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ショートショート

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ショートショート(200〜4,000字)をまとめてます。 恋愛ものからシリアスなものまで。 チラ見感覚でどうぞいらっしゃいませ☺︎
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#恋愛

ショートショート:愛してるゲーム

ショートショート:愛してるゲーム

「愛してるゲームしない?」

学校の休み時間、隣の席の男子がゲームに誘ってきた。

ああ、互いに愛してるって言い合って、先ににやけた方が負けってやつか。

そう言えばそんなゲームがあったなと思いながら、暇だった私はいいよと二つ返事で返した。

「じゃあ俺が先攻ね」

「愛してる」

私は眉ひとつ動かさない。

「次は私ね」

「愛してる」

すると彼の口角は徐々に上がり、最後にはにやけた。

強い

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ショートショート:僕と彼女と軽トラック

ショートショート:僕と彼女と軽トラック

大学1年の秋。
遂に手に入れた運転免許証。
遂にと言うのは別に何度も試験に落ちたからと言うわけではない。
僕の住む地域は、福岡の中でも群を抜いた田舎なのだ。
一軒家なのは嬉しい。
ただ、スーパーはおろかコンビニさえない。
あるのは海、山、田んぼ、そのくらいだ。
最寄駅だって、歩いて行こうものなら徒歩で2時間はかかる。
自転車でも30分だ。
そんなパスポートが必要なのかと思うほどの秘境に住む僕にとっ

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ショートショート:残り香

ショートショート:残り香

冬。
30歳になった私は、休日に夫と衣替えをしていた。
着れるものは取っておく、着れないものは燃えるゴミ袋に放り込む。
そんな作業を繰り返してそろそろ2時間が経っただろうか。
「ふぅ、それにしてもすごい数の服だな」
「ごめんね、ほとんど私の服なのに手伝ってもらちゃって」
「いいんだよ。どうせ休みなんだし。はい、これ最後の段ボールね」
うんと言って受け取った段ボールには、どこか懐かしさを感じた。

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ショートショート:予兆

ショートショート:予兆

僕の彼女はとても可愛い。

顔が小さくて目はくりくりしていて、スタイルもいい。

まるでお人形さんの様だ。

そんな彼女と付き合って早くも5年が経った。

相変わらず僕は彼女の事が大好きだ。

ハグもすればキスだってする。

でも、彼女はハグしても動かないし、キスしても何も感じない。

まるで人形の様だ。

あぁ、この感じ、懐かしいな。

元カノと別れる直前と一緒だ。

ショートショート:思い出

ショートショート:思い出

「別れよう」
彼女から放たれたその一言で、3年間にわたる僕らの関係に終止符が打たれた。
大学に入学してすぐ出来た彼女。
大好きだった。
止めたかった。
でも出来なかった。
電話越しにごめんなさいと泣く彼女の声を聞いて、彼女を幸せにできる男は僕ではない事を悟った。

電話を終えた後、僕も泣いた。
ひたすらに。
それから酒を飲んだ。
浴びるように。
そして眠った。
泥のように。

翌朝、スマホの画面を

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ショートショート:秋の夕日に照らされて

ショートショート:秋の夕日に照らされて

僕は今、とても悪い事をしている。
学級委員を務める僕が、こんな事をしてもいいのだろうか。
いや、良いはずがない。
本来なら降りろと言うべきだし、そもそも乗せる前から強く拒否するべきだった。

「ねぇ、もっとスピード出せないの?」
後ろで横向きに座ったまま優が言った。
「馬鹿言え!2人乗りは慣れてないんだよ。て言うか明日先生に何言われるか分かんないぞ」
「あはは!正門出る時にコラー!何やっとるかー!

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ショートショート:やわらかい釘

ショートショート:やわらかい釘

「ただいまー!」
マンションのドアを開けた僕は無駄に元気よくそう叫んだが、その声は1K7畳の狭い部屋に虚しく吸収されただけだった。
北山慎二、27歳。仕事有りの彼女無し。
真っ暗な部屋からは、当然誰の返事も返ってこない。
田舎から上京して早5年。
恋人どころか友人の1人さえいない。
だが寂しいとは思わない。
元々人付き合いが得意でない僕は、むしろ1人でいる時間の方が好きだった。
しかし、取引先で初

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ショートショート:最初で最後のお願い

ショートショート:最初で最後のお願い

とある日曜日。
僕は今、駅前の柱に寄りかかって人を待っている。
今日は同じ陸上部で1つ年上の先輩とデートをする約束をしているのだ。
既に約束の8時を20分過ぎているが、一向に連絡はつかない。
暇を持て余した僕は、しばらく人間観察でもしながら待つことにした。
スーツ姿のサラリーマンに、部活姿の中高生、酎ハイを片手にベンチでくつろぐ中年の男。
周りを見渡すと色んな種類の人間がいる。
と言っても世間はも

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ショートショート:完璧な彼女

ショートショート:完璧な彼女

「今日の天気は、曇りのち雨でしょう。」
きた。
遂に来た。
待ちに待ったこの日がやっと。
今日は傘を持参しない。
目的は勿論、彼女との、あれだ。

彼女と付き合うことになったきっかけは、放課後の居残り勉強だった。
2学期の中間テスト。
生徒の学力向上と称し、クラス対抗で平均点を競う企画が催された。
1位にはご褒美を用意しますと言うもんだから、皆やる気になっていた。
一方で僕は青ざめていた。
なんと

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