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#108「人生の大決断を数理モデル化せよ!――自分DXで安定・成長・社会貢献を同時に叶える方法」(数理的自己啓発#1)

デデデータ!!〜“あきない”データの話〜第74回「人生戦略の数理モデル化 - トレードオフ問題と決断モデル-」の話の台本・書き起こしをベースに、テキストのみで楽しめるようにnote用に再構成したものです。

人生の重要な決断を「数理モデル化」してみるという実験

人生というものを「数学的に」考えることには、最初は違和感があるかもしれない。だが、時間とお金と健康という有限資源をどう配分し、幸福や成長や社会貢献など多様なゴールをどう叶えていくかを考えると、それはまるで「最適化問題」のようにも見える。

私は26歳で父を亡くし、「よく生きる」とは「よく死ぬ」ことと直結していると痛感した。人生がいつ終わるか分からないからこそ、残り時間をどう使うかを考え始め、自己啓発本を大量に読み、データサイエンスに興味を持つようになった。その結果、「人生を数理モデルで考えられないか?」という発想に行き着いたわけだ。

「ゾンビになるまでにしたい100のこと」と「徳を積む」話

ゾンビ漫画『ゾン100』では、周囲がゾンビ化する世界で「死ぬ前にやっておきたいリスト100」を主人公が楽しげに消化していく。長年苦しんでいたブラック企業からの解放を機に、「スカイダイビングしたい」「お世話になった人に恩返ししたい」といった夢を着実に叶えていく姿が痛快だ。

一方、ドラマ『ブラッシュアップライフ』は、死後に次の人生で「オオアリクイ」になる運命を避けるため、「徳を積む」人生のやり直しを繰り返す物語だ。親の不倫を阻止したり、友人を助けるために進路を変えたり、結果として周囲を幸せにする行動が主人公の輪廻転生をより良い方向へ導く。

両作品に共通するのは「死を意識するからこそ、生をどう生きるかがクリアになる」点だと思う。ブラック企業が壊滅してやっと自由になれるとか、交通事故で死んで初めて次の人生で徳を積もうと決心するとか、極端な状況がかえって「自分の本音」を引き出しているように見える。

3つのゴール:安定・成長・社会貢献

自己啓発本や多くの人の人生論を分析していると、おおむね以下の三つに集約できるように感じる。

  1. 安定志向系
    家族や健康、人間関係の安定・平穏を重視するタイプ。保険会社のCMのように、愛や安心感に満ちた生活を目指す姿に近い。

  2. 成長・挑戦志向系
    刺激的で後悔のない人生を求め、「夢を追い続ける」「新しいスキルを学び続ける」など、自己実現を主眼に置く人。

  3. 社会貢献・遺産志向系
    誰かの役に立つ、社会に大きなインパクトを残すといった「未来へ貢献すること」に重きを置く人。慈善活動や環境保護、起業で社会を変えたいという想いに駆られる。

もちろん、どれか一つだけしか選べないわけではない。理想は「家族との時間も大事にしながら、自己実現も果たして、さらに社会にも貢献する」という三拍子かもしれない。だが、現実的にはトレードオフが発生しがちだ。育児や家族に全力を注ぐと、学習やキャリア開発に割く時間が減ったり、社会活動ができなくなったりする。この「限られた資源をどう振り分けるか」を考えるうえで、数理モデル化が有効だと私は思っている。

トレードオフ問題を「最適化」する

人生には「こんな経験」をしたことがある人も多いはずだ。

  • キャリア開発 vs 家族との時間
    リスキリングや資格取得に時間を使いたいが、家族との時間を失いたくない…と葛藤するケース。

  • 快楽と健康
    飲酒や美味しいものを食べたいが、健康やダイエットを気にすると思い切り楽しめない。

  • 自己管理 vs 他者との関係
    自分の目標に集中したいが、友人や部下の相談に乗る時間がなくなると孤立しがちになる。

こうしたトレードオフの可視化に「数理最適化」の考え方を応用すると、「ここを少し妥協すればあっちが大きく良くなる」というパターンが見えやすくなる。
ポイントは、「家族・健康・社会貢献」を全て最大化するのは理想だが、すべてを完璧に同時達成するのは難しいので、どの要素に優先順位をつけるかを自覚することだ。

MDP(マルコフ決定過程)を使った人生設計

もう少し踏み込んだ考え方として、**マルコフ決定過程(MDP)**がある。将来が確率的に変わる状況で、どの行動を選べば「期待される報酬」が最大化できるかを計算する枠組みだ。

転職を例にすると、転職活動をして成功するかどうかは50%だと仮定する。成功すれば年収アップ+ストレス軽減が期待できる。一方で失敗したら「現職にとどまる」ままだったり、さらにストレスが増す可能性もある。どのくらいの確率で転職が成功しそうか、実際に満足度はどれくらい上がりそうか、といった要素を「遷移確率」や「報酬」で数値化し、結果的に最善の行動を選ぶわけだ。

私も年末年始などに、自分の1年先・2年先を考えながら「確率」「スコア」をざっくり推定し、今年はどのアクションが良さそうかを割とドライにシミュレーションしている。実際、こうやって期待値を計算すると、意外に「今すぐ転職を始めたほうが得だ」という結論になる場合が多い。

ユーティリティ理論で自分にとっての「効用」を点数化

年収が10万円上がったら+5点、通勤時間が30分短縮されたら+8点、仕事の楽しさが増えたら+15点、という具合に自分なりに「効用」を決める。これがユーティリティ理論の基本だ。

例えば転職候補A社は年収+5点、通勤短縮+2点、仕事の楽しさ+10点で合計17点。一方、B社は年収+8点、通勤変わらず0点、仕事はまあまあ+5点で合計13点。このように比較するだけでも「A社のほうが総合点が高そうだ」と判断できるわけだ。

もちろん「楽しさ」を点数化するのは主観が混ざるが、それでも頭の中だけで迷っているよりは、紙や表にしてみるとずっと整理しやすくなる。

外的ショック型と漸進的不満型

人生の大きな決断では、外的ショックで一気に動く人と、じわじわ不満が蓄積して限界に達したとき動く人の二パターンがあると感じる。

私の場合は上司が変わって新規事業ができなくなった途端、「これはやばい」と思ってパッと転職を考えるタイプだ。すぐ行動するから、わりと大きく失敗する前に状況をリセットできる。一方、漸進的不満型の人は半年や1年かけて不満が溜まり、ストレスで体調を崩してからようやく動く傾向がある。

両者のどちらが良い悪いではなく、自分がどちらのタイプかを知っておくことが大事だと思う。もし気づかぬうちに不満が溜まりやすいなら、家計簿アプリや睡眠ログ、飲酒量などを記録して「変化点」を早めに見つけるようにすると、突然の鬱症状に襲われる前に手を打てるからだ。実際、ウェアラブルのストレス指標や散財ログを見ていると「最近やけにコンビニで無駄遣いしている…これはストレスが高まっているのでは?」と自己発見できることもある。

リモートワーク転職か? 高給転職か? それとも現職維持か?

どんな選択が正解かは人それぞれだが、典型的なシナリオを3つ挙げて数値化すると、ある程度イメージが掴める。たとえば、下記のような例だ。

  1. 現職を続けながら、平日夜に勉強を頑張る

    • 収入は現状維持。

    • 勉強時間は確保できるが睡眠は削られる。

    • ストレスは増えがち。

  2. 給与が高いが通勤が長い会社へ転職

    • 収入は増えるが、通勤1時間追加。

    • 睡眠・健康・勉強時間が減る。

    • ストレスが増えやすい。

  3. リモートワーク中心の会社へ転職

    • 収入はやや減。

    • 通勤がゼロになり、勉強や運動に時間を使える。

    • 睡眠が増え、ストレスや出費も減るかもしれない。

もし自分が健康とスキルアップを最重視するなら、3つめのシナリオが一番良さそうだ。しかし、「年収ダウンだけは絶対嫌だ」という人にとっては高給転職のほうが総合点は高くなるかもしれない。結局、大切なのは「自分にとっての優先度をどの指標に置くか」を整理することだ。

データを取りながら微調整(PDCA)

いくら頭で考えても、やってみると思わぬ誤算があるものだ。そこで「1か月限定でリモートワーク体験してみる」「通勤時間を減らす代わりに睡眠がどう変わるか実測する」など実験的にデータをとり、結果からフィードバックするのがおすすめだ。

たとえば毎日スマホアプリで就寝・起床を記録し、家計簿で支出をチェックし、体重と気分スコアを簡単につける。そこから「在宅勤務にして外食が減り、お金が浮く代わりに光熱費が増えた。睡眠は1時間伸びたが、運動は意外とサボりがち」など、定量的な気づきが得られる。そこでもう少し運動時間をスケジュールに組み込む、あるいは夕方に外を散歩する習慣を作る、といったPDCAを回せるわけだ。

私は自分の体が結構ストレスに敏感で、睡眠不足になるとすぐ頭痛やイライラが出る。20代の頃は血尿が出るほど働いてしまった時期もあり、「このままだと身体がもたない」と実感した。そこからは「フルリモートで通勤しない」「お酒をほぼ飲まない」「運動を習慣化する」方向へシフトし、実際に睡眠データや肩こりの頻度が激減した。すると勉強や仕事の効率も自然に上がる。要するに「何を最優先するか」を意識的に選び、そこに合わせて生活を再設計すると、人生がポジティブに回る実感があるのだ。

人生をDXする――年末年始にやってみたいこと

企業だけでなく「自分自身」をデジタル変革する発想。私は毎年この時期に「今年どんな行動をとるか」を大きく振り返る時間を取り、ざっくり効用や確率を考えてみる。

  • キャリアは続行か? 転職か? さらに学習か?

  • 健康はどこまで優先し、どう行動を変えるか?

  • 家族や友人との時間をいつ、どれくらい確保するか?

このような方針を「だいたいこんな数字で、期待値がこうなりそう」とイメージ化すると、目的がぶれにくい。その結果、「自分の体や家族との時間を犠牲にしてまで、高い収入や大きな挑戦を求めるべきか?」といった問いに対して、自分はどう考えているかが明確にわかる。
人によっては「もうバリバリに攻めるのはきつい。家族を大事にしたい」というタイミングもあるし、「健康さえ崩さなければもう少し挑戦したい」と思うかもしれない。それを年末年始に頭の中だけで考えるのではなく、手を動かして数式めいたものに落とし込むだけでも「行動が定まる」効果は大きい。

まとめ:次の人生の一手を「データとモデル」で決めよう

人生をモデル化するなんて大げさだ、と思う人もいるかもしれないが、実際にやってみると意外と役に立つ。なにより、自分が「何を最も大切にしているか」を意識化できるのが大きい。

私自身、健康と成長のバランスに失敗して血尿を出した過去があるからこそ、今はリモートワークを選び、運動や睡眠をしっかり確保している。その代わり高い収入や都会的な刺激は手放した面もあるが、「総合得点が高いのはこっちだ」と納得できるので、迷いが少ない。

あなたももし来年、何か大きな決断を考えているなら、一度ざっくり効用スコアや期待値を試算してみてほしい。さらにはウェアラブルや家計簿アプリなどで自分の生活データを記録し、変化点をチェックするだけでも「自分DX」のスタートになるだろう。結果として、よりよく生きるための指針がクリアになると思う。


資料:リファレンスノート

私たちの人生は、「意思決定」の連続と言っても過言ではありません。進学や就職、転職、結婚、引越しなどの大きな決断から、日々の生活習慣や家計管理まで、多岐にわたる選択肢に囲まれています。こうした選択を直感や勢いだけで行うのではなく、数理モデルやデータを活用して“最適化問題”として捉えてみると、意外にもクリアに見えてくる部分があります。

本ノートでは、以下の流れで「人生戦略の数理モデル化」について整理します。

  1. 理論編:人生におけるトレードオフの構造、数理モデルの考え方

  2. 事例編:キャリア転職・健康習慣・人間関係など、具体的なケーススタディ

  3. 実践編:どのようにデータを取ってPDCAを回すか、具体的な行動ステップ

「よく生きる」とは「よく死ぬことと隣り合わせ」という気づきから始まり、安定・成長・社会貢献という3つの軸をどうバランスさせるか。自分にとっての幸福を最大化するために、数理的思考がどのように活きるのかを見ていきましょう。

理論編:トレードオフと数理モデル

1. 人生のトレードオフ構造

人生には様々なトレードオフが存在します。代表的なものとして、以下のような「相反する要素」が挙げられます。

  1. 安定 vs 挑戦

    • 安定的な収入・職場環境を維持しつつ、新しい挑戦や冒険に飛び込むのは難しい。

    • 例:公務員の職を続けるか、起業のリスクを取るか。

  2. 健康 vs 快楽

    • 短期的な快楽(夜更かし、暴飲暴食)と、長期的な健康維持(適切な睡眠・食事)。

    • 例:楽しい飲み会と翌日のコンディション低下のジレンマ。

  3. 自己実現 vs 社会貢献

    • 自分のスキルアップや夢の実現にリソースを集中すると、他者や社会に割く時間が少なくなる。

    • 例:個人のキャリアアップ志向と、地域ボランティア活動の両立。

  4. 家族・人間関係 vs 個人の自由

    • 家族やパートナーに十分な時間を注ぐほど、自分だけの自由な時間は減る。

    • 例:子育て期に自分の趣味や学習時間をどの程度確保できるか。

どの要素も「大切」だからこそ、配分が難しく、正解が一意に定まりません。このとき役に立つのが「数理モデルを用いた最適化」の発想です。

2. 人生を最適化問題として捉える

数理モデルで最初に考えるのは「目的関数」と「制約条件」です。

  • 目的関数:自分が最大化したいもの、あるいは最小化したいもの
    例:幸福度、健康レベル、不満度の低下、ストレスの削減など

  • 制約条件:限られたリソース(時間、体力、お金)や外部環境の制約
    例:1日は24時間、収入には上限がある、家族・職場の要求など

具体的には、「幸福度Hを最大化したい」という目的を設定し、Hを「関係性、自己実現、経済的安定、健康状態、社会貢献」などの指標で数式化します。ただし、これらの指標を同時にすべて最大化するのは実質的に不可能。パレート最適という言葉が示す通り、ある指標を伸ばせば別の指標を犠牲にする場面が出てきます。そのため、どこに優先度(重み)を置くかがカギとなります。

3. デシジョンツリーと期待値モデル

大きな決断をする際は、「転職する」「起業する」「留学する」などの選択肢を意思決定木(デシジョンツリー)で描き、各ルートの期待値を試算します。たとえば「転職した場合、年収アップが見込めるが、通勤時間が増えるかもしれない」「留学した場合、語学スキルは上がるが、貯金が減る」など、メリットとデメリットを数値化したうえで、最終的に期待効用が最も高い選択肢を選ぶのです。

また、将来的に状態が遷移していく場合は、**MDP(マルコフ決定過程)**という動的モデルを使うこともできます。これは「長期的に見てどの行動方針がリターンを最大化するか」を確率的に評価していくフレームワークです。

事例編:キャリア・健康・人間関係の具体例

1. キャリア選択のシナリオ比較

ケース:Cさん(30代、会社員)が来年以降の働き方を考える

  • シナリオA:現職を続けながら夜に勉強時間を確保

    • 収入:現状維持

    • 健康:ややリスク(睡眠不足)

    • スキルアップ:可能性あり

    • ストレス:ほどほど

  • シナリオB:高収入企業へ転職(通勤時間が長くなる)

    • 収入:アップ

    • 健康:通勤・残業増により低下の懸念

    • スキル:新職場でレベルアップも可

    • ストレス:高

  • シナリオC:リモートワーク中心の会社に転職(収入やや減)

    • 収入:微減

    • 健康:通勤ゼロ・睡眠時間増により改善見込み

    • スキル:自主学習しやすい

    • ストレス:低

上記シナリオを、たとえば「睡眠質・健康度・収入・勉強時間・ストレス」など複数の軸で点数化し、合計スコアを比べてみると、意外にも「収入はやや下がるがリモートワークで生活全般を整えられる方がトータル幸福度が高い」といった結果が出るかもしれません。

2. 健康習慣と快楽のバランス

「健康維持と仕事の成果を両立させたい」ケースでは、運動と食事管理の時間をどこで確保するかが課題になります。夜更かしの娯楽時間を削れば運動や睡眠に充てられますが、短期的な楽しみは減少します。一方、十分な運動と睡眠を確保すると、長期的には生産性が上がり、結果としてキャリア面でもプラスに働く可能性がある。

ここで役立つのが、**ライフログ(睡眠時間、歩数、体重、ストレス度など)**を一定期間記録し、運動と睡眠を増やしたときに「仕事の集中力」や「疲れにくさ」がどう変化したかを客観的に比較する方法です。これにより、「自分は睡眠時間7時間未満だと生産性が下がる」などの傾向が見えてきます。

3. 人間関係:家族や友人との時間配分

人間関係を充実させたいが、仕事で忙しくなると家族とのコミュニケーション時間が取りにくい…。こうした状況を数理的に捉えるならば、「週あたり家族と過ごす時間(コミュニケーション時間)を指標」として、満足度との関連をグラフ化するとよいでしょう。具体的には、

  • 「家族との会話や外食が週に2時間以下だと満足度が急激に低下する」

  • 「週5時間以上確保できると、家族満足度が安定する」
    といった閾値が見つかることもあります。

そうしたデータを踏まえ、「最低でも平日30分、週末3時間は家族との時間をブロックしておく」といった戦略を組むことで、仕事と家族のバランスをある程度両立させやすくなります。

実践編:データ活用とPDCAのまわし方

1. 何を記録するか?──セルフモニタリングのコツ

まずは、以下のような項目を1〜3ヶ月ほど、無理のない範囲で記録してみましょう。

  • 睡眠時間・睡眠の質(就寝・起床時刻、眠りの深さ)

  • 体重・運動量(歩数、週の運動回数、消費カロリーなど)

  • 家計簿・出費カテゴリー(食費・交際費・教育費など)

  • 気分・ストレス度合い(アプリや日記で0〜10段階評価)

  • 家族・友人とのコミュニケーション時間(大まかな目安)

これらのデータを「グラフ」や「表」にまとめると、トレンドや変化点が見やすくなります。たとえば、転職や引越しなどのライフイベントの前後で、睡眠時間やストレス度が大きく上下していないか、明確なパターンがわかるでしょう。

2. 仮説検証サイクル:PDCAアプローチ

データを取ったら、「どの行動が幸福度や健康を上げ、どの行動が下げているのか」を仮説立てして実験します。

  1. Plan(計画)

    • 例:「平日は夜23時までに就寝し、休日は朝ジョギングを30分取り入れる」

  2. Do(実行)

    • 実際に2週間〜1ヶ月ほど続ける。目標を立てすぎず、小さな習慣から。

  3. Check(評価)

    • 睡眠時間と疲労感、仕事の集中力、体重などを比較。

    • 家族との時間を増やした結果、気分スコアはどう変化したか?

  4. Act(改善)

    • 成果が思ったほど出なければ、やり方を変える。

    • 「夜ジョギングが辛いなら、朝15分のウォーキングに切り替えて継続しやすくする」など柔軟に修正。

このPDCAサイクルを回すことで、科学実験さながらに「自分自身というシステム」の最適化を進められます。最初は面倒に感じるかもしれませんが、小さな仕組み化やアプリ活用を取り入れると継続しやすくなります。

3. 人生の軌道修正:大きな決断の前に

キャリアや結婚といった重要な決断を下す前に、上記のような「データ×PDCA」の小さなトライアルをいくつか実施してみると、自己理解が深まります。たとえば、本格的な転職に踏み切る前に副業や在宅勤務を試してみて、自分の睡眠リズムやストレス反応をチェックする。データが示す傾向と自分の感覚を照らし合わせれば、「自分はリモートワークが向いていそうだ」といった自信を持って意思決定できます。

まとめ

  1. トレードオフ問題

    • 人生には多様なトレードオフがあり、すべてを同時に最大化することは困難。数理モデルの視点で「何を一番に優先するか」を自覚するのが重要。

  2. 数理モデルによる最適化

    • 目標(目的関数)を設定し、制約(時間・お金・体力)を考慮しながら、パレート最適を探る。デシジョンツリーやMDPのフレームワークを活用すると、未来の不確実性を含めて検討できる。

  3. データ収集とPDCA

    • ライフログや家計簿などのデータを取り、「小さな習慣変化」の効果を検証→改善するプロセスが、自分に合った最適解を導くカギとなる。

  4. 価値観と長期ゴールの再確認

    • 安定志向、成長・挑戦志向、社会貢献志向といった複数の視点の中で、「自分はどこに重みを置くか」を時々見直す。年齢や家族構成で価値観は変化するため、動的にアップデートしよう。

最後に、「よく生きることは、よく死ぬことに直結する」という言葉があります。人生が有限であると自覚できるからこそ、今をフルに使い切る発想が生まれるのです。数理モデルはあくまでも道具ですが、それを通じて「どのように生きるのか、何を大切にするのか」という問いに、より明確な光を当てられるでしょう。ぜひ年末年始や区切りの時期に、自分の“人生戦略”を一度数理的に見直してみてください。きっと新たな気づきや、意外な選択肢が浮かんでくるはずです。


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