コロナ禍の最中に、小児歯科で母は泣いた
息子の歯医者さんへの付き添いは、常に気負わねばならなかった私がほんのちょっとだけ人に甘えられる、大切な時間だった。
闘病の末に奇跡的に授かった息子は、ドライヤーや掃除機の音を怖がって逃げまわり、手が汚れるのを嫌がってつかみ食べはせず、初めてのおもちゃは眉根を寄せて警戒心を露わにし、遠巻きに眺めるような神経質なところのある子どもだった。
歯医者に連れて行くのを想像するだけで、どんな事件が起きてしまうのかと私は戦々恐々だった。しかし、二歳を少し過ぎて、遅まきながら生えそろった