ダイヤルを回していたあの頃の僕ら 〜 「I Just Called to Say I Love You」 スティーヴィー・ワンダー
「ダイヤルを回す」
「ダイヤルを回す」という言葉は、「チャンネルを回す」と同様に、もはや前世紀の遺物のような言葉かもしれません。
「ダイヤルを回す」とは、ダイヤル式電話を使う時にする動作です。
かつて、この電話が友人や好きな人とのコミュニケーションに絶大な力を発揮していました。
しかし、ほぼ全ての家庭では、一家に一台しかなかった。しかも大抵の場合、置かれているのは、お茶の間でした。
電話はこういうシチュエーションで使われていました。親のいないときがチャンス。そんなタイミングで。
インターネットも、LINEも、スマホも、携帯電話もない時代、距離を埋める最も有効な手段は固定電話でした。今の時代からその時代に戻るなんてことは考えられません。
しかし、あの、今からみたらかなり不便に見える手段しかなかった時代の方が、より深いコミュニケーションが取れていたような気がします。
音と音、言葉だけではなくて、心と心で繋がりあえていたような。わかりあえていたような、そんな気がします。
それはきっと、相手のことを、相手の気持ちを十分に推し量ることができていたから。
お茶の間だけにあった電話をかけることは、恥ずかしくもあり、時間も限られていました。その時間の中で、相手のことを思い、言葉を選び、言葉に注意を払い、そして言葉を受け取っていたように思うのです。
手段が限られていた時代、僕たちはきっと、今よりももっと、相手の心に寄り添えていたのではないでしょうか。
あの頃、自分宛の電話がかかってくると、なにか特別なことのように嬉しかった記憶があります。友達からの他愛もない話題だったとしても。
そんな、お茶の間の固定電話が、距離を埋めるコミュニケーションの最も有効な手段だった時代の、素敵な情景を語りかけてくれる名曲です。
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