ここ10日ほどずっと多忙で走り続けてきたので、さすがに今日は疲れて何もできなかった。番組でも紹介した「読書からはじまる」(長田弘著、ちくま文庫)は、言葉と音楽について平易で深い文章が綴られた見事な一冊。特に子供と絵本、そしてクラシック音楽についての記述は非常に読みごたえがあった。
「『わからない』人のための現代アート入門」(藤田令伊著 大和書房)。現代アートの最先端について平易に解説。1980年を分水嶺とする視点もいい。難解さを尊ぶ玄人筋の上から目線の「スノビズム鑑賞」が一般の人々を遠ざける現状をやんわり批判。音楽にも該当する点が多く、とても面白く読んだ。
自分で料理を作って食べる喜びは何ものにも代え難い。有元葉子の新著「有元家の『これさえあれば』」(三笠書房)もとても勉強になった。生活者にとって何が必要か、実用的で簡単なことと質が良いことの両立、引き算の美学とシンプルであることの素晴らしさ。この人のレシピは音楽にも通じると思う。
「西行 歌と旅と人生」(寺澤行忠著、新潮選書)。孤独と自然と旅を愛し、草庵に質素に暮らし、自己と対峙しながら精神の自由を求めた西行の歌と人生をわかりやすく解説。思いやりと人懐こさにあふれた素顔も伝わる。「願わくは花の下にて春死なむ」に象徴される死生観についても理解を深められる。
「覚えておきたい芭蕉の名句200」(角川ソフィア文庫)は、制作年代順に並んだ俳句に簡潔な現代語訳が付く。四季折々の色彩感や味覚、小さな生き物への愛やユーモア、秋の寂寥と死の予感など、どの俳句も味わうほどに読者の人生を豊かにしてくれる。巻末の芭蕉名言抄も深い芸術観を簡潔に伝える。
「白い病」カレル・チャペック著/阿部賢一訳/岩波文庫。1937年プラハで発表された戯曲。戦争目前の世界で猛威を振るう未知の疫病の特効薬を発見した医師が弱者が生きる権利のために戦い、独裁者に対し戦争放棄と恒久的平和への転換を要求する物語。人間愛に満ちた言葉の数々に強い感銘を受けた。
いま新国立劇場でも販売中の話題のムソルグスキーTシャツを着て。11/19本日16時よりOTTAVA Accademia「ことばの教室」、田中直さんをゲストに、テーマは「編集とは何か」です。 https://ottava.info/accademia/%e3%80%9011%e6%9c%88%e8%ac%9b%e5%ba%a7%e3%80%91%e3%80%8c%e7%b7%a8%e9%9b%86%e3%80%8d%e3%81%a8%e3%81%af%e4%bd%95%e3%