BtoB製造業が、BtoC自社商品を始めるときの壁と突破口の可能性
こんにちは、製造部の松田です。
毎日の暑さが本格化してきましたね。
最近は「観測史上初の」という言葉に驚かなくなりました。
ちなみに本日は静岡県で観測史上初の40℃を記録したそうです。
梅雨明けも間近。これから暑さが本格化してゆきます。
皆さまにおかれましても、十分にお気を付けください。
さて今回は、
BtoBが多い製造業が、BtoC事業に新規参入するとは?
というテーマで製造業の一端を覗いでみたいと思います。
「新規事業展開」ひとくちと言っても種類はさまざま
BtoBで製造業を営む会社のなかには、
いつか自社商品を展開したいと
考えておられる所も多いと思います。
ここでいう「自社商品」とは、
OEM製造から脱却し、自社商品を開発して既存市場・既存顧客に提供を始めるというパターン(例:大手工作機メーカーのTier1部品メーカーだったが、該当部品の規格を汎用化して工作機メーカー一般に販売を始めた)
自社技術を新しい市場・顧客のニーズに適用させた新製品にチャレンジするというパターン(例:大手工作機メーカーのTier1部品メーカーだったが、自社の設計技術を活用し電化製品の設計・製造に参入した)
後者の「新市場・新顧客に進出する」パターンはさらに、
BtoBの商流は変えず、新規市場へ営業を行うパターン
BtoCにガラッと主戦場を変えるパターン
という2つに大別されると思います。
昭和世代の経営学者ですがアンゾフという人が
事業展開を次の4つに分類する考え方を提唱しました。
かなり前に提唱された考え方ではありますが、
今なおビジネスで取り入れられる視点だそうです。
この図から読み取れることの一つとして、
新規事業がどれくらい「新規性」があるのかです。
図の左上、既存×既存=新市場浸透戦略が、
追加で必要となるリソースが少なくて済み、
参入するのが容易だと教科書的に言われています。
リソースが少ない中小企業にとっては、
市場浸透戦略(左上)
↓
新製品開発戦略(右上)
↓
新市場開拓戦略(左下)
↓
多角化戦略(右下)
という順番の検討が妥当と言えそうです。
「何か新規事業ができないか?」と思った時は、
既存のコア技術が既存の市場に行き届いているか
今の立ち位置で顧客を増やすことができないか
という市場浸透にまず着眼するのが教科書的な解答です。
いっとき流行った(今も?)「プロの技術を消費財に」という売り
前述のアンゾフの成長マトリクスをふまえると、
例えば自動車向け金属加工業をする中小企業が、
難削材が加工できたり寸法精度が極めて高かったりといった
自社のコア技術を応用して新規事業を行うとなったとき、
「アクセサリーを自社商品としてBtoCでEC販売する」
というのは図で一番遠いところにある多角化戦略にあたり、
投入すべき時間とコストがかかる打ち手だと想定されます。
でもやりたいものはやりたい!
どんな壁がありどう突破するか?
しかし人間たるもの思いついてしまったものはやりたいもので(笑)
また自分が思いついたアイデアほど
デメリットやリスクが見えなくなるというのも
人間である私たちの宿命というものでしょう…
また最近のことでいえばコロナ禍により
不可抗力で売上が大幅に減少したことをうけ、
危機感から何か新しい手を打たなければ!
と感じた経営者の想いは容易に想像がつきます。
では例え教科書的には大変とされる領域でも、
成功確率を少しでも高めるためにどんな工夫ができるのか。
そもそもどんな壁が存在し、
どうすれば乗り越えられそうなのでしょうか。
想定される壁とその突破口、一問一答
BtoBの金属加工をしている中小製造事業者が
アクセサリーのBtoC製造販売に進出するケースで、
想定される壁と突破口を考えてみたいと思います。
<想定される壁 一覧>
顧客イメージがわかない、ニーズが分からない
自社のコア技術はBtoCの顧客は別にそれほど求めていない(もちろん高品質・高精度である分には構わない)
自社のコア技術にこだわるあまり高単価になる
新商品の開発にあたり材料の購入が必要になる(梱包箱などの副資材も含めて)
これまでBtoBでやってきた現場従業員の理解を得る必要がある
Amazonや楽天市場に出品するなど販路を構築しないといけない
問い合わせ対応やPL保険など販売後の各種対応をしないといけない
<1.顧客イメージがわかない、ニーズが分からない>
自分自身が顧客となりうる、従業員が顧客となりうる、
そういった身近なニーズを満たす商品を模索してはどうでしょうか。
業種は違いますが熊本県で養殖漁業を行う会社では、
社長(子育て主婦)自身が顧客として喜ぶような
魚加工品を商品開発にBtoC展開を成功されています。
<2.自社のコア技術はBtoCの顧客は別にそれほど求めていない>
例えば金属部品を公差0.1mm以下まで加工できる技術。
それ自体が素晴らしい資産なのは間違いないですが、
一般消費者は0.1mm違っても気づかないというか、
0.1mm違ってもいいから安いことを求めることも多々あります。
<3.自社のコア技術にこだわるあまり高単価になる>
続きになりますが、これまで主戦場であるBtoBでは
0.1mmレベルで厳格に製造するのが当たり前のため
「お客様に出すものは0.1mmレベルで正しくあるべき」
という考え方が無意識になっていることもあると思います。
前述の1.顧客イメージと関連しますが、
もし顧客(自分/従業員)だったらどのレベルまで求めるか、
製品品質 vs. 価格だったらどちらをどこまで妥協できるか、
VA/VEの目線で考えるステップがとても重要になります。
また最近ではクラウドファンディングも一般的になりました。
クラウドファンディングは資金集めという意味合いが強いですが、
商品のコンセプトと価格を提示してみて、
一般顧客にどれほど求められる仕様で設計できているのか、
ニーズを問うリトマス試験紙としての活用もできます。
<4.新商品の開発にあたり材料の購入が必要になる>
商品開発では、商品の部材(直材)や梱包箱など、
新しく購入すべきものが山積みです。
金銭的な痛手を限りなく少なくするためには、
購入タイミングを限界まで延期するのが正攻法です。
究極は、1点もの受注生産だと思います。
可能な限り、安いからといって最初にまとめて購入など
もしかしたら売れない商品のために死蔵在庫を作らないよう、
せめて安定的に売れるようになってからまとめて購入する、
可能ならば購入ロット数を少なく、受注してからで。
<5.これまでBtoBでやってきた現場従業員の理解を得る必要がある>
前述の「0.1mm単位が体にしみついている」に関連しますが、
長くやってきたベテランほど新市場・新商品に戸惑うと思います。
「今日から新商品である○○を××という方法で製造してください」
と突拍子もなく指示をうけても混乱すること間違いなしでしょう。
何度も丁寧に説明することは当然ですが、
可能であれば作り手も開発プロセスに巻き込み、
徐々に認識を形成・すり合わせる方が良いと思われます。
ただし人間どうしのコミュニケーションであるため、
これについては100現場100通りの正解がある思います。
<6.Amazonや楽天市場に出品するなど販路を構築しないといけない>
今となっては一般に広く普及しているECサイトですが、
いざ出品するとなったら作業の多さに呆然とします。
商品出品には「ささげ」と呼ばれる作業があります。
さ=採寸(商品仕様)
さ=撮影(画像)
げ=原稿(説明文)
ささげが上手い場合と下手な場合では売れ行きにかなり差がでます。
特に、さ:撮影は購入率に、げ:原稿は検索ランキングに影響があり、
ささげを上手くやっている他社を真似できると良いでしょう。
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<7.問い合わせ対応やPL保険など販売後の各種対応をしないといけない>
ECサイトに掲載した商品に対するお客様からの質問対応や、
商品に欠損があった場合のお詫び・返品対応など、
BtoC販売をスタートしてからもやることは多いです。
ここらへんは正しく対処するために法務の知識が必要なことも多く、
無料で相談できる専門家(弁護士)のリソースを活用して
焦らずに返品ポリシーや保険加入などを進めるのもよいでしょう。
各県が設置する無料の相談機関「よろず支援拠点」では
弁護士の方の登録も多く上記の内容を無料で相談できます。
おわりに
ここまで記事をお読みいただきありがとうございました。
中小製造業にとって自社商品を掲げる方は多く、
しかし実現までに多くの壁が存在するため
現場がどう乗り越えていけば分からず、
日の目を見ずアイデア段階で終わることが多々あります。
今回は、一般論にとどまりますが、
実現までの「壁」とは具体的に何があって、
どのような対処がありうるか考えてみました。
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大サイズ平面材(パネル等)の異種どうし貼り合わせ加工、
および切断加工を得意としています。
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