番外編:ハード・ロックシーンを辿る旅 ver.1 / 70年代ロックの潮流・ブルーズ由来のバンドたち / Heart, Free & Bad Company
70年代ロックーブルーズの影響編
70年代のロックシーンをハードロック・ヘヴィメタルから見てみます。
大きな流れは、3つあって、
この流れで、70年代を彩ったロックシーンを辿ってみます。
レッド・ツェッペリンに起因するブルーズ志向
そもそも、ロックンロールが誕生した経緯は↓にまとめていますが、白人主体の音楽と黒人主体の音楽が融合したからです。
白人主体とは、由来は英国人ですから、英国の音楽。それも、日常的に英国の各地で歌い継がれてきた土着の音楽(日本でいうところの、民謡、童謡のようなもの)
黒人主体とは、アフリカの魂と嘆きのこもったブルーズであり、神への祈りを純化したゴスペルであったわけです。
70年代以降、音楽も細分化していきますが、ものすごくざっくりいうと、このどちらをルーツに持ったかという区別になります。
白人主体の流れに、西洋音楽(クラシック)があり、この流れが70年代のプログレッシブロックや様式美になっていきます。
そして、ブラックミュージックと後年呼ばれる音楽の大元であるブルーズの影響を受けたバンドたちが、各国の個性をそれにまぶしていくわけです。英国ならば、英国流に。つまり米国はかなり泥臭いんですが、英国流になるとややエモーショナルになって哀愁が入り込んでくるわけです。
では今回は、このブルーズの影響を受けた音楽の系譜にはどのようなグループがあったのかを見てみます。
大きく分けると、米国(含:カナダ)の状況と、英国の状況となります。
米国(含:カナダ)の状況
1、HEART
まずはこちらをご覧ください
オバマ大統領時代の、ケネディ・センター名誉賞(The Kennedy Center Honors)での演奏です。受賞したレッド・ツェッペリンを称えるライブ演奏です。
HEART「Stairway to Heaven」
HEARTはカナダのバンクーバーで1974年に結成されたバンドで、彼女たちのあこがれはレッド・ツェッペリン。
初期のレッド・ツェッペリンにアコースティック主体の曲が多いように、、、
HEARTの初期の音もアコースティック主体で、そこに70年代歌謡風味をまぶした、なんともいえない、聞き手を夢想の境地に漂うようなメロディラインを持っていました。浮遊感があるというか。
初期の音はこういったものです↓
Dog & Butterfly
Dreamboat Annie
Brracuda
ちなみに、初期の傑作Crazy on Youは、アルバムでは単独収録されていますが、ライブでは別のアルバムに入っているインスト曲Silver Wheelsと連続して演奏されていて、このバージョンの方が完成度が一層高くなるような気がします。
Silver Wheels / Crazy on You
ちなみに海賊版以外でこの流れが聞けるのは↓のみだと思います(僕が聞いてきた限りでは)
Sweet Darlin
この初期の雰囲気は、まさにアコースティックな、アメリカンブルーズの流れを汲んでいますね。ここから次第にエレクトリック要素が増えていくことになります。
Tell It Like It Is
How Can I Refuse You
しかしこのタイミングに合わせて、ニューウェーブ、パンクの波がやってきて、80年代も米国ではメタル系(LAメタル)やニューウェーブの影響を受けたグループたちが流行っていたので、アコースティック主体でメロディアスな旋律をまぶした彼女たちの音は、メインストリームからは遠い位置にありました。
アン・ウィルソンのこの時の言葉がライナーノーツにのっています。それは
そんな彼女たちがいかにして、ケネディ・センター名誉賞(The Kennedy Center Honors)で敬愛するレッド・ツェッペリンを称えるライブのハイライトを担うまでに成功したのか。
それはこのアルバムによります。
ここから、大胆に外部ソングライターを起用、プロデューサーもポップな音作りに定評のあったロン・ネヴィソンを起用。80年代という時流にあったポップ、かつ、適度にハード、かつ、バラードもあってメロディアスという音を手に入れることになり、このアルバムは全米チャートナンバーワンに輝きました。
These Dreams
Never
Nobody Home
そして90年に発表した全米3位のこのアルバムで、音楽の歴史があり続ける限り、伝説として残っていくバンドの領域に達したのだと思います。
エモーショナルな楽曲が満載です。
All I Wanna Do Is Make Love To You
Secret
Fallen From Grace
ここまで聞いてきてわかるように、このバンドの最大の特徴は、アン・ウィルソンのあまりにも深くディープで、温かみのある、ボーカルですね。若いときは叫び立て、80年代からは深くしっとりとした歌い方を身に着けた彼女はボーカリストとして超一流だったんですね。
そして、ブロンドヘアのナンシーのギターですね。決してテクニカルではないですが、真骨頂はアコースティックの響きにあるような気がしています。
そんなHEARTというバンドは、レッド・ツェッペリンの系譜のブルーズの影響からアコースティック主体で活動を開始して、彼女たちの力で音楽性を変化させて伝説的存在になっていったグループと言えます。
Alone
Will You Be There(in the Morning)
英国の状況
2、Free
英国の伝説、フリーというバンドはまずこの曲から
All right now
この英国ブルーズ史に残る名曲を奏でたのは、絶世のボーカリスト、ポール・ロジャースの在籍していた、Free(フリー)というバンド。
このバンドの遺伝子が90年代、MR.BIGとして花を開くわけですが。
まず楽曲を聞いてみましょう
その名も「Mr.Big」
90年代にヒットをとばしたバンドの名は、ここからとったんですね。
MR.BIGバージョン↓
MR.BIGというバンドも、ブルーズ由来、ブルーズの遺伝子を受け継いでいるということがここからよくわかりますよね。
彼等の悲劇は、ヒットしたのはブルーズからはかなり遠い位置にあったポップ的な楽曲だったことですね。このあたりは90年代ハードロックの記事にて詳述します。
The Stealer
Wishing Well
アコースティック主体のハートとちがって、かなり泥臭いですよね。慣れないうちは、とっつきにくい音に聞こえるかもしれません。
これはレッド・ツェッペリンとも似ていて。でも慣れてくるとスルメのように味わいが感じられてきて、クセになるのですが。
このバンド、ポール・ロジャースのボーカルが素晴らしく、陰に隠れがちなのですが、ギタリスト、ポール・コゾフの奏でる旋律はあまりにも英国式の哀愁にあふれていて、たまらない気持ちにさせてくれます。
Come Together in the Morning
このギターの泣きは、たまらないですよね。むせび泣き、すすり泣き。。
Be My Friend
典型的なブルーズバンドでありながら、英国式な泣きのギター、哀愁の旋律をまぶすことに成功したバンドといえます。
3、Bad Company
もしかすると、ジョジョ第4部に登場したスタンド名の方が認知されているかもしれないこのバンド名。
これは、FREEを解散し、ポール・ロジャースが次に結成したバンドなのです。
こちらはどちらかというと、ブルーズよりも、80年代の時流に合わせたような、ロックを演奏していました。ハードまでいかないが、それに近いロックというか。
Can't Get Enough
Oh,Atlanta
こんな感じで、英国式哀愁も多少あるけれど、アメリカンなムード、カントリーチックなムードが満載のバンドでした。
ブルーズ×カントリーのカントリー寄りな音というか。でもボーカルがブルーズマンのポール・ロジャースなので、ブルーズ的なゴスペル的な要素もあるんですが。↓
She Brings Me Love
そういう意味ではいろいろな音を愉しめるバンドとも言えます。
なお、Oh! Atlantaという曲は、カントリーアーチストにもカバーされています。
ロバート・プラントとデュエットアルバムをだしたアリソン・クラウスです。
アリソン・クラウス「Oh Atlanta」
レッド・ツェッペリンのボーカリスト、ロバート・プラントとのデュエットはあまりにも素晴らしかったですね。
巡り巡って、ここにレッド・ツェッペリンが出てくるあたり、音楽的なルーツが垣間見れて面白いですよね。ブルーズというのは、かくもロックアーチストに根付いているのかと!
というわけで、今回は、ブルーズを主体としたハード・ロックアーチストの代表的なバンドをご紹介いたしました。
では、今回の記事のラストは、HEARTの情熱が感じられる感動の一曲。
You Are the Voice
次回もご期待くださいませ!
次回は、様式美を受け継いだ70年代ロックアーチスト、プログレッシブな志向性の70年代~90年代のアーチスト、そして、70年代のアイリッシュハードロックの伝説です。
ハードロック編第3弾(80年代USハードロック:ヴァンヘイレン、ボンジョヴィ、ナイトレンジャーなど)は、70年代をさらいつつ、並行して書こうと思います。
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