選択肢を考える|2021年5月に読んだ本
選択肢は多ければ多いほどいい。
本当にそうでしょうか?
最近はさまざまな媒体で、自分の個性を発信する人が増えています。人それぞれの生き方のお手本が提示されているから、昔よりも辿り着く選択肢が増えたように感じます。
でも、選択肢の多さが生きやすさに繋がるとは思えないんです。今度はその中から「どの選択肢を選ぶのか」を悩んでしまうようになる。これが結構深みにハマると苦しいから。なかなかちょうど良くはならないものですね。
「正解はコレ!」と1つの選択だけ提示されるのも、「AかBのどっちかに決めるしかない」と二元論になるのも、どちらも視野が狭くなって考えなくなるから、自分を苦しめるような気がします。どんな選択肢があるのか、今一度考える必要がありそうです。
2021年5月に読んだ本の中で、おすすめしたい本を選んでご紹介します。
誰かの選書のヒントになれば嬉しいです。
Wabi-Sabi わびさびを読み解く|レナード・コーレン
「わびさび」に対しては「不完全だけど、どこか美しいモノを指す」というイメージでした。日本は世界的にも独自の文化を持っているのに、近年の生きにくさやカッコ悪さはなんなんだろう、過去と現在で途切れているニュアンアスがあるんじゃないかと探っていたら、この本に出会いました。
日本人がなかなか言語化してこなかった「わびさび」を海外の目線から定義を探っていく本で、写真も挟んであるからとてもわかりやすかったです。
興味深かったのは、わびさびとは特定のモノではなく、内面的な美意識や理論的概念を指していること。モノをわびさびと呼ぶわけではない。曖昧さや矛盾、繊細さを受け入れるような美しさの視点や生き方のことを「わびさび」というのです。
欠けたお皿や庭園を指して「これがわびさびというものか」なんて思ってました。それらに対してわびわびを見出したならば、わびさびなんだけど、モノ単体ではないわけです。
世界をどう見るかをわびさびが教えてくれた気がします。自分の世界を縮小させないためにも、わびさびの意識を大切にして選択していきたいです。
動物たちの内なる生活|ペーター・ヴォールレーベン
動物と人間の違いは何なのか。それを知りたくて読みました。
長年、動物たちを観察してきた経験だけではなく、科学や学術的要素も含めた観点からアプローチしています。
動物たちは本能で機械的に動く存在じゃなくて、数ある選択肢からどれを選ぶのか、精神や感情、知性もある。うわべだけの言葉じゃない暖かさがありました。作者は本当に動物も植物も好きで好奇心の対象なんだろうな。
さらに、動物を食べることにも触れてます。自分たち以外の生き物を利用しないと生きられないという、綺麗事じゃない意見は凄く納得しました。いのちを大切にするために、食べることについてもっと深く知りたいと思いました。
同じ作者の「樹木たちの知られざる生活」もおすすめです。樹木の気持ちを想像するようになりました。仕草とか行動を観察していると、みんな生きてるんだなぁと思って、愛おしくなりますね。「自然を動物を大事にしよう!」だけだと響かないから、こういう小さな自分ごと化が大切だと思います。
フルサトをつくる|伊藤洋志×pha
今まで住む場所を色々変えてきて、生業や多拠点居住への関心が高かったので読みました。田舎vs都会の単純な二元論になっていない、具体的な話で読みやすかったです。
環境を変えるときって、現時点の居場所への不満が少なからずあるからだと思うんです。つい「ここには◯◯がない」とか、ないものに目を向けてしまう。でも、なにもないと思うときに、フルサト、生業、文化を小さくても作っていく視点というのは、生きやすさに繋がると思いました。
自分の環境の選択肢を複数持っておくことはリスクヘッジにもなるし、好きなことをしやすいってことなんですね。
そんなとき隣に詩がいます|鴻上尚史・谷川俊太郎
谷川俊太郎の「朝のリレー」という詩が凄く好きです。もともと、朝の雰囲気が好きで、その好きを言語化してくれたような。読んでいて嬉しい気分になります。
ずっと、詩に対してなんの興味もありませんでした。国語の教科書で習うけど、退屈でよくわからないイメージ。日本の教育って、なんであんなにつまらなく教えるんだろう。歳を重ねてから触れてみると、こんなにも心が動くのに。
詩に出会ったきっかけは忘れましたが、それからは詩を読むことが好きになりました。両作者の言葉が好きだったので、他薦の詩集を読んでみた次第です。
他の人に教えてもらった選択肢が意外とピタリとハマったり。信頼できる人からの視点はランダムな情報となって自分の中で変化していくことを読んでいて思いました。
内緒にしといて|長井短
作者のWeb連載を読んだことがあったので、エッセイも読んでみました。
とにかく面白い。恋愛やマウンティングなど、日々の違和感をまとめていて、等身大の疲れない文体でなんだか励まされました。
違和感に対して腐りそうになってしまうけど、自分なりの解釈をして選択肢を選んで、なんとかしていく。同世代だったのも共感しやすかったのかもしれません。
経験 この10年くらいのこと|上田晋也
数年に1度復活するオールナイトニッポンが楽しみでたまりません。つい手に取ってしまった。あまり本を出していないのが意外でした。
代名詞のたとえツッコミ盛りだくさんのエッセイ。エッセイには具体的な指南が書いてあるわけじゃないけど、さまざまな人の生き方や内面が見えるから好きなのかもしれません。
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僕の大好きなサッカー漫画「アオアシ」にこんなセリフがあります。「僕は、いかなる局面でも、どれを選んでも正答となる4つの選択肢を持ち、1つを選ぶ」。無数の選択肢から自分に合わない選択肢を消していって、最終的な4つぐらいの選択肢から選ぶぐらいがちょうど良いのかもしれませんね。でも、そのうちの1つは自分には意外な選択肢だときっと面白い。選択肢のバランスと選び方、大事にしていきます。