけるのです。
わたしはこのセリフに鳥肌が立ちました。
いかにもそれが真実であるかのように、スラスラと嘘を吐く魔女。
もしコララインがこの嘘に騙されてしまったら、この物語は大きく変わっていたことでしょう…。
世の中には「信じるべき人」と「信じてはいけない人」がいます。
「信じるべき人」を選べたら、子どもは生き延びられる確率が高まります。
…でも、もし「信じてはいけない人」を信じてしまったら…。
後者を想像するとゾッとします…。
この物語の場合、コララインにとって「信じるべき人」は幽霊たちであり、「信じてはいけない人」はボタンの魔女。
この物語はとても恐ろしいのですが、信じる相手を間違ってはいけないという教訓になる物語なので、是非多くの方に読んで欲しいです。
現代の現実世界にも、甘い言葉で人を騙そうとする「魔女」は沢山居るのですから。
教訓はお守りになってくれるはず。