【書評】HARD THINGS 〜修羅場に立ち向かう
方法論なんてない。
著者はネットスケープを生み出したSGIのCEO、ベン・ホロヴィッツ。
ネットスケープといえば、30代後半の人ならギリギリ大学で触れたことがあるかもしれません。開発終了後は、Firefoxへと移行されました。このアイコン、とても懐かしいです。
https://ja.wikipedia.org/wiki/Netscapeシリーズ
さて、世間にNetscape ブラウザのプロダクトとしての価値が認められた頃に、ライバルによるメインOSへの無料バンドル展開で瀕死の危機に。
なんとか危機を乗り越えて会社がようやく軌道に乗りかけた時期に
次はITバブルが破裂し、投資家、銀行からも見放され、
後3週間の資金しかありません、と宣告されます。
この困難もなんとか切り抜けたら、
売上の9割を依存している顧客からの契約解除宣告、
これらの窮地をいかに乗り越えたのか。
そこには定石などなく、現場を把握して、寝る間もなく次々に冷静に対処していくしかない。そして危機に備える暇もなく次の危機が迫ってくるのです。
本書はそのような、まさに修羅場を乗り越えてきたCEOが生々しく当時の状況を語る生々しさを滲み出しています。
なお現在、ベン・ホロヴィッツとマーク・アンドリーセンはベンチャーキャピタルを立ち上げで大きな成功を収めています。
まさに孫子の兵法が説く、兵は詭道なり、臨機応変の対応です。
本書の後半
経験からの教訓について様々説明しています。
経営トップであるCEOに対する資金獲得や従業員のレイオフに際しての心構えなど後半も非常に生々しいのですが、自分が現職の立場において参考になる部分をピックアップしました。
<1> トップはありのままを伝えるべき(ポジティブな妄想は危険)。
なぜなら、
❶社員と信頼関係を保つべきであること
❷困難な問題に取り組む頭脳は多い方がいい、
❸悪いニュースは早く伝わる。
そのため隠すよりも、曝け出すほうが良いのです。
<2> 人、製品、利益を大切にする ーー この順番で。
先ず大切にすべきは、人。
<3> 平時のCEOと戦時のCEOは全然違う
「創業と守成何が難きや」
これは、国家創成時に活躍した家臣の房玄齢と、天下平定時に主君の気が緩まないように諫言し続けた家臣、魏徴の二人について太宗はこう論評します。
「房玄齢は、私と共に天下を平定したとき、艱難辛苦を経験した。死ぬかもしれないという危機を乗り越え、かろうじて助かった経験もした。房玄齢は、創業の困難を実際に知っているから、創業を難しいと考えたのだろう。」
「魏徴は、私と共に天下を安定させ、驕りの心が世の中を危険に晒すことを心配している。だから議長は、守成の難しさを深く理解している訳だ」
(座右の書「貞観政要」〜中国古典に学ぶ「世界最高のリーダー論」 出口治明著)
創業も、守成も異なる能力が問われ、全く別物でありその場に応じて強弱が変わる、と言うことです。
<4> 社員へフィードバックを行うときのCEOのスタンス
■権威を持て
■正しい動機からフィードバックを与えよ
■個人攻撃するな
■部下を同僚の前で笑い物にしてはならない
■フィードバックはひとつ覚えの型ではいけない。
■単刀直入であれ
■フィードバックは個人的なものではない
■悪いニュースであっても社員が自由に語れる雰囲気が育つ。
これも、単刀直入かつ厳正に賞罰を下すことを戒めている点で、法家である韓非子や孫子の思想に近いですね。
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