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大乗仏教 如来蔵思想・唯識思想

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#世親

【大乗仏教】瑜伽行唯識派

【大乗仏教】瑜伽行唯識派

唯識思想の体系化に重要な役割を果たしたのは、4~5世紀頃に活動した無著(アサンガ)とその弟である世親(ヴァスバンドゥ)ですが、この兄弟が現れる以前に唯識思想を展開させた「解深密教」および弥勒菩薩(マイトレーヤ)の著作として伝えられる数編の論書が存在していたと言われいます。「解深密教」は如来蔵思想を説いた「如来蔵経」「勝鬘経」等と共に中期大乗経典の一つとして紀元後200-400年頃に現れたと想定され

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【大乗仏教】心相続

【大乗仏教】心相続

〇説一切有部の心相続
唯識派の思想に入る前に、説一切有部と経量部の「心相続」について触れておきたいと思います。さて、説一切有部の心相続(心法の相続)の大まかなイメージは下の図のようになります。

心(心法)もまた、刹那滅(生じてはすぐに消滅)です。ただし、有部における法体(ダルマ)の刹那滅は、あくまで「作用」の刹那滅であり、「本体(基体)」は常住です。経量部は有部のように法体を本体と作用に分けるこ

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【大乗仏教】唯識派 識の変化

【大乗仏教】唯識派 識の変化

唯識派の思想において、人間的実体(主観的存在)と想定されるものは、生じた瞬間に滅する「識」が次々に継起して形成する識の流れです。そして客観的存在と考えられるものも、「識」の内部にある「表象」に過ぎません。識が瞬間ごとに表象を持つものとして発生することが「識の変化」です。実際にあるのは「識の変化」であって、それを人は主観的存在(自己)あるいは客観的存在と想定しているに過ぎないということですね。「識の

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【大乗仏教】唯識派 認識の対象とは?

【大乗仏教】唯識派 認識の対象とは?

唯識派は、外界の実在を否定する際に、説一切有部・経量部などの原子論を否定しています。

○原子論
仏教で最初に原子論を導入したのは説一切有部と言われています。ヴァイシェーシカ学派からの影響もあったと思われます。しかし、有部の原子論はヴァイシェーシカ学派の原子論とは大きく異なるものでした。ヴァイシェーシカ学派、説一切有部、そして有部から分派した経量部の原子論を見ていきたいと思います。

○三種類の原

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【大乗仏教】唯識派 唯識二派

【大乗仏教】唯識派 唯識二派

六世紀の初頭にナーランダー出身の徳慧(グナマティ)は西インドのカーティアワール半島にあるヴァラビーに移り、彼の弟子である安慧(スティラマティ)に至って、この地の仏教学は最盛期を迎えたと言われます。同じ頃、ナーランダーにおいては護法(ダルマパーラ)が活動していましたが、安慧(スティラマティ)と護法(ダルマパーラ)の間には唯識説の解釈に相違がありました。

前者は阿頼耶識が最終的には否定されることで、

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【大乗仏教】唯識派 三性説⑥

【大乗仏教】唯識派 三性説⑥

三性説の最後に、世親(ヴァスバンドゥ)の三性説を見ていきたいと思います。世親は『唯識二十論』等において、表象主義的な唯識論を展開していたため、おそらく無著(アサンガ)と同じく有形象唯識論側な唯識観を持っていたと思われます。

依他起にとって、遍計所執がなくなった状態が円成実であると世親(ヴァスバンドゥ)は考えているため、この点は無著(アサンガ)の三性の解釈と同じであることが分かります。

・遍計所

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