ヘヴィ・メタルシーンを辿る旅 ver.5 / ヘヴィメタルはBorn to be Wild!? / 様式美の要素:メタリックな音 / メタル史:ジャーマンメタル / ジューダス・プリースト、ハロウィン & メタリカ
ヘヴィメタル。それは「Born to be Wild」
ヘヴィメタルシリーズ第5弾は、ヘヴィメタルという言葉に象徴されるメタル、すなわちメタリックな要素について語ってみます。
そもそもヘヴィメタルなる言葉が使われたのは、諸説ありますが、有名なものが、かのイージーライダーという映画の主題歌「Born to be Wild」にて。
ここに、こんな歌詞があるんですね。
ヘヴィメタルとは重金属の轟を発しながら疾走するバイクのことを指しています。
まさに、、Born to be Wild! ヘヴィメタルサンダー!!
この歌詞の雰囲気のようなメタリックな印象の音をギターの轟音で轟かせていくようになったグループが出現していったわけです。
そこには、60年代後半の技術的進歩も後押しをしていて、それは何かと言うと、アンプの飛躍的な進化ですね。
これによって、ジミ・ヘンドリクスや、ジャニス・ジョプリンもそのギターの轟音を、その魂の声を遥か彼方まで響かせ、そして、聴衆の魂にまでストレートに入り込む事を可能にしていたわけです。
結果、メタルバンドも、重金属の轟音を、響かせることが出来たわけです。
では今回のテーマの金属的な音を音楽として成立させたメタルバンドには、どんなものがあったのか?
メタリックな音
メタルという言葉のイメージをアイコン化したジューダス・プリーストというグループに最初期の痕跡がみてとれます。
70年代後半より、レザージャケット&パンツ、ビスのついたブレスレッドなど世界史上メジャーではおそらく初めてメタルファッションに身を包み、轟かせたのがこの曲
Judas Priest - Hell Bent for Leather
バイクの象徴だった、ヘヴィメタルサンダーがこの世に降臨したかのような。。
そして、まさに自身はメタルゴッドであることを高らかに宣言したこの曲もまた、メタリックな響きに彩られています。
Judas Priest - Metal God
そして、ドイツからは、俺たちは鋼の心を持っているんだ!という楽曲が登場
ACCEPT- Metal Heart
間奏のギターソロがエリーゼのためになのも、聞きどころ。
英国を瞬間的に覆い尽くしたムーブメント、New Wave of British Heavy Metalシーンからは
Saxon - Denim & Leather
メタルとロックの原点、デニムにレザーをタイトルにしたこのシンプルな曲もメタリックですね。
そして、このムーブメントの代表的バンドにもこんな響きが。
Iron Maiden - Killers
この英国のムーブメントが米国に飛び火し、アメリカでもメタルがブームになるのですが、
アメリカンメタルの雄、Riotにはこんな曲が。
Riot - Thundersteel
アメリカンメタルの中で、より鋭く、よりスピーディーに変化を遂げた群がいて、それらをスラッシュメタルと呼びます。
このジャンルの代表的バンドにもメタリックな轟音がありました。
Megadeth - Hanger18
メタリックな音→ヘヴィな音へ
稲妻のような重金属の響きを兼ね備えた音楽として、世界中に広まったヘヴィメタルのメタリックな響き。
その後、90年代には、鉄鋼業のメタリックなスピードよりも、重工業のようなヘヴィな重さが、持て囃されるようになります。
その行き着いた先がグランジという音でした。
次回第6回はヘヴィな音の変遷と、グランジへの流れを描きますが、ヘヴィメタルのヘヴィな部分を一身で司っていたのは、ブラック・サバスというバンドでした。
ものの流行は振り子のようなもので、一方に触れたら、ある時期を経てまたもう一方に大きく触れます。揺り戻しというか。
ファッションも、2020年は、70年代ヒッピーのようなアイダイ模様が再燃してきそうな気配があるようです。
音楽も同様で、70年代のブラックサバスの遺伝子を愛する若者が、その音の雰囲気をモチーフに90年代の怒りをぶつけ始めたのがグランジだったと思います。グランジ自体はブームゆえ、第一人者の自殺でしぼんでいきますが、今度はグランジ遺伝子がSlipknotなどの、カテゴライズ不可能なグループ群に受け継がれていくことになっていきます。。
このあたりは、また次回に。
ただ、ヘヴィメタルを愛する人間は、ヘヴィであれ、メタリックであれ、そこに様式美があるかどうかが大きな基準となります。
そういう意味で言うと、すでにそういった音は過去の音の中にしかないのが実情。。
オールディーズや、レベッカ のような音が今はリアルタイムで存在しないのと同じ感じですね。
というわけで、今回のメタルを象徴するメタリックな音の記事、最後の曲は、、
正統派メタルの遺伝子と様式美を受け継ぎ、現在はヘヴィ路線から独自の音を追求しているメタリカのこの曲です。
メタリック路線のメタリカの最高傑作といえるでしょうか。ギターソロといい、長尺の構成といい、リフのかっこよさといい。
Metallica - Master of Puppets
今は、音楽性もだいぶ変わってしまったメタリカのドラマー、ラーズ・ウルリッヒが80年代に残したという言葉でこの記事を終えます。
ヘヴィメタル・ハードロックの歴史vol.5〜ジャーマンメタル
ドイツで沸き起こったメタルの群をジャーマンメタルと言います。
ハロウィンのインパクトが強くて、ハロウィン以降をジャーマンメタルと呼ぶこともありますが、正確には、「ドイツ産メタルバンド」の総称です。
古くは70年代のマニアックなサイケな響きのバンドが活躍していました。
Lucifer's Firend - Ride the Sky
ここに70年代、マイケル・シェンカーが登場。英国に渡り飛行物体に乗りUFOとして大活躍
UFO - Rock Bottom
本国ではスコーピオンズが哀愁漂うマイナーな絶望的な音楽を奏でていました。
スコーピオンズが徐々に頭角を表し、アクセプトという本格的なメタリックバンドが登場。
そしてスコーピオンズが絶望感漂う楽曲から正統派メタルに切り替えて世界的に成功しドイツ産メタルに注目が移ります。
いわゆるメタルファンに馴染みの良いジャーマンチックなメタルはここからとも言えます。
Scorpions- Black Out
ACCEPT- Breaker
ジャーマンメロディックメタルの隆盛
そして、あの伝説のバンド、ハロウィンが登場するわけです。ここからが、ジャーマンメタルの中でも、ジャーマンメロディックメタルと呼ぶべき群が一世を風靡します。
ここからの群は、どれもこれもが、こぞって今回のテーマのようなメタリックな響きをもっていました。
Helloween- Invitation〜Eagle Fly Free
X JAPANもモチーフにした、イントロからの疾走チューン。原型がこの曲ですね。
Helloween- March of Time
Helloween - I Want Out
どうでしょうか。この雰囲気が広く日本で知られているジャーマンメタル(ジャーマンメロディックメタル)です。
この派生のバンドもかなり質が高く、、。
Gamma Ray - Rich and Famous
いやー、これかっこいいですよね。これぞメタル。これぞ様式美。これぞジャーマン。
そして、本国ではかなりの大御所らしいこのバンドも。雄々しい雄叫びと、情熱的な旋律、そして、暑苦しいとも言えるボーカルと音の厚みが特徴。
Blind Guardian - Mirror Mirror
デビューはハロウィン前ですが、こういったマイナーのバンドもいい味出してました。
Rage- Innocent Guilty
このジャンル、ハロウィン以降は、亜流が増えすぎた印象があって、あまり拡散性のない音なので、似たり寄ったりになってしまっていったのが弱点でした。
単体で聞くと良い音なんですが、俯瞰してみると似た感じになってしまっているという。。これは次回書く予定のスラッシュメタルも同様ですね。
拡散性が無い音の場合、どうしても生き残っていくには独自性が必要になってきます。
その過程で、ワンパターンに陥ったり、迷走したり、、というのが繰り返されました。
本家ハロウィンもポップになったり、ネオクラシカルっぽくなったり、、
この系譜にある意味、革新性をもたらしそうだったのが、フェアウォーニングというバンドでした。ただ、人気を博したのが日本だけだったのが残念でしたが。
Fair Warning - Burning Heart
では、ワンパターンなイメージのジャーマンメタルの雰囲気から脱却したこの曲で、ジャーマンメタルの項を終えたいと思います。
ZENO- Love will Live
第5回の最後は、Enter Sandman
魔法の5文字が入ったメタリカが、その音楽性をヘヴィな方向に向けたことが、彼らも愛した、そして原点でもある古き良き、ヘヴィメタル・ハードロックを崩壊させていったというのは運命の皮肉を感じます。
この分水嶺だったのが、メタリカの「(通称)ブラックアルバム」。1曲めがEnter Sandman。このアルバム自体は、様式美のかけらもありません。ただただ、ヘヴィなアルバムです。
ただ、90年代初頭は彼らにもまだメタル魂が残っており、ヘヴィな彼らへの分岐点となったブラックアルバムの冒頭を飾っていたEnter Sandmanもこの時期はとても、メタリックに、聞こえます。
様式美のかけらもないこの楽曲が、90年代初頭という時期の音には英国由来の様式美があるようにも聞こえるから不思議なものです。ライブだからでしょうかね。
音の響きには、演奏者の魂の奥底にある想いが色濃く反映されるのでしょうか。そうなのかもしれません。
Metallica - Enter Sandman
次回、ヘヴィメタルを辿る旅の終着地は、この音楽を構成するヘヴィさについて。
そして、このヘヴィさが、このジャンルを追い込んでいく過程にも触れてみたいと思います。
次回もよろしくお願いいたします。
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