音楽関連書紹介 「CATHOLICA カソリカ カトリック表象大全」(スザンナ・イヴァニッチ著 金沢百枝日本語監修 岩井木綿子訳 東京書籍)
※インターネットラジオOTTAVAでご紹介した本の覚書。これは10/6放送分。
本書は銀座の教文館3階キリスト教書売り場で見つけたもの。豪華な装丁と美しい図版の数々を見て一発で気に入り、いつか購入したいと思っていた。
絵画・彫刻・建築から地域の祝祭文化や現代のファッションに至るまで、キリスト教・カトリック教会の視覚文化を一望のもとに見渡せる構成となっている。
カトリックの魅力は、他の宗派と比べると、神秘体験を重んじるということにあるのではないかと個人的には思っている。
それは要するに「うっとりさせる」ということだ。
カトリックの中の儀式性や象徴性、それは芸術の根源でもある。
本書はとにかく図版の印刷が美しい。「教義」「霊性」「信仰の場」と3つの章にざっくりわかりやすく分類された視覚芸術の数々。添えられた説明文も短くよくまとまっていて、読ませる力がある。
不思議なことに、本書のページをめくっていると、芸術絵画への体験の質が充実するだけでなく、鑑賞しながら過ごしている時間がスマホを眺めているよりも豊かであることに気が付く。美しい印刷の力である。
ミケランジェロの「最後の審判」を肉眼で観た者としては、聖母マリアをとりまくあの深い青にかなり近い印刷が本書では実現されていると思う。
ヒエロニムス・ボスの「快楽の園」は「エデンの園」「罪深い快楽の場面」「地獄」の3つから成るが、地獄にこそたくさんの楽器があることに気が付いた。ぜひとも地獄に行って、その歪んだ音楽を聴いてみたいものだ。
キリスト教美術における言葉の重視(宝石で飾る)、感情に訴えかける力の重視(ベラスケスの描いた十字架上のキリストのリアルさ)、キリスト教以前の神との融合(スペインの黒い聖母やメキシコの鳥の羽で飾られた聖母)など、本書はどのページも豊かなインスピレーションへと誘ってくれる。
https://www.tokyo-shoseki.co.jp/books/81569/