詩「創造者」

20231018

箱に閉じ込められた
彼は助けを呼ぶこともなく
地面に絵を描いた
見せる予定もない絵を

箱は開かなかった
数十年の時が流れた
彼の知らないところで
歴史は紡がれていった

物語は彼を探していた
重要な役割を与えたかった
人々は彼を隠した
重要なことではなかった

必要ではなかった
彼が何も生み出せないと
そう願い　望んでいた
箱の中身を動かすこともなかった

彼は閉じ込められた
誰も助けることはなく
地面の絵も次の日には消えた
それでも絵は彼を覚えていた

箱の隙間から漏れ出した砂が
風に吹かれて物語を呼んだ
物語は人々を殺し
箱の中から彼を取り出した

外に出た彼は
無惨に倒れ込んだ人々を見た
純粋な心に炎が灯った
箱を壊して破片を構えた

物語は彼に語りかけた
言葉が届くことはなかった
絵たちは彼を抱擁した
彼は息が出来なかった

物語は死に絶えた彼を眺めた
絵たちは涙を流して彼に寄り添った
呆然として声が出なかった
物語を語る者も絵を見る者も死んだ

物語と絵たちは混ざり合った
それは都合の良い神話になった
洞窟の中に眠ることにした
遠く離れた人々が発見するまで

遺跡を発掘した学者たちは
物語と絵に魅了されたが
箱に閉じ込められた彼のことは
とうとう知られることはなかった