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ルネ・マルタンが語った、ラ・フォル・ジュルネ2025年のテーマ予定は「音楽の首都」(les capitales musicales)
今年のラ・フォル・ジュルネ(LFJ)TOKYOは、個人的にはスロースターターな感じでゆるりと参加した。爽やかな好天に恵まれたこともあって、居心地のよいものだった。
会場整理係のメガホンの大声もなく、混雑しすぎのストレスもあまりなく、CDショップはコンサートの余韻をぶち壊すようなBGMを流すことがなく、楽器店などの出展ブースもスピーカーから音声が出る時間を節度良く決めていたおかげで、全体的に騒がしくない、静かな雰囲気が守られていた。本場ナントでの大人びた雰囲気に最も近づいたと思う。
今年のテーマは「Origines(オリジン)――すべてはここから始まった」。古楽や国民楽派音楽を重視しながらもオールラウンドな内容で、あまりテーマに縛られ過ぎず何でも聴けるような感じになっていたのは、プログラムを組む上でもやりやすかったに違いない。
何事も、原点にさかのぼることは大事である。
クラシック音楽専門インターネットラジオOTTAVAの公開収録番組に今年もゲスト出演してくれたLFJアーティスティック・ディレクターのルネ・マルタンは、LFJそのものの原点について「クラシック音楽の革命を起こしたかったんです」と語っていた。
その革命とはすなわち、ルネの言葉を借りれば「民主化」である。
クラシック音楽とは一部の人に専有されるような特権ではなく、すべての人が分かち合える宝物にしたいというその精神が、質を落とさずにどこまで実現できているか?
それは常に細部にわたり精査・検証され、改善され続けなければならない。
LFJはクラシック音楽の遊園地のようなものであり、誰かが言っていたがコミケのようなものとも言える。ホールAのコンサートに足を運ぶと、特に昼間はレジャーに来るようなカジュアルな服装の人が多く、家族連れの姿が目立つ。観客の9割くらいは普段はクラシックのコンサートに全く来ないような客層だと感じる。これはかけがえのないことだ。
そういう人たちにも、なぜかLFJの名前だけは浸透していて、連休になるとクラシック音楽を聴くために東京国際フォーラムに集まってくる。ついでにショップも見てCDを買って行ったりする。毎年GWのレジャーの過ごし方として定着している。
小さな頃にLFJに親に連れてこられた子供が、大きくなってからは自分でチケットを購入してやってくる。そういう若い人も増えた。クラシック音楽の聴衆の拡大に間違いなく貢献している。これは、2005年以来コロナ禍を除いてずっと続いてきたLFJだけの大きな強みである。
こういう音楽祭では、100人いれば100通りの、10000人いれば10000通りの体験がある。それぞれが自分なりの楽しい時間と思い出を持ち帰る。そこに優劣はない。どれかのコンサートだけが中心ということもない。
OTTAVA(オッターヴァ)は、幸いなことに、毎年のようにLFJに特設スタジオを出すことができている。今年もぴあクラシックとの共同出展・公開収録番組という形での実現が可能となった。
私が出演した5月4日の午後にルネ・マルタンはゲストとして来てくれたが、そこでは、40~50か国語で歌い紀元前の音楽までも探求しているというフランスの女性ア・カペラ・グループ「レ・イティネラント(レ・ズィティネラント)」、ドビュッシーやラヴェル風の即興が自在にできるピアニストで映画評論家のジャン=バティスト・ドゥルセを紹介してくれた。
このように、たとえ知名度は低くとも、境界線を逸脱するような興味深く若いアーティストを常に紹介してくれるのがこの音楽祭の魅力でもある。
そこでルネは来年のテーマについての構想を少し語ってくれた。
正確な名称は決まっていないが、ヴェネツィア、ロンドン、ウィーン、パリ、ニューヨーク、さらにはコンスタンティノープルに至るまで、歴史上の「音楽の首都」(les capitales musicales)をめぐる内容になるのだという。
フランスのマスコミではすでに報道されているテーマである。あまり縛りのきつくない、演奏家にとって得意の演目をやりやすいテーマなので、東京でも実現の可能性は高いように思う。
ルネの口からはマーラーやストラヴィンスキーの名前も挙がっていたが、コンスタンティノープルを入れることにもこだわっていたから、東ローマ帝国やオリエント系のルーツを持つ古楽やワールドミュージックが入ってくるのかもしれない。
今年のLFJは、国内演奏家・団体の充実ぶりには目を見張るものがあったが、これまでと同様、来年はさらに未知の驚くようなアーティストをフランスをはじめ各国から連れてくることも楽しみに待ちたい。
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