見出し画像

詩「鑑賞」

20231018

「最後に見た夢を覚えているか?」
そんなことを聞かれた彼は不思議そうな顔をした
「夢なんてすぐに消えてしまうものだ」
彼の友人は彼の答えに満足して闇に消えていった

(何時間経っただろう
 ずっとこうしている
 ソファの上で冷えたコーヒーの中に
 煙草の灰を降らせている)

擦り切れた映像 途切れ途切れの声
美しい女 可愛い子供 見知らぬ男
甘い香りがする 暖かな家庭がある
囲まれる部屋 埃と空気を飲み込む

(すぐそばに誰か立っている
 誰か忘れてしまった
 名前よりも大切なことを思い出したい
 また質問をされるだろうか)

「最後に食べたものを覚えているか?」
そんなことを聞かれた彼はため息をついた
「あんたがくれたオートミールだ」
彼の友人は彼の答えに満足して闇に消えていった

(何日経っただろう
 ずっとこうしている
 きっともう助からないだろう
 それなのにこの煙草は美味いと感じる)

ひび割れた窓 吹き込む風 乱れ髪
美しい女 赤いシーツ 見知らぬ男
甘い香りがする 激しい感情がある
囲まれる部屋 煙を吸って吐き出す

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?