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詩「ブヨブヨ」

20231027

脈打つピンク色のブヨブヨの中で目覚めた
彼は何かに丸呑みされたことを思い出した
その他の煩わしいことは溶けて消えてしまった
彼はブヨブヨに揺られながら考え込んだ

誰も助けに来ないだろう
それは別に構わない
自分を溶かす液が見当たらない
死にたくてもなかなか死ねそうにない

ブヨブヨを千切って食べてみると美味かった
彼の中のブヨブヨの中はピンク色に染まった
脳がふわふわ浮かび始めて壁画を描いた
ピンクを引っ掻くと鮮やかな赤が出てきた

誰も知ることがないだろう
この味を一人で堪能するだろう
自分を溶かす液を探そう
死んでしまえばパズルのピースが揃う

ブヨブヨの中でブヨブヨを食いながら
ブヨブヨをブヨブヨで満たすことだけを考える
彼はどんどん膨らんでゆく
何かが食べる人々が集まってくる

誰かに見つかってしまった
もう手遅れだ 笑われてしまう
自分を溶かす液が見つかることはない
死にたくなった彼は人々の拍手を聞く

脈打つピンク色のブヨブヨの中で
彼は何かを忘れて 何かを覚えた
その他の煩わしいことだけが残った
人々は彼と共に笑い 泣き やがて溶けていった

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