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詩たち

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2024年7月の記事一覧

詩「カイルとトレーシーのちょっとした外出」

詩「カイルとトレーシーのちょっとした外出」

20240731

「どうしたんだ?
 殺人を犯した人間のような顔をして」
煙草を咥えながら犬のカイルは言った
兎のトレーシーは呆れながら答えた

「そんな酷い顔してる?
 二日酔いのあんたよりはマシ」
バーには客がチラホラ
トレーシーの隣にカイルは座った

「全く 困っちまうよな
 いつからこんなに弱くなったのか」
年寄りのように目を閉じてため息ながら微笑み
煙草の煙の形を整えながらカイルは虚空

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詩「うろうろ」

詩「うろうろ」

20240729

ペイズリーな気分で 揺れる街を眺める
人は踊り狂って そこらに倒れ寝ている
何があったか聞いても 烏たちは答えない
祭が終わった後には 遺されたゴミの山

浮ついた声を出して 酔っ払いが乱れて
吐瀉物まみれになれば この街に似ている
何があったか聞いても 答えは見つからない
祭が始まる前から 終わっていたみたいだ

飛び交う羽根 模様の浮き出た肌
撫でる熱い両手 ハンカチは要ら

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詩📓「ベロベロバーン」

詩📓「ベロベロバーン」

20240726

怒られた 殴った ドジった 死んだ 買い被った 自分の力 ゴリラ相手じゃ 敵いっこ無かった あった 見つけた 魂だった いや 塊だった もの云わぬ土塊が 目に当たった 痛かった 死んだ時より何倍も痛かった 舌 噛んだ 千切れた 千切れまくった そしたら プラナリア みたいに動き始めた 舌たちは 探した 行く道と歩くために履く予定のスニーカー 怒った もう怒った ゴリラ 許さない

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詩📓「アナタ」

詩📓「アナタ」

20240726

あなた 一人じゃ 出来上がらなかった あなた 定かでは無かった 当然のように 思ったらダメだ あなたが 二人じゃ 出来上がらなかった あなた 定かなのはわかった 当然のように あなた が あなた である場合 あなたじゃないあなたは 誰であるか 質問はこちらまで 彼方 答えは 数多 嘘吐きも 本当吐きも 同じ月を 川で掬う コップに入れて飲む 美味いと唸る まったりとがっかりする

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詩「5%」

詩「5%」

20240725

バッテリーが切れそうだ
そうか 君は死ぬのかもしれない
暗闇だけを映すことになり
死体の山に積み重なることを待っている

充電器を買う金がないのに
本体を買う金は有り余っているから
もうそろそろ引っ越した方が良い
一層のこと二 三 部屋を借りようか?

おいおい 何もしなくても死に近づく
時間を気にする余裕もあまりない
バッテリーが切れたら後のことは任せてくれ
悪いことは起きな

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詩「中の中」

詩「中の中」

20240725

全てのものはマグマの中
溶けては姿を作ろうとする
全ては氷の海の中
溶けては動き出そうとする

太陽の形は次第に変化する
その中で誰が一番になる
太陽が氷の肌を撫で回す
その中で誰が特別になる

巨大なシステム 歯車の中
奥歯の隙間 銀歯の中
巨大な遺跡 棺桶の中
響いた鼓膜 外耳の中

暴れる子供 ポケットの中
不確かな景色 思い出の中
危ない橋 裏の虫の中
ギターの音色 不

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詩📓「メグマレタヒト」

詩📓「メグマレタヒト」

20240724

オチ前で終わる 漫才のような むず痒い思いが 身体を巡って 出ていかない こういう時 みんなどうしているのだろうか 将来の不安なんて 見て見ぬフリをしている余裕もない 今やらなきゃいけないことの処理で 頭はこんがらがって 目が回る  気分は地べたに落ちたまま 豪雨が終わった後に 書類を持って出かける お気に入りの時計を何となく手に持つ 時間など気になっていないのに 俺が抱えてい

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詩📓「シゴトゴトゴト」

詩📓「シゴトゴトゴト」

20240723

仕事 仕事 仕事 多分 これからも 人生の大半は これに費やす 出来ることなら そんなことをせずに お金があれば良いなとか思うけど 2年間の在宅勤務で その考え方も少し変わった 19歳くらいから一人暮らしを始めて 最初は料亭に勤めていたので その親会社の寮に入ることにした いつもぐうたらで 仕事なんてしたくなかったけれど 一人暮らしをするためにやるしかなくて それから流れ流れて

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詩📓「アンチアザトイ」

詩📓「アンチアザトイ」

20240722

可愛いものは 俺が 感じ取ったものでなければ 可愛いと思わないから あざといということが 俺にとって マイナスでしかない 笑顔も ダンスも こちらに向けて 行われていると冷める 可愛いでしょ? という感じが とても苦手だ TikTokで 誰にでも出来そうな 中途半端なダンスとか見ると 虫唾が走る そういう理由で あざとい人が嫌いだけど あざといキャラで 頑張ってる人が 素になる

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詩📓「シンプル」

詩📓「シンプル」

20240722

デマか どうか わからなくなったら 安心して 自分の好きな方を 選びたい 信じたければ 信じれば良いし デマであれと思うなら デマで良い この世に 溢れる 怪しい 真実たち それの精査で 大抵の人は 時間を費やす YouTubeの コメント欄で 真実だと叫ぶ人も デマだと叫ぶ人も 大体 信じたい方を 信じている 本当か 嘘か どっちでも構わないなら 好きな方を 選んで良いと思え

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詩「知覚過敏」

詩「知覚過敏」

20240722

どうしようもない孤独を
構って欲しい気持ちを
包み隠すことなく
曝け出していたいだけだ

何もない痛みを
話してもわからない奴らを
見捨てることもなく
暴いてやりたいだけだ

雑踏に消えた言葉を
無視され続けている事件を
見つけて懐にしまう
大事に大事に育ててゆく

死にたくなる気持ちも
生きていたい気持ちも
同じ柄のシャツを着ている
部屋に並べて眺めている

どうしようもない

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詩📓「ジョーホーツー」

詩📓「ジョーホーツー」

20240720

卵を 産み落とした 俺の 頭の中に 住む 小さな 鳥たちの 群れが 額の 汗と なって 流れ 落ちる 時に レインボー マウンテンの 空き缶の 底で 育った 大木が 花を 食べ尽くし 日の光を 遮断しようと 躍起に なっている プルトップを トンカチで 殴りつけた 明日の午後に 敬礼をする 軍人の コスプレをした リスと 友達になった 晩に カウボーイ 気取りの ムササビが カ

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詩📓「グラウンドコントロール」

詩📓「グラウンドコントロール」

20240721

好きだった 音楽が 嫌いになることは 少ない 嫌いだった 音楽が 悪くないと 思えることは 多い 音楽が 流れ始め 鼓膜を 震わせる その瞬間 一番 やりたくなることは それが 日本語の 歌詞でない 場合は 詩作であることが 多い 日本語の 歌詞である 場合は それを良く聞いて 街中を 歩きたくなる 詩作をしている時 トムウェイツは ビョークは プリンスは ゴリラズは レディオ

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詩📓「ラベンダー」

詩📓「ラベンダー」

20240720

ぶつかって 痛かった 肩に 青痣が 出来ていた ぶつかって 痛くなかった もう片方の 肩には 赤いペンで 小さく 丸を つけておいた 犬用の トレイに ベチャッと おじやを 乗っけて スプーンや お箸を 節約して 食べた 火傷しそうな 舌が 喜んで 青痣まで ムズムズ 気持ち良くて 赤いペンの 丸は そこだけ キリで 穴を 開けられるような 痛みが走って 気持ち悪かった 風呂に

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