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レベッカ ~ 80年代末に失われた伝説(3) 〜 80・90年代日本音楽史「拾遺」Vol.4

90年代の始まりは、日本ロックシーンの大きな喪失からのスタートでもありました。80年代の偉大なる伝説が3つ終焉を迎えました。今回は3つ目の伝説についてご紹介します。

女性フロントマンの先駆けとなったバンド、レベッカ

このグループの特徴は、なんといってもNOKKOの存在でしょう。これほど個性的で魅力的なバンドのフロントマンは、日本のロックシーンでは稀有とも言えますね。(ロックバンドのフロントマンでいうと、、、矢沢永吉、忌野清志郎、氷室京介、甲本ヒロト、、イエローモンキーの吉井和哉、、とかでしょうか)


NOKKOという稀有な存在


これについては、いくつかの側面で語ることができます。

・歌詞
彼女の歌詞は、幼少期からの日常生活の匂いがそこかしこから漂ってきますね。

「ムーン」では、「娘は13になって盗みの味覚えて、黒いリストに名前を残した」とか、「フレンズ」では「口づけを交わした日は、ママの顔さえも見れなかった」とか、同世代の感覚がそのまま綴られていて、共感を得ていたのではないでしょうか。


・ダンス
力いっぱい、力の限り、ステージを走り回り、エネルギーを爆発させていました。2017年の再結成ツアーでも、年齢を感じさせない動きを見せておりました。このエネルギッシュさが多くの人を魅了したのではないかと思います。



・歌声
とりあえず歌声が素晴らしいですね。「Maybe Tomorrow」や「フレンズ」での伸びやかな声もそうですし、聴いていて気持ちが良いです

編曲

このNOKKOの特徴をうまく活かしていたのが編曲です。キーボードの土橋さんがメインのソングライターと思いますが、80年代USの影響を色濃く受けた、キーボード主体できらびやかな音に仕立てていました。マドンナや、シンディ・ローパーあたりを彷彿とさせますね。

「Motor Drive」「76th Star」「Private Heroine」「Super Girl」「Hot Spice」「Love Passion」「Love is Cash」
などなど


ラストアルバム「Brond Saurus」

そんなレベッカも、人気を博していったその先には、、、

ツアー→アルバム→ツアーの連続。

ボン・ジョヴィがそうだったように、この流れは肉体的な疲労を蓄積させ、連動して精神的な疲労にもつながっていきます。

この当時の時代背景も、90年代に向けて変わりつつありました。

それは、世界的に徐々にシンプルでソリッドなものに移行していきつつあり、その影響もあったのかもしれません。シンプルでソリッドな音はレベッカの音ではありませんので、その後90年代になるところでの活動休止もやむを得なかったのかもしれません。

そんなレベッカ最後のアルバムが1989年に発表された『Brond Saurus』


2015年の再結成ツアーの追加公演で演奏された「Super Girl」は、歌詞も、きらびやかな曲調もまさにレベッカの王道。


「ラッシュの電車でふと気づくの 片手にはバッグと電話料金のお知らせ握りしめ」「月曜の貧血に奇跡は起きないわ」という歌詞もまた、日常に溶け込んでいて、さすがだなあと思うわけです。

この楽曲では自立した女性が悪戦苦闘している日常風景を描いて、それでも自分はSuper Girlだと言っているわけで、これもまた女性の社会進出という世相を反映しています。

伴い、父権は喪失していき、、、という90年代に向けての流れに乗っていたともいえます。

一転「Vanity Angel」という曲ではタイトルの通り、(Vanity =虚栄心)、虚栄心を抱えた女性心理が描かれています。そして自分を肉食の恐竜に例えています。


女性の社会進出にともない、権利の改善は飛躍的に向上した。

しかし、その陰では、過去に多くの男性が悩んでいたような、出世や年収、成果報酬などからくる社会的な悩みの渦の中に巻き込まれていくことにもなったのですね。

90年代に向けて

そういう時代に、レベッカは、、、というよりもおそらくNOKKOの疲労や自分自身の夢の実現のために、1989年のラストアルバム1990年のラストツアーを経て、1991年に解散を迎えます。

それまで女性フロントマンといえば、、シーナ&ザ・ロケッツとか、サディスティックミカバンドくらいでしたが、レベッカ以降、(並行しつつも)プリンセスプリンセス、パーソンズ、リンドバーグなど、女性をフロントにしたバンドが多くでることになりました。

これもまた、レベッカ、NOKKOの功績といえると思います。

レベッカは、2015年に再結成、2017年にツアーを実施。そして再度活動休止となりました。(スポットでメンバーが集まったライブもあるようです。)

2017年の武道館ファイナルに参戦しましたが、当時リアルタイム見ることができなかったレベッカの音を、80年代の音を目の当たりにできたことは僥倖でした。

隣にいた方と少し話したんですが、まさに全盛期そのままの姿がステージに披露されていました。

というわけで80年代に去っていった伝説その3でした。

レベッカの音楽については、もう1つ記事を書いていましたので、それを今度は再掲します。

それでは、この伝説の紹介の最後はこの曲で。

「ラズベリー・ドリーム」


🔷初期のレベッカについてはこちら


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