われわれがこれまで日常的に用いていた日銀券や銀行の口座振替、あるいはクレジットカードや電子マネーが、「デジタル通貨」と呼ばれるものに変わる可能性がある。
CBDCの場合には、こうした情報が国民管理の手段に使われる可能性もある。これを認めてよいかどうかは、個人の自由の基本にかかわる重大問題だ。われわれは、デジタル通貨のプラスの側面とマイナスの側面とを、正しく理解する必要がある。
デジタル人民元の大きな目的は、その取引に関する情報を国家が把握することにあるのではないかと考えられる。
2019年に提案された「リブラ」は、世界共通の単一通貨を実現する可能性を秘めたものだった。この計画が発表されると、各国の中央銀行や政府が即座に懸念を表明し、規制の必要性を強調した。
CBDCが広く利用されるようになると、銀行預金が流出し、銀行の貸付け業務ができなくなる可能性がある。
「デジタル通貨」が実現すれば、日常の買い物も、遠隔地への送金も、あるいはウエブサイトへの送金も、スマートフォンの操作だけで簡単にできるようになる。場合によっては、海外への送金も国内送金と同じように簡単にできる。
デジタル通貨が広く用いられるようになると、その発行者は詳細な取引情報を把握することができる。これを用いて個人の行動を詳細に推定することが可能になる。
デジタル通貨には、まず中央銀行が発行するものがある。これは、「中央銀行デジタル通貨」(CBDC)と呼ばれる。 中国では、世界に先駆けて「デジタル人民元」の開発が進んでおり、何度かの実証実験がすでに行われている。スウェーデンでも、実証実験が進行中だ。
ディエムが発行されると、これまでなかった巨大な通貨圏が誕生し、銀行のみならず、中央銀行の存在さえ揺るがすような大変化が起こる可能性がある。
「デジタル通貨」はわれわれの生活を便利にし経済活動の生産性を大きく向上させる。それだけでなく社会の基本構造を根底から変革することになるだろう。 ただしよいことばかりではない。場合によっては銀行がなくなるほどの大きな変化が起こりうる。誰もがこの巨大な変化から逃れることはできない。
政策当局は、総力を挙げてリブラ潰しに取り掛かったのだ。このことを逆に見れば、世界的なデジタル通貨がいかに大きな変化を引き起こしうるかが分かる。
本日1月22日(土曜)午前9時から文化放送『村上信五くんと経済くん』に出演します。 CBDCについてお話しします。 https://www.joqr.co.jp/qr/article/39002/
「現金志向が強いから」ではない…日本でキャッシュレス決済が広がらない根本原因 利用者にはとても便利なのに… #プレジデントオンライン https://president.jp/articles/-/52091 #CBDC中央銀行デジタル通貨の衝撃