マガジンのカバー画像

詩たち

221
運営しているクリエイター

2023年10月の記事一覧

詩「アンデッド」

詩「アンデッド」

20231029

食い残されて 雨霰
ピストルの弾 ネックレス
魚の目付き 真似をして
街を歩いた 昼下がり

生き残りには 歯形付け
壁に招いて 確かめる
ハサミがあった 風呂敷に
包んで持って 帰るだけ

悔い残されて 雨霰
死ぬと苦の山 デスゲーム
身体の熱に 賭けをして
足を担いだ ビル周り

遺棄残りには マッチ擦る
鍋に投げ入れ 平らげる
腹に溜まった 黒い血に
狂って酔って バケツ

もっとみる
詩「ブヨブヨ」

詩「ブヨブヨ」

20231027

脈打つピンク色のブヨブヨの中で目覚めた
彼は何かに丸呑みされたことを思い出した
その他の煩わしいことは溶けて消えてしまった
彼はブヨブヨに揺られながら考え込んだ

誰も助けに来ないだろう
それは別に構わない
自分を溶かす液が見当たらない
死にたくてもなかなか死ねそうにない

ブヨブヨを千切って食べてみると美味かった
彼の中のブヨブヨの中はピンク色に染まった
脳がふわふわ浮かび始

もっとみる
詩「ハナウタ」

詩「ハナウタ」

20231026

音程のズレたマシンに乗り込み
心情に合ったバラードを歌う
マイクが悲鳴をあげても
メロディが続くのは仕方ない

頭の中をほじくり出して
誰かに見せたい夜もある
布団の中で化石になって
眠り続けたい朝もある

音楽にならない言葉たちが
手持ち無沙汰でこちらを向いて
つぶらな瞳を潤ませるから
リズムを探すのは仕方ない

身体の中に溢れたものを
誰にも見せられない夜を
朝日の眩しさに

もっとみる
詩「創造者」

詩「創造者」

20231018

箱に閉じ込められた
彼は助けを呼ぶこともなく
地面に絵を描いた
見せる予定もない絵を

箱は開かなかった
数十年の時が流れた
彼の知らないところで
歴史は紡がれていった

物語は彼を探していた
重要な役割を与えたかった
人々は彼を隠した
重要なことではなかった

必要ではなかった
彼が何も生み出せないと
そう願い 望んでいた
箱の中身を動かすこともなかった

彼は閉じ込められた

もっとみる
詩「鑑賞」

詩「鑑賞」

20231018

「最後に見た夢を覚えているか?」
そんなことを聞かれた彼は不思議そうな顔をした
「夢なんてすぐに消えてしまうものだ」
彼の友人は彼の答えに満足して闇に消えていった

(何時間経っただろう
 ずっとこうしている
 ソファの上で冷えたコーヒーの中に
 煙草の灰を降らせている)

擦り切れた映像 途切れ途切れの声
美しい女 可愛い子供 見知らぬ男
甘い香りがする 暖かな家庭がある

もっとみる
詩「夜食」

詩「夜食」

20231017

悲しみを糧にして成長する虫の群れが
喜びを喰うときに出る音に合わせて歌う
そんなときにはカップラーメンを作り
出来上がったら舌を火傷させれば良い

生と死について考えていたり
善や悪について考えているときも
安っぽい醤油味とさまざまな食感が
鼻を伝う湯気と共に踊っている

革命を起こそうとしている民衆も
支配を続けるために虐殺を続ける暴君も
テレビの中ではやけに小さく見えるので

もっとみる
詩「ちっぽけ」

詩「ちっぽけ」

20231014

慣れっこになったひとりぼっちも
パレードに沸いた街を辿ると
ふと湧き上がるなんとも言えない
気持ちで溺れてしまいそうになる

ジャケットの中の小銭だけで
幸せが買えるのは幸せだ
それほど悪くない生活には
置き去りにされた心が落ちている

愛したものから捨てまくれば
愛されたことも忘れてしまう
愛という言葉を容易くは
使えなくなってどれだけ経った?

愛したいものから離れれば

もっとみる